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聖女時代
王子と聖女候補であり次期王妃候補のお茶会。続
しおりを挟む〈聖女候補兼王妃候補である、アルテーアとコルネリウスのお茶会の場合〉
一人、待ち合わせ場所でお茶会の相手を待つアルテーア。
「待たせた」
待ち望んだ相手の声に立ち上がり、振り向く。
「いえっ……えっと……」
「あっ、あのね。偶然コルネリウスさんとお会いして、二人がお茶会をするって聞いていい天気だし私も一緒にテーアちゃんとお茶会したいって思ってきちゃったんだけど……テーアちゃんも私のこと……嫌だった?」
婚約者候補としての対面であるのに、コルネリウスはソミールを連れて登場。
ソミールの方も、本来二人だけのはずのお茶会に参加を口にする。
意味のあるお茶会なので本来参加者ではない人を断ることに躊躇う必要はない。
だけど、ソミールの『テーアちゃんも私のこと……嫌だった?』と聞かれ、鋭い視線を向けるコルネリウスの前で正直に「はい」とは言えない。
「……いえ……どうぞ……」
「良かったぁ。テーアちゃんとはとっても仲いいから、三人でお茶会した方が楽しいと思うの」
「そうなのか」
ソミールが嬉しそうに話すと、コルネリウスも雰囲気を和らげる。
もう一人の主役であるアルテーアを置き去りにし、二人は話を進めていく。
「テーアちゃん心配しないで。私は二人と一緒にいたいだけで、邪魔はしないから」
「あっ……はい……そうですか」
教会の庭にあるガゼボに三人で座る。
アルテーア、コルネリウス、ソミールの順。
準備を担当したアルテーアはもてなしに紅茶を振る舞うも、突然の参加者のカップが足りていない。
「大丈夫だよ、テーアちゃん。足りないカップは、私たちが持ってくるよ。他に忘れ物はない?」
「……ぃぃぇ」
ソミールとコルネリウスはカップ一客取りに行くのに、二人で向かう。
アルテーアはソミールの言葉に引っかかっていた。
『他に忘れ物はない?』
今日のお茶会は、コルネリウスとアルテーアの二人だけ。
二客あれば問題なく、二客用意されている。
予定外の招待客によって、カップは足りなくなった。
その乱入者は足りないカップを取りに行き、主催者の失態を優しくフォローしたように発言。
「……私が忘れた訳じゃないのに……」
待つこと数十分。
二人は楽しそうに戻ってくる。
「お待たせぇ。問題は解決したよ。さっ、お茶会を始めよう!!」
アルテーアの隣はコルネリウス、その隣に座るソミール。
細かいことを言えば、コルネリウスとソミールの方が距離は近い。
その光景を眺めるしかないアルテーア。
「……紅茶……淹れますね」
二人の耳には届いていないが、ティーポットに手を伸ばす。
「ん? テーアちゃんが淹れてくれるの? 嬉しい……だけど、大丈夫? 私が代わりに淹れようか?」
貴族は紅茶を飲むことはあるも、淹れるのは使用人。
屋敷ではそれが当然のことだが、教会では自身で行う。
最初は苦戦し下手だったが、先輩方に教えてもらい今ではお客様にお出しできるまでになったアルテーア。
「……大丈夫です」
「あぁ……不安……私がやるよ。もし火傷なんてしたら大変だもの。貸して、私が淹れてあげる」
「大丈夫ですから」
ソミールのいらぬお節介が、アルテーアを苛立たせる。
「本当に……ゆっくりね。注ぎ口はカップに乗せちゃダメなのよ。空気を含ませるように少しカップから離すのが重要だよ……そう、そう……ゆっくりね、ゆっくり……出来た……良かった……上手だったよ、テーアちゃん」
「ソミール嬢は心配性なんだな」
「テーアちゃん見ていると、近所の子供たちを思い出しちゃって……なんでも私の真似をしてやりたがるんだけど、見てると失敗するんじゃないかって心配になっちゃうんだよね」
「よく、子供の面倒を見るのか?」
「面倒っていうか近所の子たちとは仲良くて、いつも集まってきちゃうんだよね」
「皆、ソミール嬢が好きなんだな」
「好きって、ただ単に遊び相手って思われているだけだよ」
「ソミール嬢の優しさに皆が寄ってくるんだろう」
「私優しくなんてないよ」
「自身の魅力が分かってないんだな」
「えぇ? 私の魅力? 私よりも、聖女候補の皆の方が魅力的だよ」
「人の良いところを見るのも良いが……気を付けろよ」
「皆、良い人だよ」
「ソミール嬢は……」
会話する二人に静かに紅茶を配るアルテーア。
その姿はまるで使用人のよう。
「ありがとうっテーアちゃん。んっ、美味しい!! 美味しいよテーアちゃん。練習した甲斐があるね」
「他の候補生の練習にも付き合っているのか?」
「付き合っているって……私がお節介焼いちゃうんだよね」
「ソミール嬢らしいな」
「んふっ。コルネリウスさん、練習したテーアちゃんの紅茶はどう?」
「あぁ、美味しい。苦くないな」
「ああっ、それ私に言ってる? 聞いてよテーアちゃん。私この前ね、コルネリウスさんに紅茶を淹れたの。その時、話に盛り上がり過ぎちゃって苦くなっちゃたんだけど、コルネリウスさんだって紅茶淹れているの忘れてたのよ。それを私だけの失敗みたいにぃ……」
「責任もって飲んだろ?」
「そうだけど、テーアちゃんの前で言わなくたっていいじゃない。私、テーアちゃんに『お姉さん』って思えてもらってるのにぃ」
「お姉さん? ソミール嬢が?」
「何ですかっ。私これでも後輩たちから慕われてるのよぉ」
「フフッ。分かっているさ。ソミール嬢の話から、後輩たちに慕われているのが……」
終始コルネリウスとソミールが会話し、アルテーアは紅茶やお菓子のような存在。
アルテーアは、内心思っている。
私はソミール様に、紅茶の淹れ方を習ったことはない。
これは、卒業された先輩から教わった。
ソミールは自身が後輩に慕われているというが、誰も慕っていない。
それどころか、関わらないよう避けている。
嘘を吐いているのか、それとも本気でそう思っているのか……
紅茶を飲みながら、冷めた目で二人の様子を見届けるアルテーア。
「はぁぁぁぁ」
アルテーアが溜息を吐いても気づかない二人。
これは、なんのお茶会なのだろうかと空を見上げる。
「今日は、いい天気」
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