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パーティー
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「令嬢の本日初のダンスパートナーとなれた事、光栄に思います」
「いえ、こちらこそ公爵様のパートナーに選んでいただき光栄です」
ダンスホールを離れると、目力の強い令嬢達が狙いを定めてやってくる。
レオミュールが先程言っていたのはこの事かと体験してしまう。
「セラフィーナッ……」
突進してくる令嬢ばかりに気を取られていたが、後方から名を呼ばれる。
相手は振り返らずとも分かる。
彼の私を呼ぶ声は、怒気を含んでいた。
ゆっくり振り返れば、鬼の形相で彼は私を睨みつけている。
「どうされました? 」
「どうされましたぁ? 俺とのダンスを断っておきながら……」
「公爵様に誘われてしまえばお断りできませんわ」
「……公爵の婚約者を狙っているのか? 」
「タドミール伯爵令息はお酒を飲んでいらっしゃるのですか? 」
「俺は酔ってない」
「私が誰とダンスをしようが私の自由ですし、本日の主催者である公爵様のお誘いは誰もお断りできませんわ」
「……なら、次は俺とダンスをするぞっ」
「お断りいたします」
「先程はすると言っていたじゃないかっ」
「久しぶりのダンスだったのか、今の一曲に疲れてしまいました」
久しぶり……彼と最後にダンスしたのは去年の話。
それからは『貴族への挨拶に時間を費やしたい』『取引先の令嬢に誘われてしまった』など、いろんな言い訳でダンスを拒絶されていた。
私を拒絶している間、トゥーリッキとは必ずダンスしているのを知っている。
「……俺が最大限フォローする」
過去、彼が私をフォローしてくれたことは無い。
いつも自分勝手で視線も遠くを見ていた。
そんな彼の言葉は信用できない。
「いえ、なんの関係もない令息にそこまでしていただくわけにはいきませんわ」
私の言葉一つ一つに彼は苛立ちを増していく。
「もうそろそろ、挨拶をしても宜しいかな? 」
今現在私をエスコートしているレオミュールが口を開く。
この場合、フランツがいち早く主催者であり公爵のレオミュールに挨拶するべきところ。
それが出来ない程、怒りに満ちている様子。
その様子で、会話中の私達にレオミュールは加わった。
私を助ける為というより、主催者として穏便に済ませたいのだろう。
「公爵様っ、本日はご招待いただき感謝いたします。私はフランツ・タドミールと申します。セラフィーナの婚約者です」
「違います。婚約解消致しました」
何故彼が婚約者と名乗るのか理解できないし、私を睨みつけているのにも納得できない。
恋人がいて、振られて、私に迫って上手くいかない怒りを私にぶつけないでほしい。
「タドミール令息はお酒に弱いようですね? 少し外の風にあたってみてはいかがかな? 」
冷静になれ……という主催者の指示。
「……申し訳ありません。少し酔ってしまったようで、お言葉通り風にあたりたいと思います」
彼は不満気ではあったが周囲の目もあり、離れていった。
「レオミュール公爵様、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」
「いえ。私が強引に令嬢を誘ってしまい、彼を嫉妬させてしまったみたいですね」
元婚者の争いに巻き込んでしまったのに、自身の行動が原因と話すのはレオミュールの寛大さなのだろう。
「あれは嫉妬とは違うように感じます。今まで自分の物だったのが、他人の物になるのが許せないのではありませんか? 」
「所有欲……というより、執着しているように見えますね」
「執着ですか? 彼が私に? 彼にとって私は『人』というより『物』に近いと思います」
「令嬢の方は、彼のことをどう思っているのですか? 」
「どう……このようになってしまった私に対して、一生懸命な彼の様子に私への思いは本物だったのかな? と思っていたのですが……」
その後の言葉に躊躇いが生れる。
「今は違うと? 」
「正直、信じていいのか分からない状態です。過去の私達の様子や最近の彼の周辺を聞く機会があり、何を信じていいのか……」
「では、婚約解消についてはどう思っているんだ? 」
「それは……言い出したのは私で、良かったのか悩むことはありました。ですが、いい機会だったと思っております。相手の本性が知ることが出来ましたし」
「本性か……っと、令嬢は一人で大丈夫そうか? 」
「あぁはい、問題ありません」
周囲を確認すると令嬢達も次のダンスのパートナーは狙っている為に、互いに牽制しながらも距離を詰めている。
いつまでも主催者を独占する事はできない。
「ありがとうございました」
礼を言い離れると、今か今かと狙っていた令嬢が動き出す。
「いえ、こちらこそ公爵様のパートナーに選んでいただき光栄です」
ダンスホールを離れると、目力の強い令嬢達が狙いを定めてやってくる。
レオミュールが先程言っていたのはこの事かと体験してしまう。
「セラフィーナッ……」
突進してくる令嬢ばかりに気を取られていたが、後方から名を呼ばれる。
相手は振り返らずとも分かる。
彼の私を呼ぶ声は、怒気を含んでいた。
ゆっくり振り返れば、鬼の形相で彼は私を睨みつけている。
「どうされました? 」
「どうされましたぁ? 俺とのダンスを断っておきながら……」
「公爵様に誘われてしまえばお断りできませんわ」
「……公爵の婚約者を狙っているのか? 」
「タドミール伯爵令息はお酒を飲んでいらっしゃるのですか? 」
「俺は酔ってない」
「私が誰とダンスをしようが私の自由ですし、本日の主催者である公爵様のお誘いは誰もお断りできませんわ」
「……なら、次は俺とダンスをするぞっ」
「お断りいたします」
「先程はすると言っていたじゃないかっ」
「久しぶりのダンスだったのか、今の一曲に疲れてしまいました」
久しぶり……彼と最後にダンスしたのは去年の話。
それからは『貴族への挨拶に時間を費やしたい』『取引先の令嬢に誘われてしまった』など、いろんな言い訳でダンスを拒絶されていた。
私を拒絶している間、トゥーリッキとは必ずダンスしているのを知っている。
「……俺が最大限フォローする」
過去、彼が私をフォローしてくれたことは無い。
いつも自分勝手で視線も遠くを見ていた。
そんな彼の言葉は信用できない。
「いえ、なんの関係もない令息にそこまでしていただくわけにはいきませんわ」
私の言葉一つ一つに彼は苛立ちを増していく。
「もうそろそろ、挨拶をしても宜しいかな? 」
今現在私をエスコートしているレオミュールが口を開く。
この場合、フランツがいち早く主催者であり公爵のレオミュールに挨拶するべきところ。
それが出来ない程、怒りに満ちている様子。
その様子で、会話中の私達にレオミュールは加わった。
私を助ける為というより、主催者として穏便に済ませたいのだろう。
「公爵様っ、本日はご招待いただき感謝いたします。私はフランツ・タドミールと申します。セラフィーナの婚約者です」
「違います。婚約解消致しました」
何故彼が婚約者と名乗るのか理解できないし、私を睨みつけているのにも納得できない。
恋人がいて、振られて、私に迫って上手くいかない怒りを私にぶつけないでほしい。
「タドミール令息はお酒に弱いようですね? 少し外の風にあたってみてはいかがかな? 」
冷静になれ……という主催者の指示。
「……申し訳ありません。少し酔ってしまったようで、お言葉通り風にあたりたいと思います」
彼は不満気ではあったが周囲の目もあり、離れていった。
「レオミュール公爵様、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」
「いえ。私が強引に令嬢を誘ってしまい、彼を嫉妬させてしまったみたいですね」
元婚者の争いに巻き込んでしまったのに、自身の行動が原因と話すのはレオミュールの寛大さなのだろう。
「あれは嫉妬とは違うように感じます。今まで自分の物だったのが、他人の物になるのが許せないのではありませんか? 」
「所有欲……というより、執着しているように見えますね」
「執着ですか? 彼が私に? 彼にとって私は『人』というより『物』に近いと思います」
「令嬢の方は、彼のことをどう思っているのですか? 」
「どう……このようになってしまった私に対して、一生懸命な彼の様子に私への思いは本物だったのかな? と思っていたのですが……」
その後の言葉に躊躇いが生れる。
「今は違うと? 」
「正直、信じていいのか分からない状態です。過去の私達の様子や最近の彼の周辺を聞く機会があり、何を信じていいのか……」
「では、婚約解消についてはどう思っているんだ? 」
「それは……言い出したのは私で、良かったのか悩むことはありました。ですが、いい機会だったと思っております。相手の本性が知ることが出来ましたし」
「本性か……っと、令嬢は一人で大丈夫そうか? 」
「あぁはい、問題ありません」
周囲を確認すると令嬢達も次のダンスのパートナーは狙っている為に、互いに牽制しながらも距離を詰めている。
いつまでも主催者を独占する事はできない。
「ありがとうございました」
礼を言い離れると、今か今かと狙っていた令嬢が動き出す。
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