【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

レオナルド・ヴァン・ガランディオール

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 その後、リオネルの婚約者ベルナデッド・イースレーキ伯爵令嬢とジャンマルクの婚約者フロランス・コールドウェル伯爵令嬢にも話を伺った。
 二人からも平民の彼女と婚約者が親密すぎる事に焦燥感に駆られていたと話す。
 リオネルの婚約者のイースレーキは彼本人に直訴する。

「平民故に貴族に目を付けられているので守る必要がある」
 
 婚約者よりも優先することに疑問を抱いていなかった姿に言葉を失い、それからは距離を置くようになったと話す。
 ジャンマルクの婚約者のコールドウェルは、ファルビアンクスに平民の彼女が多くの令息と親密な関係だと情報を流し令嬢を焚き付けていたことを白状した。
 令嬢にどんな報告をしたのか聞けば、彼らは愛称で呼ぶことを許可していたらしい。
 私の前ではファーストネームだったが、彼女は二人きりの時には「リオ」「ルイ」「ジャン」と呼び、誰もいないのを確認した温室で逢瀬を交わしていたらしい。
 情報通のジャンマルクの婚約者は情報収集能力に長けているようだ。
 二人の話から、婚約者と平民の関係には不満があった事が分かる。
 これは、別人となる前…彼女本人の行動だ。
 私は三人の話を聞き、どちらの人格を残すべきか決意する。
 そして、側近三人についても確定した。
 三人の側近、三人の側近の婚約者、そして魂が入れ替わってしまった二人、全ての人間の話を聞き終えた。
 後はいつ彼らに報告するかだ。

「ぁっ…あの…」

 か細い声だったので私に対してなのか分からなかったが、振り向けば見知らぬ生徒が不安げな様子で私に視線を向けていた。
 姿勢や反応からして相手が貴族には見えなかった。

「何か用かい?」

 王子という立場上色んな生徒に声をかけられるので、目の前の女性もその類いかと思い女性が喜ぶ理想的な王子を演じ微笑んだ。

「ぁっはぃ…あの…お…温…温室の…件てすが…ファ…ファル…ファルビアンクス様は犯人ではありませんっ」

 彼女の言葉は意外だった。
 どの生徒も証拠もないのにファルビアンクスを犯人と噂し誰一人庇うものは居なかったというのに、目の前の生徒だけは令嬢を犯人ではないと宣言した。

「…どうしてそう思う?犯人を見たのか?」

「…正確にでは…ありません…その…前日の放課後に温室から出てきたある生徒を見ました」

「それは誰だ?」

「…王子様は存じていないかもしれませんが、平民の…メイリーさんです」

 あの女か…

「…瞬間を見たわけではないんです。ただ、温室から走り去るメイリーさんの足跡に大量の土が付着していたので…」

 学園は石畳なので、土が付着するのは温室や訓練場、乗馬用のトラックなど限られている。
 温室と訓練場にトラックは校舎を挟んで真逆の位置にある。
 訓練場やトラックで付着した土が温室まで運ばれるとは思えない。
 それに温室は歩く道は石畳となっていて、わざわざ花壇まで踏み入れない限り靴に土が付着することはない。
 あの女は自分が犯人であるにも関わらず、ファルビアンクスに罪を擦り付け貴族令息に嘘を吹聴し自身の立場を確立していた。

「そうか、教えてくれてありがとう」

 もう、私の決意が揺るぐことはない。

「ぁの…」

「ん?何だ?」

「ファ…ファルビアンクス様は、平民の私にも優しくしてくださいました。わ…私…その…周囲に良く思われてなくて…辛かったんです…食堂で…ファルビアンクス様に声を掛けられて…名前を呼んで頂いたんです。それから、周囲の対応も変わったんです。私ずっと誤解していました。ファルビアンクス様は平民がお嫌いなんだと。勝手に思い込んでいた私をあの方は助けてくれました。ファルビアンクス様の噂は嘘ばかりです。だから…その…私が言いたいのは…」

 目の前の平民は震えながらも必死にファルビアンクスが犯人ではないと訴える。
 彼女の反応から嘘を吐いたり、誰かに脅されて私のところに来たとは思えない。
 本気でファルビアンクスの無実を訴えているのだろう。
 悪評しかないファルビアンクスの味方をすることで王子である私が彼女に対し不信感を抱く可能性もあるというのに。

「大丈夫。令嬢は誤解されやすい人なんだ。分かってくれる人が一人でもいて良かった…ありがとう」

「…ぁっはいっ」

 私の決意は固まった。
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