【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

レオナルド・ヴァン・ガランディオール

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 私は確信した。
 今のスカーレット・ファルビアンクスは、本人が記憶喪失になったわけでも、悪魔に取り憑かれたわけでもなく…

「全くの別人だ」

 何故なら、私は令嬢にリボンの贈り物をしたことはない。
 令嬢自身も明確に否定したわけではないが濁していた。
 私への贈り物も、普段であればもっと私に確認したり自慢するところだ。
 それに「食堂の料理は気に入らない」と公爵家の料理人を強引に学園に招き入れたのは令嬢自身だ。

「平民と同じものなんて、公爵令嬢の私が食べられるわけないでしょっ」

 入学早々、食堂で言い放った王子の婚約者の言葉は強烈で、その言葉はその日のうちに一気に学園中を駆け巡る。
 そして、あの一件から貴族の間では爵位を見せつけたい者はお抱え料理人を学園に招き入れるという風潮が広まった。
 平民の間では決して貴族には近づいてはいけないと結束を固め、更にはあの「お貴族様」の機嫌を損ねてはならない。
 食堂では令嬢に見つからないような場所に固まっていた。
 そこまで恐れられていた令嬢が喩え記憶を失ったとしても「美味しい」と、平民の料理人を誉めるような言葉はでないだろう。
 更に温室では使用人がするような花の世話をする令嬢の姿に、脳が理解することを拒否していた。
 公爵令嬢として育った令嬢は、生来「汚れ」というものを見たことがないのではないかと私は本気で考えていた。
 目の前の令嬢は、手が汚れることを厭わず花の手入れを熱心に行っていた。
 そこで私は確証を得る。

「令嬢には、別人の魂が乗り移った」

 私は今の令嬢となら結婚に対しても前向きになれる。
 最近では不仲な婚約者から次期王妃の座を奪おうとする者達が積極的になり始め、私に必要以上に距離を詰め令嬢達のキツイ香水の香りに酔ってしまいそうになっていた。
 それだけでなく過去の迷惑な婚約者を見習ってか、どこまでも遠慮なく追い掛けてくるようになった。
 婚約者に対して強く拒絶したことがなかったのが、この様な形で返ってきた。
 今までは煩わしいと思っていた婚約者だが、他の煩わしい令嬢達を遠ざけるのには優秀だったのだと気付かされる。
 そしてそんな婚約者の扱いにも学園では要領を掴みはじめていた。
 なので、今まで深く関わった事のない令嬢にどう拒絶するべきか新たな悩みが出来ていた。
 そう考えると、今よりも以前の方が一人になる時間は多かった。
 ファルビアンクスが変わった事で、楽になった部分と新たに不愉快が増えた部分両方がある。

 過去の令嬢と周囲の反応。
 現在の令嬢と周囲の反応を天秤にかけ、私は今の生活が続くことを願うようになった。
 それからすぐに教会へ出向き、司教のベルナールに令嬢と訪れることを告げた。
 その時に、「どうか令嬢には、ずっとこのままでいて欲しい」と伝えた。

「レオナルド殿下だけの言葉だけでは、司教という立場のある私には判断は出来ません。令嬢の話を本人の口から聞かないことには……」

 聖職者……大人としては正しいことなんだが、王族を融通すればそれなりの見返りがあるのでは?
 邪な感情が芽生えてもおかしくないのだが、ベルナールは頑なだった。
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