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オマケの続き
呪われた庭
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「イーサン、剪定した枝にいる虫にも注目してくださいね?特に毛虫とか…確認するだけで決して近づかないでくださいよ」
「はい。私が確認して参りますので奥様はこちらでお待ちください」
イーサンの後にこっそり着いていこうかな?と思っていたが、そんな私の考えを見越してか、念を押された。
発疹が出るものってなんだろうな…虫じゃないとしたら、切り口から溢れた樹液で被れるってのは聞いたことがある。
もしそうなら、庭師の彼なら公爵家に植えられている植物の事は長年の経験で把握していそうだけどな…
「あ…あの…」
患部を冷やしていたドルフィーが遠慮がちに口を挟んだ。
「何です?」
「毛虫ならいたのを確認しましたよ」
「…いたんですか?」
「はい。ですが、触ってはいません。毛虫には毒があり触れれば痛みが現れるので」
「…近付きましたか?」
「はい」
「どのくらいの距離に?」
「剪定した枝を抱えていたので…」
「…それですね」
「…いえ、私は毛虫に触れていません」
「近付いただけでも毒に触れてしまうことはあるんです」
「…触れてないのに…ですか?」
「毒針を飛ばす毛虫もいるそうですよ」
「毒針を飛ばすんですか?」
植物を相手にしているので虫にも詳しいつもりでいたドルフィーも、毒針を飛ばす毛虫については知らなかった。
なぜ私が知っているかというと、ひき…自宅で待機していた際、夏場によくやる害獣駆除系のテレビをよく観ていた時に、そのような話を見たからだ。
「はい。かなり針は小さく目視は難しいですが、毛虫を直接触れた時と同じようにピリピリしたり激しい痒みが現れます。飛んできた針が服に付着し、そこに触れてしまっただけで同じ症状が出る時もあります。なので、その服も確りと洗ってください」
「…はい」
「お医者様に塗り薬を頂けば直に治まるかと」
それから医者が到着し、針を飛ばす毛虫については知らなかったが毛虫に触れた時と同じ症状ではあると言うことで塗り薬を頂き塗っている。
庭の方は毛虫を見つけたら距離を取り風向きも考え、消毒は念入りにする。その際ローブを被り皮膚が露出しないよう気を配ると決まった。
「なんだよ、呪いじゃないのかよ」
「そうみたいだな」
ん?彼らの会話から、呪いでないことにがっかりしたような…「呪いであれば良いのに」と思っているように感じた。
あの二人は呪いを怖がるというより、呪いを楽しんでいる雰囲気が…
なんだか、幽霊が出ると有名なトンネルや廃墟に遊び半分で行く人達に見える。
この人達、周囲に「公爵家ではこんな事が起きたぁ」って大袈裟に話して自慢話のように語っていそう…この事もイーサンに伝えておこう。
呪いの庭も解決されたので部屋に移動し休んでいる。
北部から無事に帰って来たとはいえ、早々に問題が起こるのは確かに「呪われている」と思えてくる。
「ダメだっそんなこと思うなっ」
私も遂に呪いに毒され始めたのかもしれない…
漸く帰ってきたのに、公爵はお仕事で不在…公爵夫人の私は何もすることがない、というより何をすればいいのか分からない。
前世では学生を終え…ひ…き…こもりだったから、社会経験がないので転生した人が「前世の知識を使って企業しよう」が私には出来ない。バイト経験すらないのは致命的なのかもしれない。
今更あの時の事を後悔しても遅いのは分かっているが、こうなると知っていたら皆が学校で勉強している時間に外に出るのが恥ずかしいなどと思わずいろんな事を経験しておけば良かった。
「…はぁ、公爵夫人は何をすれば良いんだぁ」
「淑女らしくいるのが基本です」
「げっ…」
一人だと思い、ソファで伸びをしながら叫ぶと後ろにはウィルマが控えていた。紅茶の準備と言って出ていったのに、いつの間にか戻ってきていたらしい。
「使用人から聞きましたが、修繕してからは体調不良を訴える者はいなくなったそうですよ」
「えっそうなの?」
「はい。「今のところは」ですが」
ジャネットが言いたいのは、北部へ向かう前に傾いた廊下の修繕した事の結果。床の傾きぐらいで体調不良が起きるとは信じてもらえずにいたが、皆順調に回復しているようだ。だからなのか、会う使用人皆が元気過ぎると感じる。私が公爵に会えずに落ち込んでいるだけかもしれないが、皆の元気に圧倒される。
そして公爵が帰宅し、私は久しぶりに顔を会わせる。夕食を共にするだけなのに、緊張してしまう。ジャネットの言ったように淑女らしく、食事マナーに神経を尖らせる。好きな人に食べ方が汚いと思われたくないので、優雅に見えるよう必死だった。
「北部はどうでしたか?」
「北部でも、かき氷は人気でした」
「そうですか、貴方にはピアノだけでなく商売の才能もあるんですね」
「商売?いえっそんな。あれは偶然です」
「謙虚ですね」
いえ、本当に偶然なんです。
前世の知識を利用したカンニングみたいなもので、公爵に誉められるのは嬉しいが、不正をしたようで素直に受け取れないのが悔しい。
その後も公爵と幸せな時間を過ごした…といっても和やかな食事だけ。その…夫婦として…は、まだ何もなく寝室も別々。「呪い」と呼ばれるものを解決したつもりでも、公爵は私と長時間一緒にならないように去っていく。
イーサンから聞いていなければ凹んでいたが、今は強引に彼との時間を作ることが本当に正しいのか分からずにいた。
どうすれば私達は夫婦になれるのだろうか?
私達はキスもしたことないんだよね…キス…キス…公爵とキスなんて…はぅっ。
キスなんてしたことない…これからは歯磨き念入りにしないと…
ん?そこまでどう持ち込めば良いの?自然な流れってどういう流れ?恋愛ドラマ沢山観ておけばよかった…やはり世に言う「色仕掛け」で攻めるべきなんだろうか?…色仕掛け…色仕掛け…ってどうすれば良いの?
セクシーな衣装で「公爵ぅん」って言ったり?…ん~分からない。
今の私は前世とは違い、かなりメリハリのある体型をしているので自信はある。あるのは体型に関してのみ…男の人の誘い方は…どうすれば良いんだろうか?む…胸を強調すれば良いのかな?…こ…こう…寄せて上げる…いや、胸を強調して公爵を誘惑したとして、それに引っ掛かる公爵は見たくないっ。
「もうぉどうしたら良いのぉぉぉぉぉ」
「静かにお休みになってください」
「あっはい」
またしても、ジャネットがいるのを忘れていた。
はっ、ここはジャネットに聞くのも…いやっ聞いたら揶揄われそうだから止めよう。
ジャネットではなく誰か他の人に聞く?例えばニクソン令嬢とか?…ダメだ、なんて切り出すのさ?「どうやって男性を誘うんですか?」って?恥ずかしすぎる…ゆっくり自分で考えよう…はっ、キスする時って目を瞑るんだよね?出来るかな?公爵の顔が綺麗過ぎて、勿体なくて瞼閉じれないよきっと…ガン見しながらのキスって…怖いって思われちゃうよね…
「はい。私が確認して参りますので奥様はこちらでお待ちください」
イーサンの後にこっそり着いていこうかな?と思っていたが、そんな私の考えを見越してか、念を押された。
発疹が出るものってなんだろうな…虫じゃないとしたら、切り口から溢れた樹液で被れるってのは聞いたことがある。
もしそうなら、庭師の彼なら公爵家に植えられている植物の事は長年の経験で把握していそうだけどな…
「あ…あの…」
患部を冷やしていたドルフィーが遠慮がちに口を挟んだ。
「何です?」
「毛虫ならいたのを確認しましたよ」
「…いたんですか?」
「はい。ですが、触ってはいません。毛虫には毒があり触れれば痛みが現れるので」
「…近付きましたか?」
「はい」
「どのくらいの距離に?」
「剪定した枝を抱えていたので…」
「…それですね」
「…いえ、私は毛虫に触れていません」
「近付いただけでも毒に触れてしまうことはあるんです」
「…触れてないのに…ですか?」
「毒針を飛ばす毛虫もいるそうですよ」
「毒針を飛ばすんですか?」
植物を相手にしているので虫にも詳しいつもりでいたドルフィーも、毒針を飛ばす毛虫については知らなかった。
なぜ私が知っているかというと、ひき…自宅で待機していた際、夏場によくやる害獣駆除系のテレビをよく観ていた時に、そのような話を見たからだ。
「はい。かなり針は小さく目視は難しいですが、毛虫を直接触れた時と同じようにピリピリしたり激しい痒みが現れます。飛んできた針が服に付着し、そこに触れてしまっただけで同じ症状が出る時もあります。なので、その服も確りと洗ってください」
「…はい」
「お医者様に塗り薬を頂けば直に治まるかと」
それから医者が到着し、針を飛ばす毛虫については知らなかったが毛虫に触れた時と同じ症状ではあると言うことで塗り薬を頂き塗っている。
庭の方は毛虫を見つけたら距離を取り風向きも考え、消毒は念入りにする。その際ローブを被り皮膚が露出しないよう気を配ると決まった。
「なんだよ、呪いじゃないのかよ」
「そうみたいだな」
ん?彼らの会話から、呪いでないことにがっかりしたような…「呪いであれば良いのに」と思っているように感じた。
あの二人は呪いを怖がるというより、呪いを楽しんでいる雰囲気が…
なんだか、幽霊が出ると有名なトンネルや廃墟に遊び半分で行く人達に見える。
この人達、周囲に「公爵家ではこんな事が起きたぁ」って大袈裟に話して自慢話のように語っていそう…この事もイーサンに伝えておこう。
呪いの庭も解決されたので部屋に移動し休んでいる。
北部から無事に帰って来たとはいえ、早々に問題が起こるのは確かに「呪われている」と思えてくる。
「ダメだっそんなこと思うなっ」
私も遂に呪いに毒され始めたのかもしれない…
漸く帰ってきたのに、公爵はお仕事で不在…公爵夫人の私は何もすることがない、というより何をすればいいのか分からない。
前世では学生を終え…ひ…き…こもりだったから、社会経験がないので転生した人が「前世の知識を使って企業しよう」が私には出来ない。バイト経験すらないのは致命的なのかもしれない。
今更あの時の事を後悔しても遅いのは分かっているが、こうなると知っていたら皆が学校で勉強している時間に外に出るのが恥ずかしいなどと思わずいろんな事を経験しておけば良かった。
「…はぁ、公爵夫人は何をすれば良いんだぁ」
「淑女らしくいるのが基本です」
「げっ…」
一人だと思い、ソファで伸びをしながら叫ぶと後ろにはウィルマが控えていた。紅茶の準備と言って出ていったのに、いつの間にか戻ってきていたらしい。
「使用人から聞きましたが、修繕してからは体調不良を訴える者はいなくなったそうですよ」
「えっそうなの?」
「はい。「今のところは」ですが」
ジャネットが言いたいのは、北部へ向かう前に傾いた廊下の修繕した事の結果。床の傾きぐらいで体調不良が起きるとは信じてもらえずにいたが、皆順調に回復しているようだ。だからなのか、会う使用人皆が元気過ぎると感じる。私が公爵に会えずに落ち込んでいるだけかもしれないが、皆の元気に圧倒される。
そして公爵が帰宅し、私は久しぶりに顔を会わせる。夕食を共にするだけなのに、緊張してしまう。ジャネットの言ったように淑女らしく、食事マナーに神経を尖らせる。好きな人に食べ方が汚いと思われたくないので、優雅に見えるよう必死だった。
「北部はどうでしたか?」
「北部でも、かき氷は人気でした」
「そうですか、貴方にはピアノだけでなく商売の才能もあるんですね」
「商売?いえっそんな。あれは偶然です」
「謙虚ですね」
いえ、本当に偶然なんです。
前世の知識を利用したカンニングみたいなもので、公爵に誉められるのは嬉しいが、不正をしたようで素直に受け取れないのが悔しい。
その後も公爵と幸せな時間を過ごした…といっても和やかな食事だけ。その…夫婦として…は、まだ何もなく寝室も別々。「呪い」と呼ばれるものを解決したつもりでも、公爵は私と長時間一緒にならないように去っていく。
イーサンから聞いていなければ凹んでいたが、今は強引に彼との時間を作ることが本当に正しいのか分からずにいた。
どうすれば私達は夫婦になれるのだろうか?
私達はキスもしたことないんだよね…キス…キス…公爵とキスなんて…はぅっ。
キスなんてしたことない…これからは歯磨き念入りにしないと…
ん?そこまでどう持ち込めば良いの?自然な流れってどういう流れ?恋愛ドラマ沢山観ておけばよかった…やはり世に言う「色仕掛け」で攻めるべきなんだろうか?…色仕掛け…色仕掛け…ってどうすれば良いの?
セクシーな衣装で「公爵ぅん」って言ったり?…ん~分からない。
今の私は前世とは違い、かなりメリハリのある体型をしているので自信はある。あるのは体型に関してのみ…男の人の誘い方は…どうすれば良いんだろうか?む…胸を強調すれば良いのかな?…こ…こう…寄せて上げる…いや、胸を強調して公爵を誘惑したとして、それに引っ掛かる公爵は見たくないっ。
「もうぉどうしたら良いのぉぉぉぉぉ」
「静かにお休みになってください」
「あっはい」
またしても、ジャネットがいるのを忘れていた。
はっ、ここはジャネットに聞くのも…いやっ聞いたら揶揄われそうだから止めよう。
ジャネットではなく誰か他の人に聞く?例えばニクソン令嬢とか?…ダメだ、なんて切り出すのさ?「どうやって男性を誘うんですか?」って?恥ずかしすぎる…ゆっくり自分で考えよう…はっ、キスする時って目を瞑るんだよね?出来るかな?公爵の顔が綺麗過ぎて、勿体なくて瞼閉じれないよきっと…ガン見しながらのキスって…怖いって思われちゃうよね…
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