【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

文字の大きさ
9 / 75

しおりを挟む
 令息から逃げる為に、テラスへ移動した。
 移動の最中も声を掛けられるが、笑顔でかわす。

「あの二人、婚約解消されたのですね」

 私が到着したテラスには既に先客がいた。

「解消を選んだことは驚きです、あの方の様子からして婚約解消を選ぶとは思いませんでしたもの」

 令嬢達の会話を盗み聞きするつもりは無いが「婚約解消」という言葉が足を動かせなくした。
 私の事を噂されていると感じたから。
 婚約解消は私だけじゃない……だけどどうしても私の事ではないかと気になってしまう。

「ご存じだったのかも知れませんね、婚約者の不貞」
「私も、噂を聞いた時は半信半疑でしたわ」
「婿入りが決定しているのに恋人を作るなんて……」
「相手は侯爵家ですのに、令息も理解していないのかしら? 」

 不貞・婿入り・侯爵家。
 不貞については、彼にそんな素振りは無かったと言える……
 だけど、婿入りと侯爵家は一致する。
 噂に尾ひれがついてしまうのは仕方がない。
 その後も令嬢達の噂に耳を傾ける。

「案外令嬢の方も望んでいたのかもしれませんね」
「どうしてです? 」
「先程みた令嬢、平然としていたので」
「確かにそうですね」
「次の婚約者もすぐに決まるんじゃないかしら? 」
「確かに。先程も婚約者のいない令息達に囲まれてましたものね」

 令息に囲まれていた……私の状況と重なる。
 やはり私の事を話しているのだろう……

「私先程見てしまったわ。令息があの令嬢と一緒にいるのを」
「まぁ、今日あの方をエスコートされているの? 」
「はい。ダンスされていましたもの」
「婚約解消したので問題ないですが……観ていて気分のいいものじゃありませんね」
「えぇ」
「あの二人が婚約するのも時間の問題ですわね」

 婚約解消した男性には女性の存在があり、今日一緒参加している……
 その後も令嬢達は噂を続けるが、私は令嬢達の言葉を確認せずにはいられなかった。
 会場を見渡せる場所まで移動し、元婚約者の姿を探す。
 既に何曲も変わっているので、ダンスフロアに彼の姿は無かった。
 どこにいるのか周囲を見渡す。

「あっ……」

 ある集団が目についた。
 男性達との談笑している中に、令嬢の姿があるなんて珍しい。
 大抵は男性は男性、女性は女性といることが多い。
 過去、挨拶周りや気の合う令息達との会話の最中に私が婚約者と共に令息の輪に参加する事なかった。
 なのに、令嬢は堂々と令息達の輪の中にいる。
 令息達も令嬢がいることに抵抗は無いようで、皆が嬉しそうに会話をしている。
 その嬉しそうにしている中に元婚約者の姿も……
 元婚約者と令嬢の距離はとても近い。
 彼は令嬢の美しい金髪を指に絡めている。
 その瞬間、令嬢達が噂していたのは『私』なのだと理解した。

「最低ね……」

 元婚約者が何処で誰と何をしようと私には関係ない。
 関係ないのだが……
 私が送った衣服に靴を着用しているのが不快だった。
 元婚約者の贈り物を堂々と使用するなんて……
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...