【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

文字の大きさ
48 / 65
本題

課題

しおりを挟む
 食事を終え残りの昼休憩の時間は、ただただ構内を歩き回っていた。

「ファルビアンクス」

 ふらふら歩いている私を呼び止めたのは教師のリルコット。
 あれからまだ温室への入室禁止が解けていないので、先生と会話するのは久しぶりだった。

「はい」

「少々手伝ってほしい事があるんだが、時間あるか?」

「はい、問題ないです」

 暇を持て余していたので、先生に用事を与えられ内心喜んでいた。
 先生に着いていくと、辿り着いたのは温室だった。

「…先生…」

 温室はまだ生徒の入室は禁止のまま。先生が学園の決定事項に背く行為を生徒にさせるとは思っていない…が、不安があった。

「あぁ、ファルビアンクスはここで待っていなさい」

 先生の指示通り私は温室の前で待っていた。
 温室に入室したわけではないが、事件のあった場所に一人で不審に立ち尽くしているのを他の生徒に目撃され更に噂が起きたらと心配になった。

「先生、早く来て…」

 祈りながら先生を待った。

 ガチャ

「ファルビアンクス、これを」

 先生から包み紙を渡された。

「何ですか?」

「これは花の種だ。温室への入室は許可はまだ降りていないので、ファルビアンクスには課題をだす。今まで花の育て方を教えた知識を使って、この種を育て花を咲かせてみなさい」

「…はい」

 思いもよらない先生の課題に驚いたが、人目を避け隠れるように日々過ごし何の目標を無かったので先生の提案にやる気が起きた。

「花が咲いたら報告に来なさい」

「はいっ…先生、この種はなんの種ですか?」

 種から育てるには、花が好む環境にするのが大事。
 種を見ただけではどんな花が咲くか想像も出来なかったので直接先生に聞いてみた。

「温室で水やりを忘れなければ、育てるのに難しい花じゃない。咲いたら教えてくれ」

 先生は教えてくれなかった。
 私を試すような先生の口ぶり。
 ちょっぴり意地悪な表情をもろにくらい、ドキっとしてしまった。
 久しぶりだったので、先生に対しての免疫が弱まっていたのか、生徒に人気の色気のある教師の不意の表情に引っ掛かってしまい、危うく惚れてしまうところだった。

 学園が終わり屋敷に戻るとすぐに植木鉢を用意し、先生からの課題の種を育てることにした。

「スカーレット、もうすぐ卒業ね。ドレスどうする?」

 学園での事件を知らない母は能天…前向きだ。
 学園から戻り種を植え、どんな花が咲くのか楽しみだなぁと眺めていると使用人から母が呼んでいると呼ばれた。
 何事かと思えば、母は卒業式の後のパーティーのドレスについて発注する時期にきていると話す。

「色は青かしらね、金の刺繍入りで」

「私は青よりも紫の方が…」

 深く吸い込まれるような紫色のドレスを着たい。

「何を言っているの?青じゃなきゃダメよ」

「青…に意味があるんですか?」

 卒業式のパーティーでは青色を着なければいけないと決まりでもあるのだろうか?

「青はレオナルド王子の瞳の色じゃない…あら、それも忘れちゃった?大事なパーティーでは婚約者の瞳や髪色のドレスを着用するものなのよ」

 大事なパーティーでは婚約者の色を着る…

「あの…もし、別の色を着用した場合でどうなりますか?」

「不仲と噂されて、婚約解消の噂も出回ることもあるわ」

「…そうなんですね…」

 なら、尚更私は青色のドレスは着用するべきではない。 
 王子も私が青色のドレスを着て現れたら不快に思うはず。
 青はきっとあの子が…

「お母様…」

「何?」

 お母様の満面の笑みから「青以外の色を~」なんて言えなかった。
 婚約解消となれば家族にも迷惑がかかると聞く。
 記憶喪失で迷惑を掛け、王子との婚約解消で更に迷惑を掛けることになると思うと申し訳なくなってくる。
 傷は浅い方がと言うが、どう選択したら傷は浅くすむんだろうか? 
 王子はきっと私と婚約解消し、意中の彼女と婚約したいと願っていると思う。
 私は婚約解消されるのは絶対となるので、傷が浅くするには……
 一つ目は、卒業する前にひっそりと婚約解消しておく。
 二つ目はドレスは青色以外をこっそり注文し当日、青いドレスをダメにして仕方なく他の色のドレスを着用し、婚約解消も卒業式後にひっそりこっそりと行う。
 三つ目は…なんだろう…青いドレスを着て卒業式後に婚約を解消する?
 だけど、好きでもない人間が王子色のドレスを着用して現れたら、「気合い入りすぎている勘違い婚約者」と映るんだろう。
 王子の本命も王子色のドレスを着用するだろうから色が被って私は余計惨めな思いをするだけ…

「どうしよう…」

 つい口にしてしまった。

「そうよね、一生に一度の卒業式。思い出に残るものにしたいわよね~」

 お母様は娘が婚約者と良好だと信じて疑う様子がない。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです

あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。 社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。 辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。 冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。 けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。 そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ“自分の居場所”を取り戻していく。 静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

処理中です...