【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

王子が来た

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 ついに王子が訪問する休日になってしまった。
 普段なら休日は嬉しいものなのに、今日は朝から屋敷内は慌ただしく緊張感が漂っている。
 幼い頃に婚約者となったと聞くので、何度も訪問はあったはずなのにこの慌てよう。
 やはり何度経験しても王子を出迎えるのは緊張することなんだろう。
 皆の慌ただしい姿を目撃すると私も緊張してくる。

「おっお嬢様っいらっしゃいました…王子です」

 私を呼びに来た使用人からも緊張が伝わる。
 私に緊張が移らないよう、深呼吸してから応接室へ向かう。
 使用人に扉を開かれると、既に父が対応していた。

「お待たせいたしました」

「あぁ、こちらに座りなさい」

 父の指示により王子と対面のソファに着くも、私から王子に話を振るべきか悩む。

「殿下自ら我が家にお越しいただけるなんて光栄です」

 娘の記憶喪失が露呈しないよう、父が気を使い会話を主導する。

「いや。婚約者となって令嬢の好意に甘えてしまっていた」

「いえ、娘も王宮へ伺うのを楽しみにしておりました」

「体調を崩して以来、会う機会が減ったので気になっていた」

「娘の体調まで気にしていただきありがとうございます。この通り順調に回復しておりますが、娘は無理をしがちですので再び倒れると懸念し私が控えさせておりました」

「そうだったのか。令嬢思いの素晴らしい公爵だ」

 父と王子の会話に加わるべきなのか分からず、ひたすら聞き続けた。

「いえ、娘を持てば父親は皆こうなりますよ」

「ふっ、そうですか…今日は突然だが、令嬢と出掛けたいのだが構わないだろうか?」

 思いもよらない王子の予想外な提案に、目を見開き硬直する。
 婚約者のお宅訪問でずっと父と一緒に談笑で終わることはなく、散歩する程度の二人きりの時間はあるだろうと覚悟していた。
 まさか、デートに誘われるとは思っていなかった。
 えっ? デート何ですか? 不穏に感じ王子を見れば私に優しい王子スマイルを見せる。
 私は口の端がビクビク引き攣りながら、ぎこちなく父に顔を向け「無理です」と必死に訴えた。

「……えぇ。最近は屋敷に込もってばかりだったので息抜きに良いかもしれません」

 もちろん断ってくれると思ったいた父の言葉に「ぬぉっ」と声が出なかったのは奇跡だった。

「お……父様?」

「大丈夫。体調も回復してきているし、殿下が傍に居てくれる」

「あっ……いやっでも……王子に……ご……迷惑を……お掛けして……しまうかと……」

「迷惑だなんて、婚約者なんだ守るのは当然だ」

 心強いお言葉なんですが、その言葉が私を追い詰める……なにも応えられずにいる私。

「行ってきなさい」

 父に背中を押され断ることが出来なくなってしまった……

「はい…」

「その服装では目立つから着替えてきなさい」

「…はぃ」

 父の助言により町に出ても目立たない装いに着替えるため、談話室を出る。
 何故こうなってしまったのか考えながら自室を目指す。
 今日は会話するだけじゃなかったの? 
 どうして一緒に出掛けることになるの?
 そんなのリスクしかないのに、父も何故許可を出した?
 守ってくれるんじゃなかったの?全部私に丸投げですか?

「はぁーーーーーーーーー」

 肺の酸素を全て排出し、負の感情を放出する。
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