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本題
レオナルド・ヴァン・ガランディオール
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令嬢は私に気が付くと顔を背け壁に触れているのではないかと思うほど私を避けて歩く。
すれ違い様には顔をあげ前を見据えていたが、その目に私の姿は写っていなかった。
令嬢の反応が気に入らなかったのか、そのつもりはなかったのに私の方から声をかけてしまった。
「ファルビアンクス嬢」
「ひゃっ」
私から声を掛けられると思っていなかたのか、初めて聞く驚いた声に少し笑いが溢れてしまった。
「ファルビアンクス嬢、大丈夫か?普段と様子が違うように見えるが何かあったのか?」
「はっはい。問題ありません。いっいいつも通りです」
令嬢の受け答えで私の事も記憶にないことが伺える。
私とは一切視線を合わさないどころか定まっていない。
「まだ体調が悪いのか?」
私は過去に一度も令嬢の体調など心配したことがないのを思い出す。
「ぁっあの…」
「私とのお茶会を欠席するのは初めてだろう?」
「も…申し…訳…ありません。体調の方が…」
何となくだが、令嬢が私を婚約者の王子だと認識したような反応だった。
「あぁ、今も辛いようだね」
「…はぃ」
「心配だから先生に診てもらうと良い。私も一緒に行こう」
心配などはしていない。
私は心にもないことを言っている自分に少々驚いていた。
私は誰にでも愛想が良いのか、長年苦しめられた令嬢が目の前で混乱・困惑しているのをいい気味だと面白く感じているのか、私にも分からない。
「いえっ、王子様のお時間を頂くわけにはいきませんので一人で平気です」
王子様。
あれはいつも私の事を「レオナルド様ぁ」と許可をしていないのに呼んでいた。
「婚約者だから良いですよね?」と半ば強制的に始まり、その後公爵の前でも呼ばれ「二人の仲が良好で何よりです」などと微笑まれてしまえば、今更止めてくれとは言えず今日まで来てしまった。
令嬢は完全に私の事を忘れたんだな。
私から「一緒の時間を」と誘うも断るなんて考えられない。
記憶喪失で人はここまで変わるものなのか?
それとも何かが令嬢の中に入っている?
私が考え事をしている間に令嬢は早足で私の前から立ち去っていた。
先生に診てもらうようにと言ったのに、保健室とは真逆の方向に進んでいった。
仕方なく、仕方なく私は令嬢の後を追った。
保健室の場所を伝えるために…仕方なく。
廊下を曲がるとすぐに令嬢は壁にも垂れていた。
「どうにか元の身体に戻らないと…」
元の体…
「それはどういう事だ?」
「きゃーーーーーー」
至近距離であんな全力の叫び声を令嬢にあげられたのは初めてで、怯んでしまった。
「…申し訳ない、驚かせるつもりはなかったんだ」
あの令嬢に化け物のように叫ばれた事に驚きつつも楽しんでいる自分に気付く。
「…ぃぇ…はぁはぁ…すぅ…私の方こそ、大声をあげてしまい申し訳ありません」
「大丈夫か?」
「…はぃ」
「…先程、言っていた「元の体に戻る」とはどういう意味だ?」
「へっあの…それは…だから…それは…その…」
しどろもどろな令嬢の反応で、他人が令嬢の体に入ってしまったという仮説が一番の有力候補となった。
悪魔であればもっと令嬢のように振る舞うか周囲に不審に思われるような反応は見せないはず。
これが悪魔の反応とは到底思えない。
「まだ、体調が戻ってないのか」
あまりにも令嬢があたふたし憐れみを感じたのか、助け船を出してしまった。
「へっ?体調?…そうっ体調を崩しましてですね、体力がまだ戻っておらず「早くもとに戻さないとなぁ」って」
分かりやすく私の言葉に乗る姿は、以前の令嬢とも通ずる。
あれも私の機嫌を取るために私の言葉に乗っかっていたのを思い出す。
「そうか……体調が回復するのを願ってる」
「はいぃ、ありがとうございます」
そして再び逃げられた。
体調不良と言っておきながら一切感じない足取りで私の前から消えていく。
「保健室の場所……伝えそびれたな」
令嬢の体調は問題なさそうで保健室など用はないと分かりつつも呟いた。
それから午後の授業も終わり、私は少し期待してしまっていた。
令嬢はいつものように放課後私の前に現れるのか。
先ほど会った令嬢であれば来ないだろうと予想はできるのだが、完全に他人が乗り移ったと判断したわけではない。もう少し見極めなければ…
私は授業終了後はゆっくりと生徒会室に向かう。
その間多くの生徒と会話をする。
いつもであれば「その話はまた今度聞かせてもらおうかな」や「生徒会の仕事があるのでこの辺で」と言い、長く会話することはないんだが、今日は敢えて隙を作り令嬢を待つ。
だが、いくら待っても令嬢が私の前に姿を見せることはなく王族と会話をしたい生徒の願いを叶えるだけに終わる。
数日間、令嬢の行動を観察している。
以前とはまるで別人、令嬢の変わりように気付かない人間はいない。
誰が相手でも臆することがない横柄な態度に、目の前の人間全てが自身の駒使いだと思っている。
そして、第一王子の婚約者という自負。
そんな令嬢が休み明けには、生活態度を改め貴族だけでなく平民にも丁寧な対応となっていた。
学園の理念「平等」を体現している。
そして波紋のように広がった噂は、婚約者に対する対応。
「私、今日はガランディオール王子と沢山会話してしまいましたの」
「まぁ、羨ましいです」
「あの方に邪魔されるのではないかと思っていたんですか、現れなかったんです」
「あの方が王子を独占しないなんて珍しいですわね」
「いつもであれば我先にと王子の傍から離れないのに…」
「そう言えば、王子を追いかける姿を最近目撃しておりませんわね」
「…そう言えば私も…拝見してないですね」
「もしや、王子の事を諦め…」
「それはないでしょう…あの方…ですもの」
「そうですよね?では何かしら?」
「なにかの病気にでもなったのかしら?」
「病気でそこまで人が変わるのでしょうか?」
「他には…思い当たりませんね…」
「…嵐の前の静けさでなければ良いんですが…」
「えぇ、巻き込まれたら大変ですものね」
至るところで似たような会話が飛び交っていた。
「嵐の前の静けさか…」
令嬢はどんな嵐を起こすのが少し期待している自分がいる。
すれ違い様には顔をあげ前を見据えていたが、その目に私の姿は写っていなかった。
令嬢の反応が気に入らなかったのか、そのつもりはなかったのに私の方から声をかけてしまった。
「ファルビアンクス嬢」
「ひゃっ」
私から声を掛けられると思っていなかたのか、初めて聞く驚いた声に少し笑いが溢れてしまった。
「ファルビアンクス嬢、大丈夫か?普段と様子が違うように見えるが何かあったのか?」
「はっはい。問題ありません。いっいいつも通りです」
令嬢の受け答えで私の事も記憶にないことが伺える。
私とは一切視線を合わさないどころか定まっていない。
「まだ体調が悪いのか?」
私は過去に一度も令嬢の体調など心配したことがないのを思い出す。
「ぁっあの…」
「私とのお茶会を欠席するのは初めてだろう?」
「も…申し…訳…ありません。体調の方が…」
何となくだが、令嬢が私を婚約者の王子だと認識したような反応だった。
「あぁ、今も辛いようだね」
「…はぃ」
「心配だから先生に診てもらうと良い。私も一緒に行こう」
心配などはしていない。
私は心にもないことを言っている自分に少々驚いていた。
私は誰にでも愛想が良いのか、長年苦しめられた令嬢が目の前で混乱・困惑しているのをいい気味だと面白く感じているのか、私にも分からない。
「いえっ、王子様のお時間を頂くわけにはいきませんので一人で平気です」
王子様。
あれはいつも私の事を「レオナルド様ぁ」と許可をしていないのに呼んでいた。
「婚約者だから良いですよね?」と半ば強制的に始まり、その後公爵の前でも呼ばれ「二人の仲が良好で何よりです」などと微笑まれてしまえば、今更止めてくれとは言えず今日まで来てしまった。
令嬢は完全に私の事を忘れたんだな。
私から「一緒の時間を」と誘うも断るなんて考えられない。
記憶喪失で人はここまで変わるものなのか?
それとも何かが令嬢の中に入っている?
私が考え事をしている間に令嬢は早足で私の前から立ち去っていた。
先生に診てもらうようにと言ったのに、保健室とは真逆の方向に進んでいった。
仕方なく、仕方なく私は令嬢の後を追った。
保健室の場所を伝えるために…仕方なく。
廊下を曲がるとすぐに令嬢は壁にも垂れていた。
「どうにか元の身体に戻らないと…」
元の体…
「それはどういう事だ?」
「きゃーーーーーー」
至近距離であんな全力の叫び声を令嬢にあげられたのは初めてで、怯んでしまった。
「…申し訳ない、驚かせるつもりはなかったんだ」
あの令嬢に化け物のように叫ばれた事に驚きつつも楽しんでいる自分に気付く。
「…ぃぇ…はぁはぁ…すぅ…私の方こそ、大声をあげてしまい申し訳ありません」
「大丈夫か?」
「…はぃ」
「…先程、言っていた「元の体に戻る」とはどういう意味だ?」
「へっあの…それは…だから…それは…その…」
しどろもどろな令嬢の反応で、他人が令嬢の体に入ってしまったという仮説が一番の有力候補となった。
悪魔であればもっと令嬢のように振る舞うか周囲に不審に思われるような反応は見せないはず。
これが悪魔の反応とは到底思えない。
「まだ、体調が戻ってないのか」
あまりにも令嬢があたふたし憐れみを感じたのか、助け船を出してしまった。
「へっ?体調?…そうっ体調を崩しましてですね、体力がまだ戻っておらず「早くもとに戻さないとなぁ」って」
分かりやすく私の言葉に乗る姿は、以前の令嬢とも通ずる。
あれも私の機嫌を取るために私の言葉に乗っかっていたのを思い出す。
「そうか……体調が回復するのを願ってる」
「はいぃ、ありがとうございます」
そして再び逃げられた。
体調不良と言っておきながら一切感じない足取りで私の前から消えていく。
「保健室の場所……伝えそびれたな」
令嬢の体調は問題なさそうで保健室など用はないと分かりつつも呟いた。
それから午後の授業も終わり、私は少し期待してしまっていた。
令嬢はいつものように放課後私の前に現れるのか。
先ほど会った令嬢であれば来ないだろうと予想はできるのだが、完全に他人が乗り移ったと判断したわけではない。もう少し見極めなければ…
私は授業終了後はゆっくりと生徒会室に向かう。
その間多くの生徒と会話をする。
いつもであれば「その話はまた今度聞かせてもらおうかな」や「生徒会の仕事があるのでこの辺で」と言い、長く会話することはないんだが、今日は敢えて隙を作り令嬢を待つ。
だが、いくら待っても令嬢が私の前に姿を見せることはなく王族と会話をしたい生徒の願いを叶えるだけに終わる。
数日間、令嬢の行動を観察している。
以前とはまるで別人、令嬢の変わりように気付かない人間はいない。
誰が相手でも臆することがない横柄な態度に、目の前の人間全てが自身の駒使いだと思っている。
そして、第一王子の婚約者という自負。
そんな令嬢が休み明けには、生活態度を改め貴族だけでなく平民にも丁寧な対応となっていた。
学園の理念「平等」を体現している。
そして波紋のように広がった噂は、婚約者に対する対応。
「私、今日はガランディオール王子と沢山会話してしまいましたの」
「まぁ、羨ましいです」
「あの方に邪魔されるのではないかと思っていたんですか、現れなかったんです」
「あの方が王子を独占しないなんて珍しいですわね」
「いつもであれば我先にと王子の傍から離れないのに…」
「そう言えば、王子を追いかける姿を最近目撃しておりませんわね」
「…そう言えば私も…拝見してないですね」
「もしや、王子の事を諦め…」
「それはないでしょう…あの方…ですもの」
「そうですよね?では何かしら?」
「なにかの病気にでもなったのかしら?」
「病気でそこまで人が変わるのでしょうか?」
「他には…思い当たりませんね…」
「…嵐の前の静けさでなければ良いんですが…」
「えぇ、巻き込まれたら大変ですものね」
至るところで似たような会話が飛び交っていた。
「嵐の前の静けさか…」
令嬢はどんな嵐を起こすのが少し期待している自分がいる。
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