王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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聖女時代

最後の失態

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〈次代の聖女兼王妃を予想する貴族の会話〉

「そこの見習いの子。今日は、コルネリウス王子はいらっしゃったのかな?」

 教会を訪れる貴族は、頻繁に訪れるコルネリウスがどの令嬢と親密なのかを探りを入れている。
 貴族たちは互いに情報交換をする。
 たった今仕入れた情報をすぐにもで話したくて堪らないようで、場所を選らばず会話する。
 
「これで王子の婚約者が分からなくなったな」

「依然有力なのはバルツァル公爵令嬢か、スカヴィーノ子爵令嬢だろう」

「いやいや。あの平民も、イリノエ侯爵を後ろ盾にしたと聞くぞ」

「三つ巴か……」

「バルツァル公爵令嬢との関係は良好がどうか分からないが、スカヴィーノ子爵令嬢とコルネリウス王子の関係は良好らしい。やはり幼い頃からの知り合いで、夫人同士が親しいというのは強力だろう。それに、他の候補者との関係も良好みたいじゃないか」

 貴族の噂話を立ち聞きしている人物がいる。

「へぇ……そうなんだ……二人は幼馴染なんだぁ……幼馴染って大概結婚するんだよね……それなら、早めにどうにかしないと……」

 有力な情報を耳にした人物は、静かにその場を離れ調理場へと急ぐ。

「祈りの場の掃除を始めます。本日はソミール様が水晶のお清めを、お願いいたします」

「フィーナさん。私、朝から手が痺れちゃっていて、水晶を運ぶのお願いできます?」

「分かりました」

「ありがとうございまぁす」

「では、ソミール様は塩の準備をお願いします」

「はい」

 ソミールは素直にデルフィーナの指示に従い、水晶から離れる。
 
「……えっ……キャッ……」

 ガチャン……

「フィーナさん? あっ……水晶が……」

 水晶は床を転がる。
 透明の美しい球体の水晶をよく見ると、ヒビが入ってしまっていた。
 
「そんな……」

「……フィーナさん、私が落としたことにします」

「……え? 何を言っているの?」

「フィーナさんが失態を犯したとなれば、司祭様は失望してしまうと思います。私は平民ですし、教会に入ったばかり。失態が許されるというか……飽きられるくらいですから」

「ソミール様……」

「私、行ってきますね……フッ……」

 ヒビの入った水晶を拾い、ソミールは司祭の元へ向かう。

「……お待ちください。そのようなことをさせるわけにはいきません。私が司祭様に話します」

「えっ、それだとフィーナさんが!」

「その水晶は私が責任を取ります」

「でも……フィーナさんはその……手袋しているよね? また落として、今度は割っちゃうかもしれないよ。危ないから私が運ぶよ」

 デルフィーナは幼い頃に負った腕の傷を隠すため、常に肘までの手袋を使用している。

「一度落とし、傷までつけた水晶です。再び落としてしまっても、傷のついた水晶は今後は使用しません」

「それでも、私が運ぶよ」

「いえ、貴方は部屋の掃除をお願いします。さぁ、水晶を渡してください……ソミール様」

 ソミールはデルフィーナに、ヒビの入った水晶を手渡す。
 デルフィーナは真実を告げる為、司祭の部屋を目指す。
 聖女候補期間、残り数週間といった時期でのデルフィーナの失態。
 八年間、大きな問題のなかった令嬢の唯一最大の汚点と言える事件。
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