うそっ、侯爵令嬢を押し退けて王子の婚約者(仮)になった女に転生? しかも今日から王妃教育ですって?

天冨 七緒

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スピンオフ ステファニー

ローニャ 楽器職人

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日々の生活に慣れてきた頃、再びあの男が現れた。

「ねぇ、君…ローニャ…さん?」

名前を呼ばれ振り向くと楽器職人がいた。
彼に名前を教えたつもりはないので誰かから私の名前を聞いたのだろう。

「はい、なんでしょう?」

「また曲を聴かせてくれないか?」

「曲…同じ曲ですか?」

「まだあるんですか?是非聴かせてください」

「………」

しまった。 
余計なことを言ってしまったと後悔した。

「今は仕事中なので困ります」

「ではお昼には?食事をご馳走させてください」

「…分かりました、ですが今日は娘の世話を頼んでいる人にお昼会いに行くので明日ではダメですか?」

「明日ですね、分かりました」

男は明日の約束を取り付け、しつこくすることなく去って行く。
私に娘がいるって言っても、あの人は態度が変わらなかったのに少し驚いた。

「おいっ…大丈夫なのか?」

誰かを確認しなくても声でドリュアスさんだと分かるようになった。

「はい、大丈夫です」

「…何かあったら言えよ」

表情では分からないがドリュアスさんは心配して駆けつけてくれたのか、待っている資料が少しシワになっていた。

そして、翌日楽器職人は本当に来て私は食事をご馳走になった後に休憩時間が終わるまで歌を披露した。
一度に数曲聴いて覚えられるのか気になったが、早く終わらせたかったので私から質問することはなく、鼻唄を続けた。
彼は真剣に私の歌う曲に夢中に書き取っている。
その紙は私からすると点が沢山あるだけだが、彼には楽譜なのだろう。
彼が求めるまで続けたが、休憩が終わる時間となった。

「もうこの辺で良いですか?仕事に遅れちゃうので」

「また、会いに来ても良いですか?」

「…曲はもう覚えてないです…夢の中での曲なんで忘れちゃって…」

「あぁ…そうなんですね。なら、新たな曲が出来たら教えてください」

この人は本当に曲にしか興味がないのかな?

楽器職人だし新たなものに興味があるだけで私が目的ではないという反応だった。
自意識過剰ではないと思うが、私はゲームの主人公なので見た目には自信がある。

なのに彼は私の見た目ではなく中身に惹かれたの?今更、拒絶し過ぎだったかな?と反省した。

「曲はもう覚えていない」と言った日から彼が来る頻度は少なくなったが、会えば避けることなく会話をするようになった。
彼はバイオリン以外にも絵の額縁なども製作しているようで、依頼がある度に店にやって来ては夢での曲を聴いたかを聞かれた。

彼は本当に音楽が好きなようだった。

私たちの関係を心配してかドリュアスさんに彼の事を尋ねられたが「問題ない」と答えた。
この国では珍しい曲調を教えているだけで、彼が私に強引なことをすることは一切無いと伝えた。
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