【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

文字の大きさ
46 / 65
本題

雛菊芽依によるメイリー

しおりを挟む
 婚約者が犯人と噂されるようになってから、王子が堂々と私を訪ねるようになった。
 だが、長い間距離をおいてなのか王子はよそよそしいというか距離がある。
 まだ婚約者を気にしているのだろうが、そこは私が歩みより距離を縮めていけばいい。
 彼は表向き今回の事件を調査の為に私を訪れているが、それだけじゃないのは彼の強い眼差しから伝わってくる。
 私が王子の婚約者から理不尽に嫌がらせを受けているが「私に原因があるんです」と相手を責めず健気さをアピールした。
 その後も婚約者の悪評の噂話をやんわりと否定しつつも婚約者を悪者に聞こえるよう話せば、王子は私の言葉を信じてくれていた。
 温室を荒らされた時間について聞かれた時、答えを用意しておらず咄嗟に「放課後」と言ってしまい多少不安はあったがあの時温室には誰もいなかったので、王子の婚約者があそこにいなかったことを証明できる者はいない。
 だが、その後の質問でなぜ私がその場にいたのかを聞かれ「こっそり、お花の世話をしていました」と応えてしまった。
 焦る頭の中で「こっそり」と付け加えたのは、誰も私の行為を知らなくても不審に思われないような為の返事をした。
 私が花の世話をしていたことを知り、王子は私の事を婚約者とは違う「優しい心の持ち主」と思ったに違いない。
 王子は私の応えに満足し去っていく。

 嫌がらせと花荒しの件があり、ルイとリオは王子の婚約者をかなり警戒している。

「何かあれば俺達にすぐに言え」

 リオは騎士を目指しているので庇護欲が強く、私を何よりも優先してくれる。

「うん、ありがとう」

「…ところで、昼食後はいつもどこに?」

 ルイは常に状況を把握し、私にとっての最善策を模索してくれる。

「二人と別れた後は、校内をお散歩しながら見学してます」

「それは一人でか?」

「うん」

「…一人は危険た。私達が一緒ではない時は友人か、人通りのある場所を意識した方がいい」

「…そんなにかな?」

「相手は何するか分からない」

 王子の婚約者に私は狙われているって事だよね? そんなに過激な人なの? もしかしてヤバい相手を犯人に仕立て上げちゃった? だけど、今更だよね…

「わかった…」

 不安になりながら二人の言葉に素直に頷く私に、二人は王子の婚約者の犯行を暴く決意をしていた。

 一度放課後の温室を見ておこうと向かうと王子が先生と温室に入っていくのを目撃した。
 急いで近付くと扉には「生徒立ち入り禁止」の張り紙がされていた。
 躊躇いはあったが、隠れて二人の会話を盗み聞きに行った。
 遠くてよく聞こえなかったが、二人は「噂話を気にしている」とか「目撃者」「犯人」と聞こえたので私の事を話しているのが分かる。
 もう少し近付き二人の会話に集中する。

「最近の彼女は、なんだか別人のように変わったな。人間関係について身分関係なく接する姿は好ましくある」

 リルコットの言葉に心臓が跳び跳ねた。
 彼とは教師と生徒としての最低限の関わりしかないのに、私が変わった事に気付いてしまうなんて…これは教師だから? それとも…

「先生は…いえっなんでもありません」

 きっと王子もリルコットの言葉が気になったのだろう。
 それでも聞かなかったのは、相手が教師なので控えたのだろう。
 私としては聞いてほしかった。だって、これって教師と生徒の禁断…だよね?

「モテるって罪ぃ~」

 それから授業の時にそれとなくリルコットを観察すると、熱い視線を送られていることに気付いた。

「私って、今まで全く気付かなかったのね…」

 なので、授業の合間に私から合図を送ってみた。
 リルコットは無表情でありながら分かりやすく視線を逸らした。

「やっぱりリルコット先生は私の事を?」

 あんなに美しくて生徒に人気な大人の男性に、思いを寄せられて悪い気はしなかった。キャーキャー騒いで追い掛ける女生徒が多数いるっていうのに、先生は私を選んだ…んふふ、なんかごめんなさぁい。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです

あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。 社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。 辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。 冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。 けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。 そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ“自分の居場所”を取り戻していく。 静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

処理中です...