王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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ソミール・イリノエ

1

 聖女候補卒業数週間前。

「ソミール嬢、私の養女にならないか?」

「イリノエ侯爵の養女に……私がですか? いいんですか?」

「ああ。聖女候補という肩書だ。平民のままでは、色んな人間に利用されてしまう。そうならないためにも、貴族の後ろ盾を持っておくべきだ」

「ありがとうございます」

 聖女候補卒業直前にイリノエ侯爵から養女の申し出があった。
 私は躊躇うことなく、その場で養女になることを受け入れた。
 侯爵の指示通りいろんなところに名前を記入すると、私は貴族になった。

「皆さんに報告があります。私ソミールは、イリノエ侯爵の養女となりました」

 卒業時、親友たちに私がイリノエ侯爵の養女となったこと報告する。
 親友たちだけでなく、司祭も驚き喜んでくれた。
 私が侯爵令嬢となることで、聖女候補たちの立場が逆転してしまう人もいるけど私は高位貴族となっても変わらない。
 私は私。
 皆を親友だと思ってる。

「ソミール嬢、聖女候補卒業おめでとう」

 私の聖女候補卒業を祝うために、花を持ったコルネリウスがイリノエ侯爵家までやって来た。
 イリノエ侯爵の養女となり、私はその日のうちに侯爵家に移り住んだ。
 別れを悲しむ両親が私を離さず大変だったが、侯爵が話すと二人は私を笑顔で見送ってくれた。

「コルネリウスさん! ありがとう……綺麗な花、もしかして私に?」

「ああ」

「嬉しい、ありがとう」

「イリノエ侯爵家を訪れたのは初めてだ」

「そうなんですか? なら、私が案内しましょうか?」

「ありがとう、庭を散歩しながら話さないか?」

「はい!」

「ソミール嬢、私は……」

「……ん? なに?」

「いや……私を信じ待っていてほしい」

「私はコルネリウスさんのこと、信じてるよ」

 はっきりとした約束はないが、色々予想はつく。
 彼の表情から、聖女の話……それか……婚約の話。

「んふ」

「今後は、忙しくなり会いに来ることは難しくなる」

「そうなの? 寂しい」

「この期間お終えれば、また会える。待っていてくれ」

「うん。待ってるね」

 私が「待っている」というと、嬉しそうにしてコルネリウスは帰って行った。

「ん~、皆からのお茶会の招待状、届かないなぁ」

 侯爵令嬢になったら、親友の皆が祝福のお茶会とかパーティーを開催してくれると思ったのに一通も招待状が来ない。

「準備に時間かかってるのかな? 侯爵令嬢の私に恥をかかせてはいけないと思って、盛大にしようとしてくれてるのかな? 気にしなくていいんだけどなぁ。んふっ。まだかなぁ、招待状」

 いくら待っても、皆からの招待状が届かない。
 
「もう、どうして? 私が侯爵令嬢になったことを嫉妬してるの? 私は身分とか気にしないのに。仕方がない。私から皆を招待してあげよう。侯爵邸を見たいだろうし」

 早速、お茶会の招待状を親友たちに送る。
 
「ねぇ、そこのあなた。もうすぐお茶会をするの。私の初めてのお茶会だから、豪華な準備をしてね」

 使用人にお茶会を開催することを伝える。

「ソミール」

 侯爵に呼ばれた。

「……聖女様が亡くなった……」

「聖女様が? それは……悲しいですね」

「……聖女が亡くなると、一年は喪に服す」

「そうなんだ……」

「……その間は、お茶会もパーティーも中止だ」

「……え? そうなの? 私、既にお茶会の招待状を送っちゃいました。それは良いですよね?」

「……一年間は喪に服す。すべて中止だ」

「え~皆、楽しみにしてくれているのに? 使用人も頑張ってくれたんですよ? それでも中止にしなくちゃいけないんですか? 申し訳ないです」

「すべて中止だ。聖女候補のときに教会で習わなかったのか?」

「……そう……でしたっけ?」

「そういうことだから、今は大人しくすること。お茶会は中止だ」

「はぁい」

 お茶会で皆に私の侯爵令嬢姿を見せるの、楽しみだったのにぃ。

「残念」

 聖女の喪に服すためお茶会の中止を伝える手紙を送ると、全員が私のお茶会に参加できなくなったのを残念がっていた。

「ソミールお嬢様、お手紙が届いております」

「私に手紙? 誰誰? レンスかな? フィーナさんかな? もしかしてベッタちゃんとかたっだりして~」

 使用人から手紙を受け取り差出人を確認する。

「司祭様? なんだろう?」

 司祭から聖女がご逝去したため、聖女候補には教会に来てほしいと手紙が届く。

「聖女候補? なら、皆に会えるね」

 楽しみに教会へ向かった。

「レンス、一ヶ月も経ってないのになんだか久しぶりだね。初めてのお茶会を開催したのに、残念だよね?」
「あ!! フィーナさんも久しぶりだね。私、ずっと会いたくて寂しかった。今では私の方が立場が上になっちゃったけど、私は変わらないから。気にせず今まで通り仲良くしようね」
「あ! ファヴィちゃん。元気にしてた? 今は、ファヴィちゃんが聖女候補代表なんだよね? 困ったことが合ったらなんでも聞いて。相談に乗るから!!」
「ラヴィちゃん!! どうしたの? もしかして、私に会えて感動してるの? 可愛いなぁ」
「私の心配してくれるの? 優しいなぁ。あっ、ラヴィちゃん……なんだか、お姉さんらしくなったね。あんなに幼かったラヴィちゃんが……成長を感じるよ。大きくなったね」
「テーアちゃんも元気にしてた? 私がいなくて寂しくて泣いてない?」
「……もう、素直じゃないな。あっ、フィオちゃん。どうしたの? 私に会いたかった?」
「ん? ベッタちゃん!!」
「もう、そんな方っ苦しい言い方しなくていいんだよ。今まで通り、ソミールで構わないから。ベッタちゃんは伯爵令嬢で私が侯爵令嬢だけど、友だちに爵位とか関係ないよ」

 皆に以前と同じように振る舞うも、私が侯爵令嬢となってしまい困惑している。
 
「爵位なんて、私は気にしないのに」

 侯爵令嬢となった私が、少しずつ皆を引っ張ってあげないといけないんだよね?

「皆には、また日を改めて私のお茶会に招待するから安心してね」 
 
 司祭に案内され、教会の地下へと案内される。
 地下の存在は、知らなかった。
 
「すごーい、綺麗ぇ。こんな場所があったなんて、もっと早くから知りたかったですぅ。もしかして、聖女候補の時に、祈りの水晶としてもらったのは、ここの物ですか?」

 到着したのは、紫色の水晶がたくさんある幻想的な場所。
 ラヴィちゃんが欲しそうにしていたので、司祭にもう一つもらえないかお願いしたけど断られた。
 こんなにたくさんあるんだから、ここにいる人数分くらいいいと思うのに……。
 
「ここへ来たのは、聖女様を判定する儀式のためです。こちらの水晶の前で祈りを捧げると、水晶が反応し虹色に輝きます」

 聖女を決める儀式……。
 現役の聖女候補から儀式を行っていく。
 ベッタちゃんに、フィオちゃん、テーアちゃんにラヴィちゃん、ファヴィちゃん。
 
「次はソミールさんですね。こちらに」

「はぁい」

 目を瞑り水晶の前で祈りを捧げると、体の中から何かが抜けていく感覚。
 周囲がざわつきはじめる。
 目を開けると、紫色だった石が今は色んな色に輝いていた。 
 
「わぁ、私が聖女ってこと?」

 水晶が私に反応したことで、レンスやフィーナさんが儀式を受けることはなくなった。

「ソミールさん、あなたが今代の聖女と選ばれました」

「私が……聖女……」
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