【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

レオナルド・ヴァン・ガランディオール

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 令嬢の変化に気付く者はいても、真実を知るのは私と司教のベルナールだけ。
 なので、令嬢の事で相談できる人は決まっている。
 私の唯一の理解者…秘密の共有者。
 共犯者である教会を訪ね司教に令嬢の現状を報告をする。

「…えぇ、聞く限り別人という可能性が高いでしょう。令嬢の反応からして魔物や悪魔には思えませんが、念のため教会に呼び私が確認しますか?」

「…あぁ、頼む」

「…今後を考えてどうされますか?」

「今後…とは?」

「ファルビアンクス令嬢本人の魂が今何処にいるのか、令嬢の中にいる魂がどのような存在で体は何処にあるのかなどです」

「もし、この国にファルビアンクス令嬢本人の魂があるのであれば、あの性格だすぐに名乗りをあげるか後先考えず屋敷まで突撃してきそうなものです」

「そうですね…」

「ハッキリ言ってしまえば以前の過激な令嬢に戻るくらいなら、今の大人しい令嬢の方が私は楽だと考えています…なので司教に尋ねたい。令嬢の魂が再び入れ替わることはあるんでしょうか?」

「このような事は私にも初めての事で断言できませんが、可能性はあるでしょう」

「…そう…ですか…」

「令嬢もですが中の魂も、体と魂の結び付きが弱いのかもしれませんね」

「結び付きが弱い?」

「はい。魂が体から離れやすい体質なのかもしれないので、何かのきっかけで入れ代わりが起きる可能性があります」

「…結び付きを強くするには何か方法はないのか?」

「…精神的な問題もあるでしょう。令嬢に「この体を離れたくない」と強く思わせる事ではないでしょうか?」

「離れたくないと思わせる…」

「体を返さないと…と考えていると魂が離れやすいかもしれませんね」

「令嬢が元の体に~と呟いているのは聞いた」

「それだと危険かもしれないですね。上手く本人の魂が入るとは限りませんし、また別人の魂か入り込む可能性もあれば、それが悪魔ということも…元の体にというのは本人だけでするのはお勧めしません。今度こそ私が責任をもって行います。その説明もした方がいいですね」

「…ベルナール教にお願いがあります」

「…私にも司教という立場があります。どのような内容なのか聞いてみなければ判断が出来ません。仰ってみてください」

「…令嬢の魂が残るように話してほしい」

 人として酷いことを提案しているのは分かっている。
 本物のスカーレットが帰って来ないように別人を犠牲にしようとしている。
 その相手にも家族や親しい友人、恋人がいる可能性もあるのに本人の意思を無視してスカーレットとして引き留めようとしている…

「魂が残るように…本人が戻りたいと訴えてもですか?」

 私の提案にベルナールは司教という立場ではなく、人としてするべきではないと言っている。

「…司教もファルビアンクス令嬢本人がどんな性格の持ち主か知らないわけではないだろう?公爵令嬢という立場を利用し周囲の者がどれだけ迷惑を被っているのか、そんな人物が次期王妃に相応しいと言えますか?」

 私は私の提案を正当化しようとしている。
 どんな理由があろうと本人の許可なく決めるべきではないし、同意しなかったとしても説明を怠ってはいけない。
 今のスカーレットの中の人物は全く関係のない被害者というのに…

「私の立場から次期王妃を判断するのは難しいですが、王妃教育が始まれば変わるものではありませんか?」

「見た目や仕草・教養が身についたとしても、その者の根本が変わらない限り周囲への影響は変わらない。令嬢が王妃教育を受け変わるとは思えないんだ」

 変わるのであれば私の態度や忠告で既に変わっていてもおかしくない。
 それでも変わらないのは本人の資質。
 ハッキリ言って私は令嬢が隣に居ることに疲れてしまった。
 非道と言われようと構わないほど、令嬢を拒絶している。

「では、記憶喪失などを理由に婚約を解消に持ち込むことも出来るのではありませんか?」

「私も考えたが、ファルビアンクス公爵の国への貢献を考えると簡単に解消は難しい」

 ファルビアンクス公爵、長年王家に忠誠を誓い支えてきた家門。
 簡単に切り捨てることの出来る貴族ではない。

「…今は…判断しかねます。まずは令嬢と会ってからですね」

「…はぃ…お願いします」

 今回の出来事は私にとって幸運だった。
 王家が有力貴族を滅ぼすとなれば時間も労力も必要とするが、スカーレット・ファルビアンクスが別人となり今のところまともな人物のようでこのままでいてほしいと願う。
 この期を逃す手はない、と私は己の願望のためにはどんな苦労も厭わなくなっていた。
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