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本題
過去の私…
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奥へ案内され応接室らしき部屋で、司教と王子と私の三人となった。
先程案内してくれた彼は紅茶の用意をした後は、部屋を後にする。
王子と司教は私には分からない会話をしているので、私は聞いて良いのか? と戸惑う。
「やはり…そうでしたか…」
「はい。私としては、このままでと考えております。よろしくお願いします」
私は会話に混ざることなく、二人の邪魔にならないよう気配を消す。
「令嬢は体調は問題ないですか?」
私に気遣ってか、会話を降られる。
「あっはい。問題ないです」
「体調を悪くし、記憶が曖昧と聞きましたが?」
司教は王子からかそれとも別の人間にか、既に私の状況を把握している。
「…はぃ」
「どのくらいご自身の事を覚えていますか?」
どのくらいと言われても、全く分からない。
「別人です」なんてことを素直に話せる訳もない。
「令嬢は私の事を存じてないですよね?」
「……申し訳ないのですが……はぃ」
「良いんですよ。私には多くの人には見えないものが見えます」
「それは…幽霊…って事ですか?」
「そうです…」
「司教様や司祭様は皆様霊能者何ですか?」
「いえ、ハッキリと見えるのは今のところ私だけですね」
「そうなんですね」
「…えぇ、なので令嬢のことも見えていますよ」
「へっ?」
司教の言葉の意味が理解できなかった。
「本当は黒髪で黒い瞳の女性なんですよね?」
「ぇっ」
司教の言葉に思い当たる人物像がある…
「我が国では珍しい顔立ちですね」
司教には本物の私の姿、須藤花蓮のことが見えている。
私は言葉を失い司教から目を離せなくなっていた。
記憶が曖昧になったとしか言っていない私だけの秘密。
「ぁっ…ぁの…ぁっ…」
なんて言えば良いのか……事実を伝えるべきなのか頭の中が真っ白になる。
「大丈夫です。私は貴方を否定しているわけではありません。何故そうなったのか、今後どうすることが最善なのか一緒に考えましょう」
一緒に考える……
ずっと一人でどうしたら良いのか悩んで、怖くなって考えないようにしても頭から離れない現実。
真実を訴えたとしても誰にも信じてもらえないと決めつけていた。
歴史で、私のように可笑しな事を言う人間は魔女狩りの対象となると学んだ。
その事もあり、誰かに話し分かってもらうのを諦めていた。
それなのに司教は気付いてくれた……私の言葉を信じてくれる人がいたのだ。
「大丈夫」
優しく微笑む姿に堪えきれず涙が溢れだす。
「わっ……わたっ……わたしっ……わっ……わたしっ」
やっと話せる人に出会えたのに、言葉が上手く話せない。
「大丈夫、ゆっくりで良いですよ」
優しい司教の言葉に何度も頷き、息を整えながら言葉を紡いでいく。
「……私……は、べ……別の……国で生まれ……まじだ。ねっ……眠っで……起きたら、ズ……スカーレット……に……」
「ファルビアンクス嬢になっていたんですか?」
「はっ……はい゛」
私の事を分かってほしくて、何度も頷いた。
「それは突然、なんの前触れもなく?」
「……はいっ」
「そうなんですね。過去のあなたの事を聞いても良いですか?」
「私の……事ですか?」
「なにか、重要な手掛かりがあるかもしれないので何でも……まずは名前や家族の事など聞かせてください」
「私の名前は……須藤……花蓮です。十五歳の学生で、家族は父と母と二つ上の姉が居ます」
「最後の記憶は何ですか?」
「最後は……確か……家族とキャンプに行って……川で遊んで……車で帰っていたら眠くなって、その後の記憶は……ありま……せん?」
あれ?
何か思い出したような……
川で写真を撮影していたのを思い出す。
写真……あの写真は、もしかしてこの事を意味していたの?
まさか私は幽体離脱している途中にこの身体に入ってしまった?
なら、私の本当の身体にはスカーレットが?
「では、肉体から魂が離れてしまった要因に心当たりはありますか?」
「……あの時は、眠って……し……まって……」
夢を見る前に何か沢山の音を聞いたような…
キキーッ…ドォーン…ガシャン…ドン…ガシャーン…
あれって……あれ? 覚えてないけど、色んな映像が頭の中に浮かんでくる……
「車が……身体が浮いて……あれ?」
お父さんが叫んだような声が聞こえて……突然の急ブレーキでシートベルトが身体に食い込み苦しさを感じた。
微かに見えた光景は赤いテールランプがチカチカとしている。
その後、後ろから衝撃を受け方向を失いトラックと向き合い近付いて来た……
「……私……事故に……あれ? 私……死……んだの?」
痛みを感じる前に意識が遠退き……真っ暗になった……
「花蓮嬢。大丈夫ですよ、ゆっくりで」
司教の優しい言葉と共に、彼の手が私の肩に触れる寸前で止まる。
女性に妄りに触れないという戒めなのか、それともスカーレットの婚約者の前だから遠慮したのか司教は一切私に触れない。
「わっわたっわたっしっししし、死んだ……死んだ……私……死んだんですか……ぁっあぁあ゛ーあ゛ーあ゛ー」
須藤花蓮は十五歳の夏休みに、事故に巻き込まれて死んでいた。
先程案内してくれた彼は紅茶の用意をした後は、部屋を後にする。
王子と司教は私には分からない会話をしているので、私は聞いて良いのか? と戸惑う。
「やはり…そうでしたか…」
「はい。私としては、このままでと考えております。よろしくお願いします」
私は会話に混ざることなく、二人の邪魔にならないよう気配を消す。
「令嬢は体調は問題ないですか?」
私に気遣ってか、会話を降られる。
「あっはい。問題ないです」
「体調を悪くし、記憶が曖昧と聞きましたが?」
司教は王子からかそれとも別の人間にか、既に私の状況を把握している。
「…はぃ」
「どのくらいご自身の事を覚えていますか?」
どのくらいと言われても、全く分からない。
「別人です」なんてことを素直に話せる訳もない。
「令嬢は私の事を存じてないですよね?」
「……申し訳ないのですが……はぃ」
「良いんですよ。私には多くの人には見えないものが見えます」
「それは…幽霊…って事ですか?」
「そうです…」
「司教様や司祭様は皆様霊能者何ですか?」
「いえ、ハッキリと見えるのは今のところ私だけですね」
「そうなんですね」
「…えぇ、なので令嬢のことも見えていますよ」
「へっ?」
司教の言葉の意味が理解できなかった。
「本当は黒髪で黒い瞳の女性なんですよね?」
「ぇっ」
司教の言葉に思い当たる人物像がある…
「我が国では珍しい顔立ちですね」
司教には本物の私の姿、須藤花蓮のことが見えている。
私は言葉を失い司教から目を離せなくなっていた。
記憶が曖昧になったとしか言っていない私だけの秘密。
「ぁっ…ぁの…ぁっ…」
なんて言えば良いのか……事実を伝えるべきなのか頭の中が真っ白になる。
「大丈夫です。私は貴方を否定しているわけではありません。何故そうなったのか、今後どうすることが最善なのか一緒に考えましょう」
一緒に考える……
ずっと一人でどうしたら良いのか悩んで、怖くなって考えないようにしても頭から離れない現実。
真実を訴えたとしても誰にも信じてもらえないと決めつけていた。
歴史で、私のように可笑しな事を言う人間は魔女狩りの対象となると学んだ。
その事もあり、誰かに話し分かってもらうのを諦めていた。
それなのに司教は気付いてくれた……私の言葉を信じてくれる人がいたのだ。
「大丈夫」
優しく微笑む姿に堪えきれず涙が溢れだす。
「わっ……わたっ……わたしっ……わっ……わたしっ」
やっと話せる人に出会えたのに、言葉が上手く話せない。
「大丈夫、ゆっくりで良いですよ」
優しい司教の言葉に何度も頷き、息を整えながら言葉を紡いでいく。
「……私……は、べ……別の……国で生まれ……まじだ。ねっ……眠っで……起きたら、ズ……スカーレット……に……」
「ファルビアンクス嬢になっていたんですか?」
「はっ……はい゛」
私の事を分かってほしくて、何度も頷いた。
「それは突然、なんの前触れもなく?」
「……はいっ」
「そうなんですね。過去のあなたの事を聞いても良いですか?」
「私の……事ですか?」
「なにか、重要な手掛かりがあるかもしれないので何でも……まずは名前や家族の事など聞かせてください」
「私の名前は……須藤……花蓮です。十五歳の学生で、家族は父と母と二つ上の姉が居ます」
「最後の記憶は何ですか?」
「最後は……確か……家族とキャンプに行って……川で遊んで……車で帰っていたら眠くなって、その後の記憶は……ありま……せん?」
あれ?
何か思い出したような……
川で写真を撮影していたのを思い出す。
写真……あの写真は、もしかしてこの事を意味していたの?
まさか私は幽体離脱している途中にこの身体に入ってしまった?
なら、私の本当の身体にはスカーレットが?
「では、肉体から魂が離れてしまった要因に心当たりはありますか?」
「……あの時は、眠って……し……まって……」
夢を見る前に何か沢山の音を聞いたような…
キキーッ…ドォーン…ガシャン…ドン…ガシャーン…
あれって……あれ? 覚えてないけど、色んな映像が頭の中に浮かんでくる……
「車が……身体が浮いて……あれ?」
お父さんが叫んだような声が聞こえて……突然の急ブレーキでシートベルトが身体に食い込み苦しさを感じた。
微かに見えた光景は赤いテールランプがチカチカとしている。
その後、後ろから衝撃を受け方向を失いトラックと向き合い近付いて来た……
「……私……事故に……あれ? 私……死……んだの?」
痛みを感じる前に意識が遠退き……真っ暗になった……
「花蓮嬢。大丈夫ですよ、ゆっくりで」
司教の優しい言葉と共に、彼の手が私の肩に触れる寸前で止まる。
女性に妄りに触れないという戒めなのか、それともスカーレットの婚約者の前だから遠慮したのか司教は一切私に触れない。
「わっわたっわたっしっししし、死んだ……死んだ……私……死んだんですか……ぁっあぁあ゛ーあ゛ーあ゛ー」
須藤花蓮は十五歳の夏休みに、事故に巻き込まれて死んでいた。
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