【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

レオナルド・ヴァン・ガランディオール

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 王宮に戻り一人悩むも一向に答えは出ない。
 こういう時に信頼の置ける側近に相談したいのだが、信頼のおけるはずの側近が、信頼できない状態となっている。

 学園では、平民の彼女と彼らに見つからないよう行動するようになった。
 運が良いことに、私は誰とも同じクラスではない。Aクラスにファルビアンクス、Cクラスにヘルマンルイス、Dクラスが私、Eクラスにリオネルと平民の彼女。
 安易に他人の教室に入ってくる者はいないので移動教室を気を付ければ彼らに捕まることはない。
 一番危険なのが昼食時だった。
 授業の合間であれば「時間に遅れる」と言って離れる事が出来るんだが、昼食時は目的が同じなので逃れる事が出来ず食堂へ向かい、ロフトへ上がり同じ席に着くようになった。

 側近は問題ないが、何故そこに当然のように彼女がいるんだ? 何故それを二人は指摘しない? 周囲の者は訝しげな表情で私達の席に視線をやっているというのに、本人達は一切気にしていない。

 周囲は私と目が合うと避けるが、この状況に違和感を感じているのだろう。
 これは差別ではなく、王族の席に婚約者ではない女性が席に着き、更にその女性が平民となれば穏やかではない。
 いくら婚約者との関係が不仲であっても不貞を仄めかすような行為はするべきではない。
 今日は仕方がないとしても、今後は拒絶すべきと判断する。
 私の不満など知るよしもない彼らは食事を楽しんでいる。
 食事を終え席を立っても、彼らは着いてくる。
 せめて彼女だけでもを引き離せないかと考え生徒会室に逃げ込んだというのに、躊躇いなく彼女も生徒会室に入る。
 あまりの堂々とした態度に勘違いしてしまいそうだが、彼女は生徒会役員ではない。
 強引なファルビアンクスでさえ生徒会室に無断で侵入することはなかった。

 …この女はどこまで無知なんだ?

「君は何故生徒会室にいるんだ?」

「…私の事ですか?」

 何を不思議がっている?生徒会室は生徒会役員と許可した者しか入室が許されないのは言わなくても分かるだろう。
 役員でも許可されたわけでもないのに生徒会に居座る彼女の思考回路が信じられない。

「レオナルド、いいじゃねぇか。メイリーは特別だろう?」

 特別? どう特別なんだ? リオネルにとっては特別かもしれないが、私とはなんの接点もない他人だ。

「ここは生徒会室だ、許可なく生徒の出入りは許されない」

「彼女は今、ある女生徒から嫌がらせを受けている。逃げ場所が必要と判断し生徒会室で保護している」

 ヘルマンルイスは一見正当理由を掲げるが、生徒会長である私は許可をしていない。
 生徒会が一人の生徒を特別扱いしては周囲に不信感を抱かせることになる。
 彼なら分からないことでもないのに、実行してしまう程彼女に入れ込んでいると見える。
 今後同じような状況の生徒が現れた時に、彼が生徒会で保護するとは思えない。
 それに、へルマンルイスの言う女生徒が誰を指しているのか私に向ける鋭い視線で気付く。

「ごめんなさい。私もあの方の嫌がらせに一人で耐えられますと伝えたんですが、結局お二人の優しさに甘えてしまいました」

 私とへルマンルイスの会話に張本人が加わるも自分は悪くないという感情が込められているように感じる。
 声を震わせ手で顔を覆うが、その目には本当に涙が浮かんでいるのか疑問だ。

「いやっ俺が強引ってのもあったが、当然の選択だ。レオナルドっ、自分の婚約者の暴走を止められないのをメイリーに八つ当たりすんなっ」

 リオネルは震える彼女の肩に触れる寸前に拳を握り、怒りを私にぶつける。

「相手が話の通じる人間であれば忠告で済むが、今回はそうはいかない。レオナルドも分かっているはずだ」

 ヘルマンルイスも私の側近という立場よりも、目の前で泣く彼女に同情し私を責める。
 二人の第一優先が私ではないことを知り、私の中で彼らに対する信頼が薄まっていくのが分かる。

 それからは、私は彼女を居ないものと扱い生徒会の仕事に集中する。
 二人は仕事をしつつも彼女に気を遣い世話をしている。
 彼女の方はチラチラと私を確認しているのが視界の角に映るも、気が付かないフリをし休憩が終わるまで居心地の悪い空間で過ごした。
 教室に戻る間私が彼らより先を歩く。

「レオナルド王子っ」

 今の私は表情に出さないが不愉快の塊だ。
 その現況となる人間が許可を与えていない私のファーストネームを呼ぶ。

「なんだ」

 足を止めることなく、寧ろ少し歩調を早くし会話をする気がないという意思表示を試みた。

「私、生徒会室への入室は控えます。あの方に何をされても平気ですからっ…なので、私の為に動いてくれた二人の事を責めないでほしいんです」

「…君は、令嬢から何をされたんだ?」

「えっ?以前お話ししましたが…」

「君がよく転ぶ瞬間に令嬢が近い場所にいただけで、直接何かをされたわけではないんだろ?」

「…ぇっ…その…」

「以前は令嬢は関係ないと話していたのに、今では令嬢を犯人のように話すんだな」

「そ…れは…その…」

「令嬢は貴族であり公爵家の人間だ。平民の君に対して何かするとは考え難いし、なんの理由もなく行動したとは思えない。君は令嬢にそのような対応をされる心当たりはないのか?」

「…私には…何も…分かりません…」

「本当にそう思っているのであれば、己の行動を見つめ直すべきだ」

 私の言葉を理解したのか、彼女は私の隣から消えた。
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