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オマケの続き
演奏会
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公爵が来てくれたことに、気分が上がりニヤけてしまうのを必死に押さえる。
今日だけは浮かれて失敗したくない。
何度も深呼吸して気持ちを落ちつ…エヘ…ふぅ…落ち着くのよ落ち着くの…エヘヘ、公爵が態々花束まで用意して来てくれたっ。
「頑張らないわけにはいかない…よっしゃー」
「はぁ…」
後ろにいるジャネットの溜め息が聞こえたが、聞こえなかったフリをした。
そして、気合いをいれて澄まし顔を作り舞台に上がる。
一度お辞儀をして、客席を見渡すと自然と公爵の姿を探してしまう。
見つけてしまうとニヤけそうになるのを耐え、彼の位置を確りと確認する。
両親やカシューベルバ先生、ファイン男爵、トリルム伯爵それにニクソン伯爵令嬢にアドリーヌ令嬢、モアノア令嬢の姿もあった。それだけでなく、立食パーティーに招待した貴族のほとんどを確認することができ、席も満席のように感じた。
そして、演奏を開始する。
一音弾いただけで今までと感覚が違うことに気がつく。
音を聴くと音楽だった。私は常に楽譜通り一音一音丁寧に弾いていたが、今は初めて音楽を弾いている感覚。私が弾いているのに曲に引っ張られていく。
気持ちいい、終わりたくない…なのに終わりに向かっていく…終わってしまう…
今回選んだ曲は以前弾いた曲もあれば、今回初めて弾く曲もある。
主に背景に恋愛がちなんだものが多かった。これは偶然で、なんとなく選んだのがそうだっただけ…
そして数時間の演奏はあっという間に終わってしまった…
弾き終わり、こんなにも感情を持っていかれたのは始めての経験。お辞儀をして頭をあげ、無意識に彼に向けて微笑んでいた。会場には両親や友人、それに興味を持って南部まで足を運んだ貴族がいるというのに、私は彼しか見えていなかった。
その後控え室に戻り、始めて味わった感覚と向き合っている。
コンコンコン
「はい」
「ご挨拶したいとうお客様がいらっしゃってます」
「…はい、どうぞ」
扉が開き現れたのは…
「ヴァレリア、あなたの演奏素晴らしかったわ」
「あぁ、前回も良かったが今回は一段と腕をあげたなぁ」
現れたのはお母様とお父様で、入ってきて早々誉めてくれる。
「はい、ありがとうございます。皆さんも来てくださったのですね?」
両親の後ろにニクソン令嬢にアドリーヌ令嬢、モアノア令嬢の姿があった。
「今回は暖かみがあるというか…」
「柔らかく包まれるような…」
「愛を感じました」
ニクソン令嬢アドリーヌ令嬢がなんと言葉にしようか選んでいると、モアノア令嬢が真剣な眼差しで濁すことなく直球で来た。
「あ…愛ですか?」
「はい」
モアノア令嬢に再度確認するも力強く頷かれ、他の人に視線をやれば皆が嬉しそうに頷いていた。
私は「愛」を表現したつもりはない。
ただ、楽しくて…あの人に聴いてほしくて…それだけだった。
コンコンコン
「公爵夫人、お客様です」
「はい、どうぞ」
これ以上私を訪ねてくるような人とは誰だろう?
部屋にいた全員が注目すると、入ってきたのはカシューベルバ先生だった。
「今回の演奏会はとても素晴らしいものでしたね」
「ありがとうございます」
「情感豊かで、楽譜に込められた以上の思いが表現されていました」
楽譜に込められた思い…私は今までこんな感情になった事はなかった…
これが表現するということだったの?
今日だけは浮かれて失敗したくない。
何度も深呼吸して気持ちを落ちつ…エヘ…ふぅ…落ち着くのよ落ち着くの…エヘヘ、公爵が態々花束まで用意して来てくれたっ。
「頑張らないわけにはいかない…よっしゃー」
「はぁ…」
後ろにいるジャネットの溜め息が聞こえたが、聞こえなかったフリをした。
そして、気合いをいれて澄まし顔を作り舞台に上がる。
一度お辞儀をして、客席を見渡すと自然と公爵の姿を探してしまう。
見つけてしまうとニヤけそうになるのを耐え、彼の位置を確りと確認する。
両親やカシューベルバ先生、ファイン男爵、トリルム伯爵それにニクソン伯爵令嬢にアドリーヌ令嬢、モアノア令嬢の姿もあった。それだけでなく、立食パーティーに招待した貴族のほとんどを確認することができ、席も満席のように感じた。
そして、演奏を開始する。
一音弾いただけで今までと感覚が違うことに気がつく。
音を聴くと音楽だった。私は常に楽譜通り一音一音丁寧に弾いていたが、今は初めて音楽を弾いている感覚。私が弾いているのに曲に引っ張られていく。
気持ちいい、終わりたくない…なのに終わりに向かっていく…終わってしまう…
今回選んだ曲は以前弾いた曲もあれば、今回初めて弾く曲もある。
主に背景に恋愛がちなんだものが多かった。これは偶然で、なんとなく選んだのがそうだっただけ…
そして数時間の演奏はあっという間に終わってしまった…
弾き終わり、こんなにも感情を持っていかれたのは始めての経験。お辞儀をして頭をあげ、無意識に彼に向けて微笑んでいた。会場には両親や友人、それに興味を持って南部まで足を運んだ貴族がいるというのに、私は彼しか見えていなかった。
その後控え室に戻り、始めて味わった感覚と向き合っている。
コンコンコン
「はい」
「ご挨拶したいとうお客様がいらっしゃってます」
「…はい、どうぞ」
扉が開き現れたのは…
「ヴァレリア、あなたの演奏素晴らしかったわ」
「あぁ、前回も良かったが今回は一段と腕をあげたなぁ」
現れたのはお母様とお父様で、入ってきて早々誉めてくれる。
「はい、ありがとうございます。皆さんも来てくださったのですね?」
両親の後ろにニクソン令嬢にアドリーヌ令嬢、モアノア令嬢の姿があった。
「今回は暖かみがあるというか…」
「柔らかく包まれるような…」
「愛を感じました」
ニクソン令嬢アドリーヌ令嬢がなんと言葉にしようか選んでいると、モアノア令嬢が真剣な眼差しで濁すことなく直球で来た。
「あ…愛ですか?」
「はい」
モアノア令嬢に再度確認するも力強く頷かれ、他の人に視線をやれば皆が嬉しそうに頷いていた。
私は「愛」を表現したつもりはない。
ただ、楽しくて…あの人に聴いてほしくて…それだけだった。
コンコンコン
「公爵夫人、お客様です」
「はい、どうぞ」
これ以上私を訪ねてくるような人とは誰だろう?
部屋にいた全員が注目すると、入ってきたのはカシューベルバ先生だった。
「今回の演奏会はとても素晴らしいものでしたね」
「ありがとうございます」
「情感豊かで、楽譜に込められた以上の思いが表現されていました」
楽譜に込められた思い…私は今までこんな感情になった事はなかった…
これが表現するということだったの?
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