王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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「フローレンス様、王族から手紙が届いております」

「私宛の手紙がこちらに?」

 私はまだコルテーゼ領にいる。
 その事実を知っていて私に手紙を送る王族。

「……ふぅ……」

 深呼吸をしてから内容を確認する。

『フローレンス・バルツァル公爵令嬢。
 現在、国は混乱している。
 聖女が一人では結界の維持は難しいという判断だ。
 詳しくは直接話したいと思っている。
 どうか時間を割いてはくれないか? 
 早馬で届けているので、数日後には私もコルテーゼ侯爵の領地に到着する。
 会えるまで滞在するつもりだ。
 どうか、私の話を聞いてほしい。
 コルネリウス・リヴェラーニ』

「数日後に到着って……こちらの意思を聞く気はないのね……」

 そして、本当にコルネリウスはコルテーゼに入りコルテーゼ侯爵の屋敷に訪れた。

「王都から辺境まで、王子にとっては長旅でお疲れでしたでしょう?」

「……いや、問題ない」

「そうですか」

「その……手紙では伝えられなかったが、今回令嬢の元を訪ねたのは、今代の聖女についての話なんだ」

「聖女様のご活躍、この辺境でとても実感しておりますわ」

 結界は綻び、今では魔獣の目撃情報が頻繁に報告されている。
 卒業した聖女候補に祈ってほしいと個人的に願う者が現れるほどだと聞く。  

「……そうか……令嬢も知っていると思うが、今代の聖女は平民から王宮に上がった者。聖女候補として教会で活動していた頃とは違う環境に……困惑……しているようなんだ」

 困惑……?
 彼女を知る私からすると、王妃教育を受けるために聖女の仕事を疎かにしているだけとしか思えない。

「……まぁ、そうなんですか? それは、大変ですね」」

「あぁ……環境の変化や精神的負担が重なり……能力を発揮しきれていないらしい。結界も弱まり、あちこちで被害を訴える声が上がっている。今は騎士を派遣し対応している。聖女の負担を軽減するためにも、聖女の素質を持ち、補佐出来る人物を求めている」

 数ヶ月前に、聖女を公表した時には『聖女補佐は必要ない』と宣言していたのに?
 王族の言葉で、聖女補佐にも選ばれなかった聖女候補は『無能』と囁かれているのに……そこには触れないのね。
 今代の聖女と共に卒業した私は特に、社交界で令嬢たちの恰好の餌食とされた。
 その喧噪から逃れるために、避難している。
 私を追い込んだのは、コルネリウス。
 自覚があるはず。
 パーティーで、直接私を侮辱したのだから。
 それなのに、私に協力を求めるの?
 ソミールの能力が低下したことで、それ以外が見えてないのね。

「そうですか」

 コルネリウスが何を言いたいのか察しながら、私からその言葉を口にすることはない。

「……令嬢は……彼女と共に聖女候補として教会に通っていただろう……」

「はい。短い期間ではありましたが、共に聖女教育を受けておりました」

「……令嬢に、このようなことを頼むのは気が引けるのだが……聖女の補佐を引き受けてもらえないか? 令嬢が助けてくれると、有り難ぃ」

「助ける……ですか?」

「あぁ。令嬢には王宮に滞在してもらい……『聖女の一人』として招き入れたいと考えている。待遇も保証する」

「補佐ではなく、聖女の一人として王宮に滞在……ですか?」

「あぁ。それが難しいようであれば、せめて王都に戻ってきてくれないか?」

 王子の様子から切迫した状況であるのが伝わる。

「……このことは、今代の聖女様もご存じなのでしょうか?」

「それは……まだだ。だが、私から直接話し説得するつもりだ。だから、どうか受けてもらえないだろうか?」

「……今代の聖女様に相談することなく、私に話をするというのは聖女様に失礼ではありませんか?」

「……あぁ、そうだな。令嬢の言うとおりだ……」

「……王子、私の素直な気持ちをお話ししてもよろしいでしょうか?」

「あっ、あぁ」
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