王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

文字の大きさ
30 / 43
聖女時代

王子と聖女候補であり次期王妃候補のお茶会。続

しおりを挟む

〈聖女候補兼王妃候補である、アルテーアとコルネリウスのお茶会の場合〉

 一人、待ち合わせ場所でお茶会の相手を待つアルテーア。

「待たせた」

 待ち望んだ相手の声に立ち上がり、振り向く。

「いえっ……えっと……」

「あっ、あのね。偶然コルネリウスさんとお会いして、二人がお茶会をするって聞いていい天気だし私も一緒にテーアちゃんとお茶会したいって思ってきちゃったんだけど……テーアちゃんも私のこと……嫌だった?」

 婚約者候補としての対面であるのに、コルネリウスはソミールを連れて登場。
 ソミールの方も、本来二人だけのはずのお茶会に参加を口にする。
 意味のあるお茶会なので本来参加者ではない人を断ることに躊躇う必要はない。
 だけど、ソミールの『テーアちゃんも私のこと……嫌だった?』と聞かれ、鋭い視線を向けるコルネリウスの前で正直に「はい」とは言えない。

「……いえ……どうぞ……」

「良かったぁ。テーアちゃんとはとっても仲いいから、三人でお茶会した方が楽しいと思うの」

「そうなのか」

 ソミールが嬉しそうに話すと、コルネリウスも雰囲気を和らげる。
 もう一人の主役であるアルテーアを置き去りにし、二人は話を進めていく。

「テーアちゃん心配しないで。私は二人と一緒にいたいだけで、邪魔はしないから」

「あっ……はい……そうですか」

 教会の庭にあるガゼボに三人で座る。
 アルテーア、コルネリウス、ソミールの順。
 準備を担当したアルテーアはもてなしに紅茶を振る舞うも、突然の参加者のカップが足りていない。

「大丈夫だよ、テーアちゃん。足りないカップは、私たちが持ってくるよ。他に忘れ物はない?」

「……ぃぃぇ」

 ソミールとコルネリウスはカップ一客取りに行くのに、二人で向かう。
 アルテーアはソミールの言葉に引っかかっていた。

『他に忘れ物はない?』

 今日のお茶会は、コルネリウスとアルテーアの二人だけ。
 二客あれば問題なく、二客用意されている。
 予定外の招待客によって、カップは足りなくなった。
 その乱入者は足りないカップを取りに行き、主催者の失態を優しくフォローしたように発言。 

「……私が忘れた訳じゃないのに……」

 待つこと数十分。
 二人は楽しそうに戻ってくる。
 
「お待たせぇ。問題は解決したよ。さっ、お茶会を始めよう!!」
 
 アルテーアの隣はコルネリウス、その隣に座るソミール。
 細かいことを言えば、コルネリウスとソミールの方が距離は近い。
 その光景を眺めるしかないアルテーア。

「……紅茶……淹れますね」

 二人の耳には届いていないが、ティーポットに手を伸ばす。

「ん? テーアちゃんが淹れてくれるの? 嬉しい……だけど、大丈夫? 私が代わりに淹れようか?」

 貴族は紅茶を飲むことはあるも、淹れるのは使用人。
 屋敷ではそれが当然のことだが、教会では自身で行う。
 最初は苦戦し下手だったが、先輩方に教えてもらい今ではお客様にお出しできるまでになったアルテーア。
 
「……大丈夫です」

「あぁ……不安……私がやるよ。もし火傷なんてしたら大変だもの。貸して、私が淹れてあげる」

「大丈夫ですから」

 ソミールのいらぬお節介が、アルテーアを苛立たせる。

「本当に……ゆっくりね。注ぎ口はカップに乗せちゃダメなのよ。空気を含ませるように少しカップから離すのが重要だよ……そう、そう……ゆっくりね、ゆっくり……出来た……良かった……上手だったよ、テーアちゃん」 

「ソミール嬢は心配性なんだな」

「テーアちゃん見ていると、近所の子供たちを思い出しちゃって……なんでも私の真似をしてやりたがるんだけど、見てると失敗するんじゃないかって心配になっちゃうんだよね」

「よく、子供の面倒を見るのか?」

「面倒っていうか近所の子たちとは仲良くて、いつも集まってきちゃうんだよね」

「皆、ソミール嬢が好きなんだな」

「好きって、ただ単に遊び相手って思われているだけだよ」

「ソミール嬢の優しさに皆が寄ってくるんだろう」

「私優しくなんてないよ」

「自身の魅力が分かってないんだな」

「えぇ? 私の魅力? 私よりも、聖女候補の皆の方が魅力的だよ」

「人の良いところを見るのも良いが……気を付けろよ」

「皆、良い人だよ」

「ソミール嬢は……」

 会話する二人に静かに紅茶を配るアルテーア。
 その姿はまるで使用人のよう。

「ありがとうっテーアちゃん。んっ、美味しい!! 美味しいよテーアちゃん。練習した甲斐があるね」

「他の候補生の練習にも付き合っているのか?」

「付き合っているって……私がお節介焼いちゃうんだよね」

「ソミール嬢らしいな」

「んふっ。コルネリウスさん、練習したテーアちゃんの紅茶はどう?」

「あぁ、美味しい。苦くないな」

「ああっ、それ私に言ってる? 聞いてよテーアちゃん。私この前ね、コルネリウスさんに紅茶を淹れたの。その時、話に盛り上がり過ぎちゃって苦くなっちゃたんだけど、コルネリウスさんだって紅茶淹れているの忘れてたのよ。それを私だけの失敗みたいにぃ……」

「責任もって飲んだろ?」

「そうだけど、テーアちゃんの前で言わなくたっていいじゃない。私、テーアちゃんに『お姉さん』って思えてもらってるのにぃ」

「お姉さん? ソミール嬢が?」

「何ですかっ。私これでも後輩たちから慕われてるのよぉ」

「フフッ。分かっているさ。ソミール嬢の話から、後輩たちに慕われているのが……」

 終始コルネリウスとソミールが会話し、アルテーアは紅茶やお菓子のような存在。
 アルテーアは、内心思っている。
 私はソミール様に、紅茶の淹れ方を習ったことはない。
 これは、卒業された先輩から教わった。
 ソミールは自身が後輩に慕われているというが、誰も慕っていない。
 それどころか、関わらないよう避けている。
 嘘を吐いているのか、それとも本気でそう思っているのか……
 紅茶を飲みながら、冷めた目で二人の様子を見届けるアルテーア。

「はぁぁぁぁ」

 アルテーアが溜息を吐いても気づかない二人。
 これは、なんのお茶会なのだろうかと空を見上げる。

「今日は、いい天気」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。 番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

満場一致で削除されましたが、世界は問題なく回っております』

鷹 綾
恋愛
王太子アルベルトは、ある日、貴族全会の満場一致によって廃嫡された。 断罪もなければ、処刑もない。 血も流れず、罪状も曖昧。 ただ「順序を飛ばした」という一点だけで、彼は王位継承の座から静かに削除される。 婚約者だった公爵令嬢エリシアは、婚約破棄の時点で王都の構造から距離を取り、隣国との長期協定を進めていく。 彼女の世界は合理で動き、感情に振り回されることはない。 一方、王太子が選んだ“新たな聖女”は、どこまでも従順で、どこまでも寄り添う存在だった。 「殿下に従わない者は、私が処理しておきます」 その甘い囁きの裏で、王都では“偶然”が重なり始める。 だが真実は語られない。 急病も、辞任も、転任も、すべては記録上の出来事。 証拠はない。 ただ王太子だけが、血に濡れた笑顔の悪夢を見る。 そして気づく。 自分のざまあは、罰ではない。 「中心ではなくなること」だと。 王都は安定し、新王は即位し、歴史は何事もなかったかのように進む。 旧王太子の名は、ただ一行の記録として残るのみ。 婚約破棄のその後に始まる、静かな因果応報。 激情ではなく“構造”が裁く、最強レベルの心理ざまあ。 これは―― 満場一致で削除された男と、最初から無関係な位置に立っていた令嬢の物語。

もしも願いが叶うなら

豆狸
恋愛
みんな地獄へ落ちますようにって…… ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

処理中です...