うそっ、侯爵令嬢を押し退けて王子の婚約者(仮)になった女に転生? しかも今日から王妃教育ですって?

天冨 七緒

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スピンオフ アルベルト

試験勉強

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パーティーが終わっても穏やかすぎる程に平穏な学園生活だった。
だが変わったこともある。
令嬢達が積極的に平民と関わるようになっていた。

欲を言うなら、私が助言する前に動く令嬢が見たかったよ。

そして、次第に婚約を決める者も増えてきた。
あのパーティーで潔く諦めた者が現れ、その令嬢を皮切りに続々と他の令嬢達も婚約を決めていった。
王子の婚約者を夢見ているといつまでも婚約者不在が続き、このまま学園在籍中に決まらなければ選ぶ権利が無くなる。
そうなれば、最終的にどんな貴族へ嫁がされるのか恐怖が生まれたのだろう。
であれば王族よりも現実的な高位貴族をと我先に選び出した。

残り物ではなく、選べるうちにと言うことなんだろう。

「アルベルト殿下ぁ。」

顔を確認せずとも誰かはすぐにわかった。
語尾を伸ばすのは平民の特徴なのか、もしくは媚を売る人間の特徴なのか?
確か婚約者のいる令息を奪った平民もこのような話し方だったな。

「マリア嬢どうしました?」

「もうすぐ試験ですね。」

この時点でその先が読めてしまった。

「あぁ、そうだね。」

「アルベルト殿下はぁ、とても聡明だとお聞きしましたっ。」

「そう言われるのは有り難いね。」

「…お勉強…教えて頂けませんか?」

単純だな。

上目遣いでお願いする姿は一見か弱さを表しているが自分の良さを理解して、最大限に利用し獲物を狙うハンターの鋭さを持っていた。

「教師に聞いたりはしないのか?」

「えっ…先生は…なんだか…敷居が高いと言いますか…。」

「教師なんだ生徒からの質問は当然だと理解しているはずだよ。」

笑顔で告げれば、目が泳ぎだした。

「あの…先生は…」

「…ふっ、先生が相手だと緊張して質問はしにくいかい?」

私が彼女に理解を示せば途端に視線が合う。

「はい、そうなんです。」

「私は生徒会で忙しいから時間がある時に…少し考えてみるよ。」

「はいっお願いします。」

試験前の生徒会はそこまで忙しいものではない。
私が生徒会室に居るのは面倒事を避けるためだ、今回のように。
さて、これからどうしようか…。
本気で私が教える?

「アルベルト殿下。」

一度深呼吸してから振り向いた。
振り返れば優美に微笑むヘップバーン嬢がいた。

「どうかしたのか?」

「私がお手伝いいたしましょうか?」

「ん?」

「マリア様の勉強です。」

「…頼んでも良いのか?」

「勿論です。」

「なら、お願いするよ。」

「はい。」

前回のパーティーでの発言からか、令嬢も自ら動き出し始めた。
それなりの人脈を持つヘップバーン嬢は翌日には数人を集め、マリア嬢含む平民達に勉強を教えていた。
勉強会は毎日行われていたので、一度私も顔を見せることにした。

「ヘップバーン嬢。」

「アルベルト殿下。」

「今回は勉強会を提案してくれてありがとう。」

「いえ、アルベルト殿下のお役に立てて何よりです。」

私がヘップバーン嬢に声を掛けていると、視界の隅でソワソワと蠢いている人物に気が付いた。

「ん?」

今気が付いたように確認すれば、一瞬にして満面の笑みに変わる生徒がいた。
淑女教育を受けた令嬢では考えられない笑顔を私に向ける人物。

「アルベルト殿下ぁ、今回も私の為にヘップバーン様をご紹介いただきありがとうございます。」

天然か計算か…マリア嬢は「も」と強調し私が特別に気に掛けているように周囲に…特にヘップバーン嬢に思わせようとしていた。
敢えて訂正はしないが、腹の探りあいに長けている令嬢達は直ぐに察知したのだろう。

「ヘップバーン嬢も信頼のおける令嬢だからね。優秀であり、貴族令嬢として素晴らしいと聞いている。今回の件は令嬢にしか頼めなかっただろう。」

マリア嬢が私から特別扱いを希望していたので、私も優秀な貴族を紹介するという特別を見せた。
隣にいるヘップバーン嬢も言葉を発することはないが、私の言葉に優越感に浸っているのが分かる。

その後は勉強に戻った。
ご褒美と言うわけではないが、試験が終われば王宮に招待すると約束した。
それもあり、試験までの三週間は皆必死に勉強している姿を目撃している。
私が教えることはないが、何度か顔を見せる程度には参加すれば、今回の試験、平民がかなり平均点を上げたと聞いた。

試験結果は、私の側近であるロベルトが二位、ミシェル ヘップバーン嬢が三位、マリア嬢は六十七位と大健闘だった。
因みにあの場に参加した平民達もかなりの好成績を残し、中でも優秀な平民は幼い頃から教育を受けていた貴族を抑え九位でしたと報告を受けた。

今回の勉強会は良い拾い物をした。

ドレスの件で優位に立ったと油断したのか、リューデンス嬢は九十八位だった。

その後、私は約束通り勉強会に参加した者達を王宮へ招き食事を共にした。
そして、今回一番の功労者であるヘップバーン嬢は特別に私自ら王宮の庭園を二人きりでエスコートした。

翌日には王宮へ招待したことも、私がヘップバーン嬢と二人きりで庭園を散歩したことも学園で噂されるようになった。
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