短編集

天冨 七緒

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喧嘩両成敗……全成敗

乙女ゲームの恋愛部分だけ楽しもうなんざ許さない 五

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「王子。先程の私の発言は不敬罪にあたり処分の対象でしょう。卒業パーティーと言う場に相応しくなく、このような足ですので逃亡の心配もありません。ですので、本日はここで去りたいと思います。処罰が決まり次第お知らせください」

 私は松葉杖をつきながらゆっくりと会場を去る。
 その後のパーティーは知らない。

 しばらくすると我が家に似つかわしくない王宮の騎士がやって来た。

「私への処罰が決定したのですか?」

「バレンシア様に対しての処罰はありません。国王陛下より、王子を助けて頂いた事でお礼をお持ちしました」

 騎士は箱を机の上に。
 中身は……

「これは……なんですか?」

「国王陛下からのお気持ちです」

「お気持ち……ですか」

 箱の中身を確認すると、綺麗に詰められた金貨。
 
「それと、報告があります」

「報告……」

 騎士から告げられたのはあの三人について。

「アドリアーナのバレンシア様に対して度重なる嫌がらせを自供しました。彼女は、婚約者であるディートヘルムと親密にしている『ピンク色の髪の平民』がいるという言葉だけでバレンシア様だと思い込み、犯行に及んだそうです。王子との婚約破棄と貴方への嫌がらせが公となり、公爵家から追放されたそうです」
 
「……アドリアーナ様は、噂の二人の姿を確認した事は無かったのですか?」

 直接確認していれば、私が別人だと気が付いたはず。

「アドリアーナが言うには、ディートヘルム王子とあの女が一緒にいるのを見たくなかったと。それに、王子本人に追及し嫌われたくなかった。なので二人を自身の目で確認するのを避けていたそうです」

 それで私はあの女と間違われ、嫌がらせを受け続けた……
 なんだそれ……

「そうですか……」

「ディートヘルム王子に関してですが、王族の婚約者が特定の生徒に嫌がらせをしていた事実を確認しましたので婚約破棄は妥当と判断。その事に対しお咎めはありません。ですが、国王陛下に許可なく破棄を宣言した罰を受け王子は自室にて謹慎中です。本人も自身の失態を認め大人しく処罰を受けています」

 罰……
 安全な場所で、国王という権力者に守られている状況が罰? 
 私は学園で一人、誰にも守られることなく嫌がらせと戦っていたのに……

「ディートヘルム王子からこちらを預かっております」

 差し出されたのは小さな箱。
 開けると私が失くしたと思っていた髪紐が入っている。

「これは……」

「恩人の落とし物を大切に保管していたそうです」

「……これ、処分してもらえます? あれが持っていた物を手にしたくありませんし、私の中であの出来事は忘れたいことなので」

「……畏まりました」

 騎士は報告に来ただけ。
 分かっているのに感情を抑えられず、八つ当たりのように吐き捨ててしまった。
 騎士も私の気持ちを考慮し、目の前からソレを回収。

「王子と公爵令嬢の婚約破棄に加担したパトリシアですが、他人になりすまし王族の婚約を破綻させた罪人として牢に捕らえられています」

 私が卒業式に名乗りを挙げたのは、王子に惹かれていた……わけではない。
 他人の手柄を奪い、嫌なことを全て私に押し付けておきながら自分だけ幸せになる彼女が許せなかったから。
 彼女の罰は当然で、同情なんでしない。

「そうですか」

「バレンシア様が嫌がらせの現状を訴えたという教師は公爵家からの金品を受け取っていた事を確認したので解雇、学園長も管理不行き届きという事で学園から退いていただきました。来年度より新たな者が任命されます」
 
 何度も訴えたにも拘らず、学園側は対応を怠った。
 それが原因で何名かの教師と学園長が去って行くことに。
 今回の一連の事件についての報告を終えた騎士は去って行った。
 その後の私は、学園卒業という資格を得て就職先が決定。
 働いて行く上で貴族の情報が入る。

『ディートヘルム王子派からエーヴェルト王子派に乗り換える貴族が多いみたいだよ』
『そうだろう、卒業式で騒動を起こして詐欺師に騙され婚約破棄で後ろ盾を失くしたんだ。未来が途絶えた王子にいつまでも方屋入りしたところで……』
『同年代の貴族たちも肩身の狭い思いをしているらしい』
『どうして、貴族まで?』
『王子の婚約破棄に追い込んだ詐欺師に加担していたらしいぞ』
『詐欺師に加担……』 
『その詐欺師も今じゃ、山の上の精神病棟にいるらしい』
『精神病棟?』
『会話が通じないらしい』
『牢屋で過ごすより精神病棟の方が過ごしやすいからじゃないのか?』

 彼らの噂が耳に入ろうと、私は私に与えられた仕事を熟し評価を受けるだけ。
 真面目・つまらないと周囲に言われようと、これが私には合っている生き方だ。
 私の人生に、白馬の王子なんてものはいらない。

<オマケのパトリシア>

「どうして? 私がヒロインじゃないの?」

 パトリシアは転生者だった。
 大好きなゲームの世界と知り、『ピンクの髪』は主人公の特徴。
 自身が主人公なのだと思っていた。
 気が付いた時には学園入学前だったので、てっきり出会いイベントは無事に済ませているものだと勘違い。
 まさか、自身がヒロインに似た容姿のモブだったとは思いもせず。
 王子の婚約者からの嫌がらせは無くとも、噂では嫌がらせを受けている事になっていた事でゲーム通り進んでいるのだと思い込んでいた。

「強制力のようなものかな? まぁ、噂では嫌がらせを受けている事になってるし問題ないわよね」

 悪役令嬢からの嫌がらせがない事に深くは考えず、ゲームの恋愛部分だけ楽しんでいた。
 
「ヒロインじゃない私は何? 私がヒロインじゃなかったの……」

 パトリシアは同じことを繰り返し、会話もまともに出来ないと判断され山の上の病院に送られた。
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