【完結】嫌いなアイドルを人気者にしたのは……私?

天冨 七緒

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あの女に出会う前の私は順風満帆

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「バラエティー……女王?」

 とあるアンケート結果。
 
「『年間出演数』第一位……スタッフに聞く、『バラエティー番組にいて安心するタレント』……第一位……」

 確かにどの局のバラエティー番組を見ても、彼女が出演している。
 ネットの評価は男性からの指示が高く、女性は低い……なのに……

「どうして……」



 数年前。

「次の企画は……」

 某テレビ局の番組スタッフになり数年。
 企画も通り、キャストの人選にも拘ることが出来るようになった。

「ご挨拶をよろしいでしょうか?」

 最近では新人を引き攣れたマネージャーの対応をすることもある。
 マネージャーは、見た目三十代。
 男性。
 彼の隣にいるのが今回紹介を受ける新人。

「はい」

「私、〇〇〇芸能事務所の神原と申します。アイドルグループを卒業し、個人活動になった島上です。何でもやりますので、是非使ってやってください」

 挨拶と同時にプロフィールの書類を手渡される。

「私、島上麻美です。よろしくお願いします」

 確りと目を合わせ、ハキハキと笑顔で挨拶をする島上。
 童顔で身長も低く、自然と上目遣いに。
 少し頭を傾ける仕草……
 
「……どうも、山本です……」

 彼女の挨拶に私も笑顔で対応するが、口角が引き攣ってしまう。

「本日はお時間頂きありがとうございます」

 挨拶を終え、去って行く二人の後姿を見送る。

「私の事……覚えてないのね……」

 私は島内の事を知っている。
 小学生の時の同級生。
 忘れたくても忘れられない存在。
 
『私達、ずっと友達だよ……』 

 そう言った彼女は、私を無視し始めた。
 理由は、クラスのリーダー格の子に気に入られる為。
 それは中学でも続いた。
 島上はリーダー格の子がいると目立たないが、いなくなると豹変。

「誤解しないでね? これ以上辛い目に合わないよう、私が守ってあげてるんだよ?」

 八方美人。

「皆がいないところで、優しくしてあげるから」

 彼女はそれが本当に優しさだと思っている。
 彼女は両親と祖父母に溺愛されて育ち、家も裕福。
 幼い頃から色んな習い事をしていたので、親しかった頃の私は

「遊べないなんて、毎日大変そうだな……」

 そんな風に思っていた。
 成長すると分かる。
 彼女がお金をかけられて育てられたのだと。
 彼女への溺愛に利用された事もある。

「この子の荷物、学校まで持っていってくれる」

 私達の関係を知らない彼女の母親に、彼女の荷物持ちをさせられたことがあった。

「あっ……はい」

 突然の提案に私は受け入れてしまった。
 『持って行ってくれる? 』と言いながら、差し出すので私に拒否権なんてなかった。
 大人に言われ反論できず、後に何故私が彼女の荷物を教室まで持たなければならなかったのか不満が込み上げる。
 自然と使われ、あの親子にとって他人は『利用するもの』と思っているのだろう。
 振り返れば大人たちの間でも、彼女の家が地主ということで待遇が違う。
 学校にも何かしらの影響力があるようで、イベントなどで学校に訪れては貴賓として挨拶をしていた。
 彼女からの私への嫌がらせも、無視や悪口、物が盗まれ壊されるなどだった。
 次第に行動はエスカレートしていき確実な証拠得た時。
 学年問題になる事件だったが、犯人が彼女だと分かると教師達は態度を一変。
 私としては警察へ被害届をと考えていた時。
 教師に呼び出された。

「受験もあるし、ここは大事にしない方が貴方の為よ。後片付けは先生達がしておくから気にしなくていいわよ」

 被害届は出さないよう言いくるめられた。
 そして証拠も、教師達により処分。
 彼女の家への忖度と、彼女自身が私立の高校に推薦で合格の取り消しにならないようにだ。
 私達の通う中学は近隣の中でも優秀でないと評判だったので、教師も彼女に肩入れしていた。
 彼女に比べ私の成績は、平凡。
 目立った特徴もない。
 彼女と天秤にかけられ、私は教師に見捨てられた。
 彼女はクラスの女子全員を支配する側。
 彼女達に目を付けられたくない女子生徒は、事件の犯人が誰なのか勘付きながらも彼女達の私への扱いを見て見ぬフリを続ける。
 次の標的になりたくないから。
 私にとって唯一の救いは、男子がいると彼女達の嫌がらせが鳴りを潜める。
 その時だけは、私は安心できた。
 学校を休んだら親に心配をかけてしまうと思い、普通に振る舞う。
 現実を思い出したくない私はテレビの世界に逃げた。
 ドラマや映画、アニメにバラエティーにニュース。
 そこが私の救いの場。
 テレビを付けない時間が無いほど。
 そんな私だったので、就職もテレビ関係に進んだ。
 テレビの仕事に関われる事で楽しかったし、自分の好みの番組を作れることにも喜びを感じていた。
 いつか、視聴率トップの番組を作りたいと目標に。
 出る側にも正直、憧れはあった。
 だけど過去が邪魔をし、選択出来なかった。
 そんな私の前に、彼女が再び現れた。
 私を蔑むような笑顔ではなく、人当たりの良い笑みを浮かべながら。
 もう二度と関わる事がないと思っていたのに…… 
 私の事など一切忘れて……

「あんたなんかと一緒に仕事するわけ……ないじゃない……」

 私が一生懸命携わった作品を、あんな女に汚されたくない。
 そんなの、私の作品が可哀想。
 彼女のプロフィールの書類を処分する事は出来ず、誰の目にも振れないよう仕舞いこむ。
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