【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

監視

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 ドレスが届いた翌日、真相というか間違って私に届いてしまったことを報告する為私から王子の教室を訪ねた。
 私から王子を訪ねるなんて初めての事かもしれない。
 Aクラスの私が王子のDクラスまで歩くと、とても遠いと感じる。
 普段通らない私が現れるとすれ違う人達が驚きの表情を見せる。
 Dクラスまで来たは良いものの、この後どうするべきか悩んでしまう。
 他人のクラスなので自由に入るわけにもいかないし、誰かに頼むもDクラスの人が分からない。
 喩えDクラスの生徒が分かっても、私から声を掛ける事に躊躇ってしまう。

「あの…ガランディオール王子にご用ですか?」
 
 他人のクラスの前で立ち尽くす私に、見かねた男子生徒が声を掛けてくれた。

「ぁっはい」

「お呼び致しましょうか?」

 どうしたら良いのか悩んでいたので、彼の手助けは嬉しかった。

「はいっありがとうございます」

「えっ?ぁっはい」

 私がお礼を言うと彼は少し驚いたように見え、教室に入っていった。
 そして一分もしないうちに王子が現れた。
 王子を待っているだけの私はいつの間にか周囲の視線を集めていて、王子が現れると先ほどまでのざわめきが消える。

「ぁっあの…その…」

「…場所を変えよう」

 王子は周囲の視線を気にして場所を変えることを提案する。

「はい…」

 私から訪れたのに、王子に気を遣わせてしまったことを反省した。
 無言であるく王子の後ろを私は静かに着いていく。

「ここでいいか」

 王子は使われていない教室へ入っていく。
 勝手に使用して良いのか疑問に思うも、王子が規則違反するとは思えないので言われるがまま教室に入った。

「どうした?わざわざ私を訪ねてくるなんて珍しい。何かあったのか?」

「あっはい。その…昨日私のところにドレスが届きまして…」

 間違って私のところに届いてしまったので、贈るべき相手に渡さないと彼女のドレスがなくなってしまう…

「あぁ、是非パーティーではあれを着てくれないか?」

 予想とは違う王子の反応に困惑する。

「…私へ…ですか?」

 あれは…私宛なの?

「勿論、どうしてだ?」

「…えっと…あのドレスは他の方にではなく、私が着ても?」

「ファルビアンクス嬢に贈った物だからな」

「王子様には…その…お相…手が…」

「相手?何のだ?」

「…王子様は…その…お相手が…想い人がいらっしゃるんですよね?」

「想い人?」

「お相手を守るために私を監視していると…」

 あの日中庭で目撃してしまった事を伝えた…

「…あぁ、あれの事か。ファルビアンクス嬢は勘違いしている」

「…勘違いですか?」

「私が監視しているのは、ファルビアンクス嬢ではなく相手の方だ」

「ん?相手を…監視ですか?」

 相手とは彼女の事? 彼女をどうして王子が監視する必要があるのか私には分からなかった。

「あぁ、最近のファルビアンクス嬢の悪評を故意に流しているのが彼女ではないかと思ってね。調べていたら温室を荒らしたのも彼女の可能性が出てきた」

「…彼女が?」

 王子の意外な言葉に頭が追い付かなくなりだした。

「あぁ。彼女は悪評だけではなく令嬢に危害を加える可能性もあったので傍で監視していた。それを私が彼女に好意があると受け取られ勘違いされてしまった」

 そうだったんだ……良かった……ん? 良かった?

「そうなんですね…」

「令嬢の無実を晴らしたかったんだが、まだ確実な証拠がないんだ。すまない」

「えっいえ、そんな。無実と信じ、調査して頂いているだけで私は充分です」

「そんなのは当然だ。花を育てているファルビアンクスが花を荒らすとは考えられない」

 皆が私を疑っていたのに、王子は信じてくれてたんだ…それなのに私は王子に裏切られたって勘違いしていた…

「勘違いは晴れたか?」

「あっはい」

「なら、あのドレスと宝石を卒業パーティーで着用してくれるか?」

「はい、ありがとうございます…お返しは…」

 貰ってばかりではいけない、何かお返ししなければと思うも、相手が王子だと何を贈れば良いのかなんて分からず直接本人に尋ねてしまった。
 サプライズという概念は私にはないみたい。

「なら、お願いがある」

「はいっなんでしょう?」

 王子からの「お願い」は貴重だ。
 どんなことでも私に出来ることなら用意いたしましょう。

「私の事をレオナルドと呼んでくれないか?」

「…へ?えっと…お名前を呼ぶ…だけですか?もっと…その…」

「ファラビアンクスは私を王子様としか呼ばないだろ?距離があるようで寂しかった」

 寂しい…って、そんな切ない表情で言われたら今すぐにでもお呼び致します。

「レレレオ…レオオド王子」

 …難しかった。王子を名前で呼ぶだなんて、恐れ多く思った以上にハードルが高い。

「ははっ、難しければレオでいい」

 レェオォーーーー。そっちの方がレベルが高いです。

「いいえ…その…練習します」

「待ってる。私もスカーレットと呼んでも良いか?」

「ほぇっ…はぃっい…もちろん」

 私の名前じゃないんだけど、今の私の名前で馴染みは薄くはあるけど呼ばれるとちょっとドキッとする。

「スカーレット、もうすぐチャイムがなる。教室に戻ろう」

 それとなくエスコートされ、緊張する。

「はっはいっ」

 名前を呼ばれただけなのに嬉しくて恥ずかしい。
 世にいる恋人達は名前を呼ばれただけでこんなにも幸せになるのだろうか?
 幸せな気分で王子を見送り私は教室へ戻ろうとしたが、Dクラスの前を通っても王子は教室には入らなかった。

「…レッレオ…ルド王子?」

「ん?教室まで送る」

 私の質問を察知して王子から返事が来た。
 教室までなんて送るようなことではないのに、紳士的な王子は一番端のAクラスまで本当に送ってくれた。
 私達を目撃した生徒は驚いていたが、それ以上に私は驚いていた。
 その日、私は授業に身が入らず、ずっと上の空だった。
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