王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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聖女時代

ヒロインの本領発揮

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 聖女候補同士で情報を共有すると、自然とソミールを警戒し始める。
 次第に隙を見せない行動を心がける。

 〈ファビオラ・アンギレーリの場合〉

「あっ、ファヴィちゃん!!」

「……どうして……あなたが、こちらに……いらっしゃるの?」

「私? 私は休みの日に孤児院や貧困街で奉仕活動しているの。それより、ファヴィちゃんはここで何しているの? ここは知らないかもしれないけど、あんまり……治安が……お買い物とかだったら、この道を戻って……」

「いえ、私はこの近くに用があって来たので……それでは、ごきげんよう」

「あっ……またねぇ~」

 ファビオラは近くの教会に挨拶をし、貧困街で食事を配布する計画書を司祭に提出していた。
 この日のために事前に教会へ何度も足を運び、当日の予定も打ち合わせ、滞在する教会の修繕も終わらせていた。
 教会を拠点に、食料配布をする予定。
 どんなに安全を確保しても司祭から危険と判断されているので、護衛騎士と共にファヴィオラ教会で報告を受ける。

 食料配布が始まり一度目の報告。

「聖女候補様。報告させていただきます。食料配布は順調で、問題はありません」

「そうですか。遠くからでも状況を確認したいのですが、落ち着いた頃に教えていただけますか?」

「はい、畏まりました。しばらくは続くと思いますので、声を掛けさせていただきます」

 こちらが統制をとろうとするも、一度崩れると一気に広まり危険地帯となってしまう。
 相手が聖女候補であっても、どうなるか分からない。
 なので、ファヴィオは様子を見ながらの参加となる。
 その間、食料配布は教会に身を置く見習いがしている。
 
「聖女候補様、本日は大変ありがとうございます」

 教会の司祭が挨拶に訪れる。

「いえ、私こそ教会の方には感謝しております」

 貧困街が今、どのような状況なのか説明を聞く。
 
「貧困街は根本を変えなければ、これからも支援を必要とします。この状況をどう改善するべきか解決とはいえないでしょう」

「そうですか……」

「……ん? なんだ?」

 司祭と会話していると、突然外が騒がしくなる。

「何かあったんでしょうか?」

「聖女候補様は、こちらでお待ちください。私が確認して参ります」

 司祭が確認に行く間、ファヴィオに緊張が過る。
 食料に何か不具合があったのではないか。
 食料配布に不手際があり、暴動でも起きたのではないか。
 ……結局、聖女候補とはいえ施しは貴族の傲慢、不満を訴えられたのかもしれない。
 善意からの支援でも、受け取る側にはそうとは限らない。
 ファビオラは無事に司祭が戻ってくれるのを、両手を握り静かに祈る。

「聖女候補様!!」

 司祭が戻る。

「……良かった……どうしました?」

「あの……外で……聖女候補様が……」

 司祭はファビオラの様子を窺う。

「どうされたんですか? 食料に問題でも?」

「問題はないのですが……一度確認していただけないでしょうか?」

「はい」

 外で何が起きているのか分からないファビオラは、不安に思いながら配布所へ向かう。

「皆さぁん、落ち着いて。ちゃんと準備してあるので、順番を守ってくださぁい」

 配布所で配布している見習いの中に、ソミールの姿を発見。
 
「なぜ……ソミール様が?」

 ソミールに食料配布するよう許可していない。
 なのに、なぜ彼女が食料配布しているのか。
 それだけではない。

「こんなところにまで聖女候補様が来てくださるなんて……」
「なんでも、あの方は平民出身らしい」
「ああ、あの噂になった」
「私たちの為に企画してくれたらしいぞ」
「それだけじゃなく、自ら食料を配ってくれるなんて……」
「ありがたや。ありがたや」

 ファビオラが計画した食料配布は、ソミールが計画したものになっていた。
 ファビオラはソミールの元へ急いで向かう。

「ソミール様、何をしているのですか?」

「あっ、ファビちゃん。今ね皆に食料を配ってるの。ファビちゃんも一度でもこういう経験した方がいいよ?」

「これは私が……」

「おっ、この嬢ちゃんも聖女候補様なのか?」
「そっちの聖女候補様も、この方を見習いなさい」

 ファヴィオラとソミールの会話を聞いていた者たちが、食料を貰いながら会話に加わる。

「やだぁ、私なんて見習うとこないよ。ファビちゃんは貴族なんだもの。私とは違うの!」

「お貴族様は私たちに食料なんて配らないわよ」
「なら、なんでここに来た?」

 計画者がファヴィオだとは知らない平民は、『貴族』と聞いた瞬間ファヴィオに鋭い視線を送る。

「わしは、あんたの方が聖女様になると信じとるよ」

「私が聖女様? そんなぁ。聖女候補の皆、私より素敵な人が沢山だからなぁ」

 否定するも、自身が次代の聖女と言われ嬉しそうに笑顔を見せるソミール。

「着飾ってるだけで聖女様に成れるはずないだろ」
「聖女様になるには『心』が大事だ」
「貴方の方が綺麗よ」

 食料配布の実績も平民の心も、すべてソミールに奪われた。

「これは私が計画したものです」

 ファヴィオラが訴えたが、その声はソミールを支持する声にかき消される。
 わずかな人間に届いたが、彼らの反応は……

「平民の手柄を奪うのが貴族か」
「やり方が汚いのよ」
「そんな人間が、聖女になれるわけないだろう」

 その言葉がファヴィオラの耳に届く。
 何を発言しても平民には届かないと判断し、ファヴィオラは静かに去った。

「聖女候補様……」

 事実を知る司祭がファヴィオラに声をかけるも、見習いはソレーヌの親しみやすい性格と笑顔に魅了されていた。

「……私がいては却って迷惑になりそうですので、下がりますね」

 心配する司祭に微笑みを見せ、静かに平民の前から立ち去るファヴィオラ。
 その後、ファビオラの聖女候補としての活動は大教会に戻り報告書で提出する。
 だが、おかしな噂が広まり始める。

「貧困街に聖女候補自ら食料を配布してくれた。笑顔が素敵な彼女はなんと、平民出身。彼女こそ、聖女に相応しい」

 今回の食料配布は、ソミールの名前で広まっていた。
 
「どうして、アレの実績となっているんですか? 食料配布を計画しあそこまでやり遂げたのは、ファビオラ様ではありませんか!!」

 誰よりも正義感が強く、貴族の功績を平民に奪われることを許さない聖女候補が司祭の部屋へ乗り込み怒鳴りつける。

「私はアンギレーリ様が準備し、当日の行動もあちらの司祭から報告を受けております。ですが、噂はなぜかそのようになってしまったんです……噂話は、私にはどうにもできません」

「教会が今まであの女を野放しにしてきたからではありませんか! 今後も私たちの功績を奪う気ですよ、アレは!!」

「……今回は、偶然でしょう。毎回都合よく候補者の奉仕活動場所に居合わせるのは難しいですから。それに彼女は平民。馬車を所持していないのですから、教会が手配しない限り移動手段はありません」

「そうやって楽観視していると、司祭様も利用されますよ」

 エリベルタは不穏な言葉を残し、司祭の部屋を去って行く。
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