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オマケの続き
不調を来す廊下
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到着した廊下は皆が心配するほど恐怖は感じず、私にはただの廊下にしか思えない。
先ほど遊んでいたフェップンは近くの部屋に移され待機している。
皆で呪われた廊下を歩く。
普段気にして廊下を歩いたことはないが、壁や天井に亀裂もなければ床が軋むわけでもなく何も違和感は感じない。
廊下を歩いていき突き当たりで折り返し、何度往復しても私に体調不良も体への影響もない。
…何も起きなかった。
今度は一部屋一部屋調べることにした。
部屋はなんの問題もないように思える。呪われた廊下にある部屋は使用が控えられているが掃除も行き届き換気もされているので埃っぽさもない。扉の開閉も問題なく勝手に閉まる事もない。私が想像できる不可思議な現象は全く起きないので隣の部屋へ移動する。
ワンッ
扉を開けると犬のフェップンが出迎えてくれた。
フェップンは再び遊んでもらえると思い、咥えたボールを私の足元に置いた。
尻尾を振り待ち続けている姿に負けて、ボールを取り軽く投げる。
臨時の犬部屋は花瓶などの割れるようなものは無く、広く感じるがやはり廊下よりも物足りなさそうには見える。
何度も足下にボールを置く姿は健気で離れがたいが、いつまでもここにいては折角許可が下りて確認に来たことが無駄になってしまう。この場所に来るのにあれだけルーリは反対だったので、次は許されないかもしれない。
「フェップン、また今度ね」
頭を撫でボールを拾わずに部屋を出る。
クゥン
やめて、そんなふうに鳴かないで。
私は後ろ髪を引かれながら「また今度遊ぼうね」と心の中で呟き部屋を後にする。
ワンッ
「あっこらっ」
慌てた声に振り向くと、犬も一緒に廊下に出ていた。中途半端に遊んでしまったので、彼を刺激してしまったらしい。
賢いフェップンは誰かに飛び付くことはなく、私の足元にボールを置いて座っている。行儀よくお座りして私を見上げる姿に心を持っていかれない人間はいないだろう。
犬に興味もなかった私でさえこの有り様なんだから、大抵の人はイチコロに違いない。
「…フェップン、少しだけよ?」
ワンッ
負けた。
分かっているのかいないのか、返事だけは優秀だ。
「あれ?ボール…」
「あっどうぞ」
使用人からボールを受け取り軽く投げれば、嬉しそうに追いかけるフェップンの後ろ姿を皆で眺める。
ボールを咥えて戻ると、私の足元にそっと置き次を待っている。
何度か繰り返していると「フェップンとは私が遊びますので、奥様はお部屋に…」と使用人に気を使われた。
私も廊下をもう少し見たかったので、彼の言葉に内心助かった。
「お願いね」
「はい」
ボールを拾って彼に渡そうとすると既にボールは私の足元にはなかった。
「あら?」
辺りを見渡すと少し離れた所で転がっていて、近くにいた者がボールを拾う…
何で?
「ボール…良いかしら?」
「ぁっはい」
ボールを受け取り、私は静かに廊下に置いた。
止まっていたボールは、ゆっくりと転がっていく。
「動いた…」
「呪いっ奥様、離れてください」
皆が突然動き出したボールに「呪い」を感じ慌て始める。
「犬を部屋に戻して、他の皆は動かないで」
犬がボールを持っていかないように遠ざけ、私は慌てふためく皆を制止ボールを眺めた。
ボールはいつまでも転がり続け、壁に当たり止まった。
先ほど遊んでいたフェップンは近くの部屋に移され待機している。
皆で呪われた廊下を歩く。
普段気にして廊下を歩いたことはないが、壁や天井に亀裂もなければ床が軋むわけでもなく何も違和感は感じない。
廊下を歩いていき突き当たりで折り返し、何度往復しても私に体調不良も体への影響もない。
…何も起きなかった。
今度は一部屋一部屋調べることにした。
部屋はなんの問題もないように思える。呪われた廊下にある部屋は使用が控えられているが掃除も行き届き換気もされているので埃っぽさもない。扉の開閉も問題なく勝手に閉まる事もない。私が想像できる不可思議な現象は全く起きないので隣の部屋へ移動する。
ワンッ
扉を開けると犬のフェップンが出迎えてくれた。
フェップンは再び遊んでもらえると思い、咥えたボールを私の足元に置いた。
尻尾を振り待ち続けている姿に負けて、ボールを取り軽く投げる。
臨時の犬部屋は花瓶などの割れるようなものは無く、広く感じるがやはり廊下よりも物足りなさそうには見える。
何度も足下にボールを置く姿は健気で離れがたいが、いつまでもここにいては折角許可が下りて確認に来たことが無駄になってしまう。この場所に来るのにあれだけルーリは反対だったので、次は許されないかもしれない。
「フェップン、また今度ね」
頭を撫でボールを拾わずに部屋を出る。
クゥン
やめて、そんなふうに鳴かないで。
私は後ろ髪を引かれながら「また今度遊ぼうね」と心の中で呟き部屋を後にする。
ワンッ
「あっこらっ」
慌てた声に振り向くと、犬も一緒に廊下に出ていた。中途半端に遊んでしまったので、彼を刺激してしまったらしい。
賢いフェップンは誰かに飛び付くことはなく、私の足元にボールを置いて座っている。行儀よくお座りして私を見上げる姿に心を持っていかれない人間はいないだろう。
犬に興味もなかった私でさえこの有り様なんだから、大抵の人はイチコロに違いない。
「…フェップン、少しだけよ?」
ワンッ
負けた。
分かっているのかいないのか、返事だけは優秀だ。
「あれ?ボール…」
「あっどうぞ」
使用人からボールを受け取り軽く投げれば、嬉しそうに追いかけるフェップンの後ろ姿を皆で眺める。
ボールを咥えて戻ると、私の足元にそっと置き次を待っている。
何度か繰り返していると「フェップンとは私が遊びますので、奥様はお部屋に…」と使用人に気を使われた。
私も廊下をもう少し見たかったので、彼の言葉に内心助かった。
「お願いね」
「はい」
ボールを拾って彼に渡そうとすると既にボールは私の足元にはなかった。
「あら?」
辺りを見渡すと少し離れた所で転がっていて、近くにいた者がボールを拾う…
何で?
「ボール…良いかしら?」
「ぁっはい」
ボールを受け取り、私は静かに廊下に置いた。
止まっていたボールは、ゆっくりと転がっていく。
「動いた…」
「呪いっ奥様、離れてください」
皆が突然動き出したボールに「呪い」を感じ慌て始める。
「犬を部屋に戻して、他の皆は動かないで」
犬がボールを持っていかないように遠ざけ、私は慌てふためく皆を制止ボールを眺めた。
ボールはいつまでも転がり続け、壁に当たり止まった。
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