うそっ、侯爵令嬢を押し退けて王子の婚約者(仮)になった女に転生? しかも今日から王妃教育ですって?

天冨 七緒

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スピンオフ ステファニー

ローニャ 絡まれる

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あれから楽器職人は現れていない…いないが、男爵を最近見かけるようになった。
私が先に気付けば避けているが、相手の方が先に気付くと必ず声を掛けられる。今の私は平民なので失礼の無い範囲で避けてはいるが、興味もない男爵の事を知っていく。

男爵には奥さんがいて子供もいるが、既に女としてみていないと女の私に言い放つ。
私が気分を害したことにも気付かないこの男はペラペラとよく喋り続けている。
私が移動すれば後ろをずっと付いてきて、後ろからくだらない言葉を囁かれている。

「私の処に来れば仕事をする必要なんてないし、贅沢もさせてやるよ」

それは、私を気持ち悪くさせる言葉だった。
平民生活から抜け出したい人間からしたら男爵の言葉に縋り付いてしまいそうだが、貴族社会を見てきた私には分かる。
この男は遊ぶだけ遊んで決して贈り物もお金も渡したりはしないケチ男。
それどころか、妻と別れる慰謝料が少し足りないからとか言い訳を並べ女からお金を奪いそうなグズにしか見えない。
こんな男と一緒にいたくなくて忙しいフリを続けても私の側から離れない…

「用が無いのなら帰れっ」

耳障りだった男の声が止み、私の傍からも離れていった。

「私とローニャの関係を邪魔をするな。お前のようなモテない男には分からんと思うが女は言い寄られるのが嬉しい生き物なんだ。ローニャも私を拒絶しているようで喜んでいるのが分からないのかっ」

…この男は何を言っているの?

言い寄られて嬉しいのはイケメンだけ。
あんたみたいな男に言い寄られて喜ぶ女はいない。
喩え居たとしてもそれは私ではない。
私は男爵の後ろから頭を振ってドリュアスさんに違うとアピールをした。

「彼女は今仕事中で、私の管理下にある。男爵はここへ何しに来たんですか?仕事の妨げになるようでしたら伯爵に伝える義務が私にはあります」

「…ふん。ローニャ、また会いに来るよ」

気持ち悪い。
早く去ってほしい。

「会いに来ないで…」

…私はあの男の背中に向かって呟いていた。

「なら、本人がいる前で言え」

私もそう思うが貴族というものを嫌というほど知っている。

「…言えません。私は平民なんで…」

「…一人で抱え込むな、あいつが来たらすぐに俺を呼べ」

ドリュアスさんはそれだけ言って去っていった。

「…あのっローニャさん」

「はい」

声を掛けてきたのは商人見習い中の少年だった。

「僕がドリュアスさんに伝えたんです」

「あっそうなんですね?ありがとうございます」

「いえ…ドリュアスさんからローニャさんにしつこくする男がいたら教えろと言われていたんです。ドリュアスさん女性に対してぶっきらぼうですが、ローニャさんの事心配してるんです」

「…そう…なんですか?」

愛想がない人と思っていたが、周囲に声を掛けていてくれていたとは思っていなかった。

「はい、なので僕が言う事ではないですがドリュアスさんを頼っても良いと思います…」

「えっ?」

「避けているのかな?と思いまして…僕の勘違いでしたか?」

避けているつもりはないが、あの人の周囲には沢山の人がいる…従業員もだが女性も…
その中には、貴族らしき人もいた。
平民ではあっても、ここの木材店はかなり順調で伯爵とも良好な関係にみえる。伯爵と繋がりを持ちたい令嬢と、貴族になりたい女性達が代わる代わる彼のところへ来ていた。
そしてそんな女性達に値踏みをするように私への鋭い視線も感じていた。
過去の私なら見られることに優越感があったが、今は人の目を避けたい。
特に相手が貴族であれば尚更…

「安易に近付いて周囲に誤解されたくないので」

「あぁ、確かにローニャさんみたいに美人だったら皆勘違いしちゃいますよね。だけど、助けが欲しい時は助けてって言った方が良いですよ。特にあの男爵、またしつこくなってきましたから」

「また」という彼の言葉が気になった。

「…私は以前もあの方に?」

「あっ忘れてしまってるんですね。はい、あの人は夫人と別れてローニャさんを後妻にって口説いていたんです。ローニャさんがここへ来る前にも綺麗な女性のお店に足繁く通ったりとこの辺りではあまり良い噂はない人なんです」

最低男だわ。

「そんな人なんで、真面目に仕事しているローニャさんのことドリュアスさん気にしてるんです」

真面目…過去の私は真面目でも今の私は…
皆の話を聞いていると私が記憶を失っている間、本物のステファニーがステファニーをしていたんじゃないかと思う…
私の愚かな行為が貴女を汚したのに…私は貴女の恩恵を受けて良いはずがない。

「私は一人で大丈夫です」

「ロッローニャさん…」

私は心配してくれた彼を置き去りに仕事の続きに戻った。
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