【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

レオナルド・ヴァン・ガランディオール

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 生き霊に取り憑かれていたことを知り、すぐに払う儀式を行った。
 生き霊を飛ばしていた本人のいないところで儀式を行えば、飛ばしていた本人に何らかの影響が出るとは聞いていた。
 私はそんなことを気にするまでもなく儀式を執り行った。
 生き霊から解放されると、いつからアレが憑いていたのか恐ろしいくらい私の体は今まで感じたことのない程軽い。
 体が浮いているんじゃないかと錯覚してしまう。

 私はその日、泥のように眠った…

 翌日からアレの監視を密かに依頼すれば、すぐに報告が上がった。
 アレは突然倒れ、今は眠り続けている。
 医師の診断でも原因不明と診断され、公爵家は慌ただしい様子。
 第一王子の婚約者の突然の病は王族への報告義務があるにも関わらず、公爵からそのような報告は一切ない。
 令嬢との婚約は溺愛する娘の我が儘と噂されているが、そこには公爵の思惑も混在していると思えた。
 私から行動を起こすことはないが、いつ迄経っても令嬢の報告はない。
 普段であれば事前連絡もなく、週一で王城まで会いに来るのだが今のところ穏やかな日々が続いている。

 彼女には悪いがこのまま眠り続けてくれと願っている。
 だが、私の願い空しく三日後には令嬢が目を覚ましたと報告が上がる。
 だが運が私に味方したのか、令嬢は病気の後遺症により記憶が混濁し両親や自身の名前も分からなくなってしまったらしい。
 司祭の話していた通りだ。
 公爵家の医師の診断では、このようなことは初めてなので記憶が戻るのかどうか。
 それはいつなのかも不明とのこと。

 これはどの症状と考えるべきなのか…
 一つ目は、令嬢はスカーレット・ファルビアンクスであり一時的な記憶喪失に過ぎない説。
 二つ目は令嬢の体に別の魂が憑依してしまった説。
 三つ目は考えたくはないが令嬢の体に悪魔が取り憑いた説。
 これらのどれかだろう。
 帰る肉体が分からず人形のようになることもあると聞いたが、報告を受ける限りそれはない。
 今の令嬢はこの三つの選択肢のどれかに違いない。
 令嬢に対して経過観察が必要と考える。
 今まで令嬢を避ける事ばかり考えていたが、私の方から令嬢を意識するとは…
 生きていると何が起きるか分からないものだな…

 そしてその後の婚約者として決められていた月一のお茶会は、あちら側から体調不良と言うことで婚約者となって初めて断りの連絡が来た。
 私は嬉しくて笑みが溢れてしまった。
 このような事が続けば婚約解消の道も拓かれるのではないかと希望が生まれる。

 定例のお茶会は延期されることなく中止となった。
 普段の令嬢であれば体調不良での延期なのだから、体調が回復したら同じ回数お茶会はするべき、と折れることはないだろう。
 私は苦痛から解放され学園が始まるまで体調回復を日に日に実感する。

 学園では、必ずと言って良いほどどこかしらで待ち伏せされていた。
 入学当初は逃げてはいたが、体力や周囲にまで被害が及ぶので適当にあしらうようになっていた。
 令嬢が記憶喪失となり今日が初日。
 令嬢は記憶喪失になっても私を追い回すのか、それとも私に接触しないのか興味がある。

 登校時には、令嬢の姿を目撃することはなく平穏なスタートを切った。
 令嬢はAクラスで私はDクラス、階は同じでも教室が端と端に離れている分授業の合間に会う事は滅多にない。
 移動教室の際にすれ違うことはあっても「私の婚約者として授業に遅刻するような失態は許さない」といえば、令嬢は私の傍を長居する事はしない。
 「婚約者」という言葉は使いたくないが、令嬢にはかなり効果のある言葉なので私の安寧の為に利用できるものは利用する。

 昼食時ともなれば約束もしていないのに同じ席に座る事もあれば、ロフトを貸し切り貴族を遣いに寄越し私を呼び寄せることもある。
 平等を掲げる学園で王族という特権を使いたくはないが、我慢の限界の時は生徒会室に食事を運んでもらい私用で使わせてもらうこともしばしば…

 令嬢が現れるのをロフトから眺めていると、見逃してしまうところだった。
 普段であれば周囲の生徒を虫けらのような扱いをし威圧するのに、今日は人混みに隠れるよう現れ、並んでいた。
 普段並ぶようなことはせず、周囲の生徒や従業員を駒使いのようにし学園でも特権階級の貴族を振りかざし「貴族と平民は平等などあり得ない」という学園の理念を崩壊させる筆頭だった。
 そんな令嬢が静かに並び自らトレイを運んでいる姿は私だけでなく、目撃した生徒皆が驚いていた。
 更には令嬢が選んだ席は申し訳ないが、最下層の平民が押し込められたような場所で、私がいるロフトからは姿が見えなくなってしまった。
 食事をしながら令嬢が私のところに来るのか一階から見えやすい場所に移動した。
 それでも令嬢は私の元へは来ずトレイを自ら片付け食堂を後にした。
 私は令嬢を追いかけるように出ていくと、目的地もなく歩き回っているように感じた。
 考えながら歩いているのか、追いかけていたのにいつの間にか向かいから令嬢がやってきた。
 令嬢は私に対してどう接するのか……
 私に声を掛けるのか、それとも私に気付かず通りすぎるのか。
 昔の令嬢が残っていれば私に必ず声をかける。
 そうなれば記憶喪失を理由に婚約解消を申し出るつもりだ。
 もし私に声をかける事なく通りすぎれば、様子見。
 令嬢とは婚約を今は継続する。
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