男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます

天冨 七緒

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後頭部を殴られるような痛みとはこの事か

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あのキスを思い出すと幸せになれた。

けど、その喜びは長続きはしなかった。
今日も先輩は空き部屋にいる。
知らない人と一緒に。
もちろんそういうことをしてしている。
俺はその空き部屋に乗り込む…
なんてできるはずもなく静かにその場を離れた。
落ち込んで、気付けば裏庭に一人で座っていた。
暖かいのに身体が冷えていき体温が奪われていった。

その日からあの空き部屋に行くのを躊躇ってしまう。
先輩は行かなくなった俺の事を何か思ってくれるかな?


十日ぶりに先輩の所に行ってみた。
先輩は既に空き部屋にいて、今日は一人みたいだった。
あの頃のような気持ちで浮かれて空き部屋に入る事はできなかった。
無言のまま先輩の近くに座る。
けど、前とは違う距離。
なんで何も話してくれないの?
俺が居なかった事に何も感じなかったの。

「先輩はどうして俺とキスしたんですか?」

「…なんとなく」

な、なんとなく。俺とのキスってなんとなくでしたの。

「なんとなくでキスするんですか?」

「する」

「サイテー」

「なら、お前は?」

やっと先輩が俺を観てくれた。
観てくれたのに全然嬉しくない。

「お、俺は…」

言いたくない。
自分でも、もう分かってる。
助けてくれたあの日から気になってる。
先輩が誰かといる事に嫉妬して、誰にも触れて欲しくない。
自覚したくなかったこの気持ち。
だけど、あの日のキスで先輩も同じ気持ちなんだって期待した。
期待したのに、違ってた。
先輩は変わらず俺じゃない人とあの空き部屋でしていた。

「普通キスってその人としたい、その人をもっと感じたいとかそう言う思いでするんだと」

好きな人って言葉は使いたくなかった。
好きってバレたくない。

「ふーん。なら俺はあの時お前としたかった」

「瞬間ではなく、ずっとそう思える相手とするんです」

少し先輩が顔を歪めたように見えた

「ずっとねぇ、俺そういうのわかんねぇーわ。ずっと、一生、永遠とかそう言う気持ち無いと思ってる」

先輩の言葉は悲しくなる。
どうしてそんな事言うの?

「あるよ。ずっとはある」

「必ずいつかは終わる、ずっとは無い。俺は信じてない」

先輩の声が鋭くなったように感じた。

「お前今日はもうどっか行け」

初めて先輩に追い出された。
こんな風になるくらいなら今日来なければ良かった。





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