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聖女時代
ヒロインは止まらない
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エリベルタの懸念していた通り、ソミールは各候補者の奉仕活動先に現れる。
〈ラヴィニア・ジラルディの場合〉
「司祭様、私は騎士の激励に訪問したいと思います。その際、共に王都を周り国民の声を聞きたいと考えております」
「ジラルディさんの騎士団訪問を教会は許可します。教会から連絡しますので、予定を報告してください」
「はい」
ラヴィニアも事前に当日の詳細は司祭に提出。
講義が終わり、誰にも気づかれないよう自由時間に司祭の元へ向かった。
同じ立場の聖女候補を疑っているわけではない。
ある人物だけを注意している。
その人物に知られまいと、警戒しているだけ。
当日まで、あの者に知られていないと確信していた。
「……どうしたんでしょう? 時間は間違えていないのに……」
ラヴィニアの騎士団への激励当日。
出迎えると言っていた騎士団長の姿がなく、しばらく待つも一向に現れない。
「お嬢様、訓練が長引いているのかもしれません」
「そうね。では、訓練場へ向かいましょう」
同行した使用人の言葉で、待つのではなく行動することにした。
疑問に思いながら騎士団が訓練している場所へ向かう。
騎士団の姿を確認する。
人だかりができており、彼らは訓練しているようには見えなかった。
「いつも私たちのことを命がけで守ってくれる騎士様には感謝しています」
聞き慣れた声。
彼女の声を聞くと、鳥肌が立つ。
まさかと思い、声の主を確認する。
「……ソミール……様?」
「あっ、ラヴィちゃん。どうしたの?」
「それは、こちらのセリフです。なぜ、あなたこちらにいるのですか?」
「私ね、以前から国を守る騎士様に挨拶したいと思ってたの。ラヴィちゃんは、どうして?」
「……私は、聖女候補として……」
「もしかして、私の後を付けて来たの? もう、ラヴィちゃんは私のことが大好きなんだね。可愛いなぁ」
ラヴィニアの言葉を遮るように話し出すソミール。
「違います、私は……」
「分かった。今日は、一緒に騎士団の仕事を見学させてもらおう。あの、この子も一緒に見学をいいですか?」
「……事前連絡では、聖女候補『一名』とありましたが……いいでしょう」
「良かったね、許可されて。一緒に行こう。手、繋ぐ?」
ラヴィニアの話を聞かず、話を進めるソミール。
「結構です。それより騎士団長は、どなた……」
「ラヴィちゃん、大丈夫だよ。騎士の皆さんには、私が挨拶したから。この後、王都の巡回予定なの。時間厳守だから、困らせないようにしなくちゃ。私は構わないけど、皆さんにまでワガママで困らせないの。ほら、行くよ」
ソミールに訴えてもらちが明かないと判断し、騎士団長に尋ねたいのにソミールによって遮られる。
「……ちょっと、ソミール様!」
騎士団への訪問は、聖女候補『ラヴィニア・ジラルディ』で、事前申請している。
なぜこんなことになったのか確認できないまま、急かされる。
事前申請での注意事項に『騎士の巡回予定に従うなら、同行を許可する』とあったので、仕方なくソミールに従う。
ソミールは、ラヴィニアの馬車に当然のように乗り込む。
「ソミール様、これはどういうことですか?」
「どういうことって?」
「騎士団への訪問は事前申請が必要なのです。許可は得たのですか?」
「そうだったの? だけど、『聖女候補です』といったら、案内されて……」
「それは、私が事前申請したからです」
「そうなんだ? なら、私も『聖女候補』だし問題ないね。今日は一緒にいられるね? 私と一緒で嬉しい?」
「嬉しくありません!」
「もう、ラヴィちゃんは素直じゃないなぁ。そんなところも可愛いですよね?」
ソミールは、今まで存在を消していたラヴィニアのお付きの使用人に同意を求める。
主人のことを『可愛い』と問われれば、『はい』としか言えないのだが、この状況で会話に加わるべきではないと判断し反応せずにいる。
「到着しました」
ソミールに尋ねてもまともな返答が得られないので、ラヴィニアは勢いよく馬車を降り騎士団長を探す。
「騎士団長はどなたですか?」
「私です。どうかされましたか?」
「司祭様からの連絡では、どのようになっていましたか?」
「『聖女候補の訪問がある』と聞いております」
「聖女候補の名前については?」
「はい、ラヴィニア・ジラルディご令嬢と聞いております」
「では、なぜこのような対応なのでしょうか?」
「それはどういう意味でしょうか?」
「私が『ラヴィニア・ジラルディ』です」
「……あなた様が……ラヴィニア・ジラルディご令嬢?」
「はい」
「まさか……」
自身が事前申請したラヴィニアだと告げると、騎士は顔面蒼白になる。
「どうして、こんなことになったのですか?」
「それは……」
騎士団長が事実を語る。
「約束の時間の三十分ほど前に、あちらの聖女候補がコルネリウス殿下と訓練場まで訪れ『私は聖女候補です』と名乗りました。事前申請より時間が早かったので、私たちの失態かと思い確認しました。『本日訪問の聖女候補様ですか?』と、するとあの方は『はい』と答えられました。コルネリウス殿下からも『騎士の活動を見学したいというので、彼女を頼む』と命じられましたので、てっきりあの方が『ラヴィニア・ジラルディ』ご令嬢だと……大変申し訳ありませんでした」
騎士団長を責めたいがソミールだけでなくコルネリウスもいたとなれば、この状況になっても仕方がない。
「……キャー」
団長に事の経緯を確認していると、叫び声が響く。
声の主は、ソミール。
周囲を見回すと、騎士が一人の男を取り押さえていた。
「ひったくり、確保」
私たちが話し込んでいると、ひったくりが発生し確保していた。
そして、その日の報告書では……
『ラヴィニア・ジラルディの騎士団激励の補佐、ソミールの報告書。騎士と共に王都巡回中にひったくり遭遇。いち早く犯人に気づき、確保に協力』
「何が『犯人確保に協力』よ。被害者が突き飛ばされて犯人を目撃して、叫び声をあげただけじゃない。それに、いつの間に、補佐ソミールってなっているのよ」
いつの間にか、ラヴィニア・ジラルディの事前申請の書類に『補佐、ソミール』の名前が記入されていた。
事実を司祭に確認に向かうラヴィニア。
「司祭様。どうして申請書に、ソミール様の名前があるのですか?」
「私も確認したのですが、いつの間にか、ソミールさんの名前が追記されていました。私が確認した時は、ソミールさんの名はありませんでした」
司祭は嘘を吐くような人間ではない。
誰かが、司祭の申請後に手続きをしたのだろう。
そんなことができるのは……
その候補者が教会へやって来た。
「ソミール嬢。今回、騎士がひったくりを確保するのに協力したと報告があった。危険な行為は控えてくれ」
「ごめんなさい。被害者がいるって思ったら、体が動いちゃって……」
「……心配した。無事でよかった」
「心配でわざわざきてくれたの? ありがとう」
そして、ひったくり事件は国民の間で噂になる。
「聖女候補が、ひったくりを予知して犯人確保したってよ」
「そりゃ、すげぇな」
「予知したのは、平民出身の聖女候補らしいぞ」
「貴族の聖女候補もいたみたいだが、何もしてなかったってよ」
「これは、本格的に平民聖女様の誕生か?」
あの日、ひったくり確保の瞬間に居合わせたのは聖女候補だということが広まっていた。
それだけでなく、平民と貴族の二人の聖女候補がいたということも。
ラヴィニアは、周囲に気づかれぬよう変装していた。
なのに、貴族だと知られていたということは、誰かが情報を漏らしたのだろう。
この時ラヴィニアは、事実を王族に訴えたとしても信じてもらえないのだろうと諦めた。
〈ラヴィニア・ジラルディの場合〉
「司祭様、私は騎士の激励に訪問したいと思います。その際、共に王都を周り国民の声を聞きたいと考えております」
「ジラルディさんの騎士団訪問を教会は許可します。教会から連絡しますので、予定を報告してください」
「はい」
ラヴィニアも事前に当日の詳細は司祭に提出。
講義が終わり、誰にも気づかれないよう自由時間に司祭の元へ向かった。
同じ立場の聖女候補を疑っているわけではない。
ある人物だけを注意している。
その人物に知られまいと、警戒しているだけ。
当日まで、あの者に知られていないと確信していた。
「……どうしたんでしょう? 時間は間違えていないのに……」
ラヴィニアの騎士団への激励当日。
出迎えると言っていた騎士団長の姿がなく、しばらく待つも一向に現れない。
「お嬢様、訓練が長引いているのかもしれません」
「そうね。では、訓練場へ向かいましょう」
同行した使用人の言葉で、待つのではなく行動することにした。
疑問に思いながら騎士団が訓練している場所へ向かう。
騎士団の姿を確認する。
人だかりができており、彼らは訓練しているようには見えなかった。
「いつも私たちのことを命がけで守ってくれる騎士様には感謝しています」
聞き慣れた声。
彼女の声を聞くと、鳥肌が立つ。
まさかと思い、声の主を確認する。
「……ソミール……様?」
「あっ、ラヴィちゃん。どうしたの?」
「それは、こちらのセリフです。なぜ、あなたこちらにいるのですか?」
「私ね、以前から国を守る騎士様に挨拶したいと思ってたの。ラヴィちゃんは、どうして?」
「……私は、聖女候補として……」
「もしかして、私の後を付けて来たの? もう、ラヴィちゃんは私のことが大好きなんだね。可愛いなぁ」
ラヴィニアの言葉を遮るように話し出すソミール。
「違います、私は……」
「分かった。今日は、一緒に騎士団の仕事を見学させてもらおう。あの、この子も一緒に見学をいいですか?」
「……事前連絡では、聖女候補『一名』とありましたが……いいでしょう」
「良かったね、許可されて。一緒に行こう。手、繋ぐ?」
ラヴィニアの話を聞かず、話を進めるソミール。
「結構です。それより騎士団長は、どなた……」
「ラヴィちゃん、大丈夫だよ。騎士の皆さんには、私が挨拶したから。この後、王都の巡回予定なの。時間厳守だから、困らせないようにしなくちゃ。私は構わないけど、皆さんにまでワガママで困らせないの。ほら、行くよ」
ソミールに訴えてもらちが明かないと判断し、騎士団長に尋ねたいのにソミールによって遮られる。
「……ちょっと、ソミール様!」
騎士団への訪問は、聖女候補『ラヴィニア・ジラルディ』で、事前申請している。
なぜこんなことになったのか確認できないまま、急かされる。
事前申請での注意事項に『騎士の巡回予定に従うなら、同行を許可する』とあったので、仕方なくソミールに従う。
ソミールは、ラヴィニアの馬車に当然のように乗り込む。
「ソミール様、これはどういうことですか?」
「どういうことって?」
「騎士団への訪問は事前申請が必要なのです。許可は得たのですか?」
「そうだったの? だけど、『聖女候補です』といったら、案内されて……」
「それは、私が事前申請したからです」
「そうなんだ? なら、私も『聖女候補』だし問題ないね。今日は一緒にいられるね? 私と一緒で嬉しい?」
「嬉しくありません!」
「もう、ラヴィちゃんは素直じゃないなぁ。そんなところも可愛いですよね?」
ソミールは、今まで存在を消していたラヴィニアのお付きの使用人に同意を求める。
主人のことを『可愛い』と問われれば、『はい』としか言えないのだが、この状況で会話に加わるべきではないと判断し反応せずにいる。
「到着しました」
ソミールに尋ねてもまともな返答が得られないので、ラヴィニアは勢いよく馬車を降り騎士団長を探す。
「騎士団長はどなたですか?」
「私です。どうかされましたか?」
「司祭様からの連絡では、どのようになっていましたか?」
「『聖女候補の訪問がある』と聞いております」
「聖女候補の名前については?」
「はい、ラヴィニア・ジラルディご令嬢と聞いております」
「では、なぜこのような対応なのでしょうか?」
「それはどういう意味でしょうか?」
「私が『ラヴィニア・ジラルディ』です」
「……あなた様が……ラヴィニア・ジラルディご令嬢?」
「はい」
「まさか……」
自身が事前申請したラヴィニアだと告げると、騎士は顔面蒼白になる。
「どうして、こんなことになったのですか?」
「それは……」
騎士団長が事実を語る。
「約束の時間の三十分ほど前に、あちらの聖女候補がコルネリウス殿下と訓練場まで訪れ『私は聖女候補です』と名乗りました。事前申請より時間が早かったので、私たちの失態かと思い確認しました。『本日訪問の聖女候補様ですか?』と、するとあの方は『はい』と答えられました。コルネリウス殿下からも『騎士の活動を見学したいというので、彼女を頼む』と命じられましたので、てっきりあの方が『ラヴィニア・ジラルディ』ご令嬢だと……大変申し訳ありませんでした」
騎士団長を責めたいがソミールだけでなくコルネリウスもいたとなれば、この状況になっても仕方がない。
「……キャー」
団長に事の経緯を確認していると、叫び声が響く。
声の主は、ソミール。
周囲を見回すと、騎士が一人の男を取り押さえていた。
「ひったくり、確保」
私たちが話し込んでいると、ひったくりが発生し確保していた。
そして、その日の報告書では……
『ラヴィニア・ジラルディの騎士団激励の補佐、ソミールの報告書。騎士と共に王都巡回中にひったくり遭遇。いち早く犯人に気づき、確保に協力』
「何が『犯人確保に協力』よ。被害者が突き飛ばされて犯人を目撃して、叫び声をあげただけじゃない。それに、いつの間に、補佐ソミールってなっているのよ」
いつの間にか、ラヴィニア・ジラルディの事前申請の書類に『補佐、ソミール』の名前が記入されていた。
事実を司祭に確認に向かうラヴィニア。
「司祭様。どうして申請書に、ソミール様の名前があるのですか?」
「私も確認したのですが、いつの間にか、ソミールさんの名前が追記されていました。私が確認した時は、ソミールさんの名はありませんでした」
司祭は嘘を吐くような人間ではない。
誰かが、司祭の申請後に手続きをしたのだろう。
そんなことができるのは……
その候補者が教会へやって来た。
「ソミール嬢。今回、騎士がひったくりを確保するのに協力したと報告があった。危険な行為は控えてくれ」
「ごめんなさい。被害者がいるって思ったら、体が動いちゃって……」
「……心配した。無事でよかった」
「心配でわざわざきてくれたの? ありがとう」
そして、ひったくり事件は国民の間で噂になる。
「聖女候補が、ひったくりを予知して犯人確保したってよ」
「そりゃ、すげぇな」
「予知したのは、平民出身の聖女候補らしいぞ」
「貴族の聖女候補もいたみたいだが、何もしてなかったってよ」
「これは、本格的に平民聖女様の誕生か?」
あの日、ひったくり確保の瞬間に居合わせたのは聖女候補だということが広まっていた。
それだけでなく、平民と貴族の二人の聖女候補がいたということも。
ラヴィニアは、周囲に気づかれぬよう変装していた。
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