【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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今後について

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 死んだ事実を理解した途端、止まりかけていた涙が再び勢いを増す。
 だって…死にたくなかったから。
 やりたいこととかまだ見つかってなかったけど、大学に行きたかったしバイトだってしてみたかった。
 彼氏って存在にも憧れていた。
 なのに全ての夢が断たれた……

 感情が溢れるまま泣き続け、私が泣き止むまで二人は止めないで傍にいてくれた……

「過去を受け入れるのは容易ではありません。泣いて良いんですよ」

 司教の言葉で思いっきり、遠慮することなく泣きまくった。
 充分と言えるほど泣き、その後泣き止んだというより体力を使いきり涙も枯れた。

「辛かったですね…」

 私への言葉だと分かっていても、頷く気力さえ無くなっていた。

「辛いことを経験し何も分からない国で一人、よく頑張りましたね。この事はファルビアンクス公爵にはまだ伝えないでおきましょう」
 
 真実を伝えなくて良いの?
 頭で質問するも、口を開ける体力さえない状態だった。

「ご家族に分からないことを伝えても不安を募らせてしまいます。家族にだけ伝えたとしても何処からか漏れる可能性はあります。花蓮嬢には申し訳ないですが、スカーレット公爵令嬢は王子の婚約者です。この機会に乗じて新たな婚約者をと企む貴族は少なくありませんし…令嬢自身も奇異の目で見られてしまいます。今回の事が世間にどう映るのかも分かりません…脅すわけではないですが、悪魔に取り憑かれたと騒ぎ立てられ火炙りにされる可能性もあります。貴方自身の安全のためにも今は私達だけの秘密としましょう」

「んっ」

 ここは「はい」と言うべきだろうが、言葉を理解するのに集中し返答にまで気が回らないでいた。

「私も分からないことだらけですが、何か思うことがあれば仰ってください」

「…か…らだ…返さないと…」

 誰とも視線をあわせることなく独り言のように呟いた。
 私は死んで、この身体を奪ってしまった。
 この身体の魂が何処にあるのか分からないけど返さないと……
 ご両親も真実を知れば、この場にいる王子も本物のスカーレットを返せと思っているに違いない。
 私は弱くて卑怯だから、王子の顔を見ることが出来ず俯いたまま現実から目をそらしている。

「……私の考えとしては、ファルビアンクス嬢の体に花蓮嬢の魂が入ったのか、倒れたのを切っ掛けに前世の記憶を引き起こしたのか様子を見るべきだと考えています」

「……私の……前世?」

 それは…

「はい。ファルビアンクス嬢と花蓮嬢は同じ魂の可能性もあります」

 同じ…魂…

「焦ることなく、見極めていきましょう。不安なことや何か思い出したことがあれば、遠慮なく私を訪ねてください」

「…はぃ…ありがとうございます…」

 思考が纏まらない…私の頭は考えることを放棄し始めている。

「ファルビアンクス嬢、屋敷まで送る」

「…はぃ…あぃがとございます…」

 王子の言葉は私を導くというより、思考をやめた私を誰かに動かしてほしかった。
 馬車までエスコートされ、王子の手に触れたという感動もなく誘導される。
 馬車に乗り込む際司教には「一人で抱え込まないでください」と優しく声をかけられた。私はゆっくり頷き、逃げるように馬車の奥へと隠れた。
 王子も一緒に乗ったのだが、視界に入らないよう顔を背け瞼を閉じる。

 泣きまくったせいか、とても眠くなってきた……
 このまま眠り、目覚めた時に本物のスカーレットに変わっていないか願ってしまう。
 屋敷に到着するまで何も考えず、少し休みたい。
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