王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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聖女候補卒業

せっかく領地まで逃げて来たのに……

 コルテーゼ領に滞在するようになり、毎日森に出向き花の手入れをしている。
 一ヶ月が経過すると、僅かに生きていた芽から葉が生き生きと成長し始める。

「だいぶ成長したな」

「はい。ですが、蕾の気配はありませんね」

「そうだな。今年は咲かなくとも来年には蕾を見せるだろう」

 コルテーゼ侯爵の屋敷に滞在するようになり噂は私のところまで届くことはなかった。
 だが、不穏な気配が顔を見せ始める。

「今日、近隣の領地に魔獣を確認と報せが届いた」

「魔獣ですか……」

「調べたところ、他の領地でも魔獣の存在を度々確認しているらしい」

 聖女候補として祈っても、多少は出てしまう。
 それでも近年は減少したと聞いていた。
 それなのに度々確認されるというのは、聖女の結界に綻びがあるということになる。
 ソミールの祈りの実力だけは本物だ。

「あの方に何かあったのでしょうか?」

「どうだろうな。聞いたところによると、王宮に移り住み王妃教育も始まったとか」

「王妃教育ですか……」

 ルードヴィックに聞いてから、胸騒ぎがして両親に手紙で王都の近況を訪ねた。

『ソミール・イリノエ侯爵令嬢は聖女として活動しながら、王宮で王妃教育を受けている。
 翌年には、コルネリウスとの婚約を視野に動いている』

「婚約を視野に……」

 ソミールは聖女候補紹介時、貴族の作法をわずかだが学んでいる。
 王族との謁見は、平民ということで大目に見られていた。
 だが、聖女となりコルネリウスの婚約者という立場になろうとしているのであれば、中途半端な作法では許されない。
 王子の婚約者となるべく教育を受けるとなれば、そうとうな時間を要する。
 なのに、期限は一年?
 あのソミールに、たった一年の教育で間に合うはずがない。
 教育に時間を割いているせいで、祈りが疎かになったに違いない。
 聖女の祈りがなければ結界は弱体化。
 その結果、各地で魔獣が目撃されているのだろう。
 父の手紙には続きがある。

『聖女候補を卒業した者たちに王宮から手紙が届き始めている。
 フローレンスにも手紙が届いているので同封する。
 噂によると、内容は今代の聖女の補佐を頼めないかというもの。
 コルネリウス王子がパーティーで「補佐は必要としない」と宣言したため、王都にいる卒業した聖女候補たちは補佐を断っていると聞く。
 フローレンスも立場など気にすることなく、決断して構わない』

「……今更、聖女補佐を依頼なんて……」

 あるわけがないと思いつつ、父の手紙に同封されていたコルネリウスからの手紙を確認する。

『この度、ソミールが聖女となり王宮で教育を受けている。
 だが慣れない環境のため、聖女候補時代のような能力が発揮できないでいる。
 ソミールの意向で気心の知れた者たちに補佐・世話を頼みたいと言っている。
 今の聖女候補たちは聖女としても令嬢としても未熟であり、王宮での補佐には心もとない。
 そのため、卒業していった聖女候補たちに声を掛けている。
 令嬢たちには、聖女補佐という重要な役を受けてくれると有り難い。
 今後は名誉ある「聖女補佐」という立場で、王宮への滞在を許可する。
 ソミールが王妃教育を修了し、聖女と両立できるまでの間、聖女補佐に任命したいと思っている。
 一度、令嬢と直接話したい』

「何よこれ……『名誉ある』って、嬉しくないわよ」

 あれだけ、『聖女補佐は必要ない』と言っていたのに、こうもあっさり自身の発言を覆すとは……
 
「それにしても、王族らしい内容」

 『聖女補佐に任命したい』だなんて……
 そう言えば、聖女候補だった者が喜んで受けるとても思っているのかしら?

「どれだけ侮辱すれば気が済むのよ。こんなの、お断りだわ!!」

 父に断る旨の手紙を怒り任せに認めた。
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