男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます

天冨 七緒

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ここは学校です

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終業式

今日で一学期が終了する。
これからは、恐れることのない夏休みが始まる。
先輩より俺のがエッチ大好きなのかな?
されでもさっ先輩の事好きだから仕様がないよね。
誰かを好きになるとずっと一緒にいたいって思って当然だし。
終業式終わったら、また先輩の家に行こっかなぁ。
パンツはちゃんと用意してあるから大丈ー夫。
あ~ん楽しみっ。
夏休みはいっぱい先輩と居られる。
夏休み何しようかな?
海も行きたいし、夏祭りとかもいいかも。
…海も祭りも危険かも?
ひと夏のアバンチュールって聞いたことがある。
先輩との思い出は欲しいけど、女の人が沢山居るところは心配だ。
絶対先輩はモテる、だって格好いいもん。
俺が先輩を守るしかない。

「とっても浮かれてる様だね」

「な、夏休みだからね。功刀君だって夏休みは楽しみでしょっ」

「うん、そうだね」

何その会話よりも他の事を気にしてますって顔。
今日はちゃんとボタン留めてきたからキスマークではないはず。
鏡で確認してきたから。

「んんふ」

なにその返事?笑い声?

「なに?」

「いやぁ全校生徒が参加する終業式が終わってからまだそんなに時間が経ってないにも関わらず面白い噂が出回っているらしい。それも、短時間にしては恐ろしい速さで」

功刀がなんか違う、いつもの功刀じゃない。
どうしたの?なんの噂、怖いよ。

「へぇ、どんな?」

「ある先輩の首筋にとてつもないエグイ程のキスマークがあるって言う、う・わ・さっ」

「ん?」

そんな噂が回るんだ。
キスマーク…ねぇ。

「ふふ」

功刀の笑顔が怖い。
何そのちょっぴり色っぽい含み笑い。
態々俺に言うって事は…。
俺に関係がある事で…。
俺にはキスマークは無くて…。
なら…。
ま、まさか。

「そ、それって」

「誰の事だろうね」

「…せ、先輩なの?」

お、俺…先輩にキスマーク……あったくさん付けた。
初めてのキスマークで浮かれて沢山付けまくったんだ。

「く、功刀君は見たの?」

「ん~どうだろ、じゃあね」

中途半端な状態で行かないで…。
確認した方が良いよね。
だけどホームルームが終わったら今日はもう終わりで。
確認するの怖いかも。
だけど、先輩だってそんな見せびらかすようなことはしないよね。
してないはず。
してない、してない。
ホームルーム速く終わらないかな。
速く安心したいよ。
先輩の教室に行くのは…この状況では、ちょっとね。
学年の違う人間が居たら目立つから、うんやっぱり校門の所かな。
ホームルームが終わり急いで校門の所で先輩を待った。
その間、多くの視線を感じてはいた。
なんだろう、いつもとは違うねっとり纏わりついている気持ち悪さ。
ジメッとする暑さがそう感じさせてるのかな?
第1ボタンを外し、ワイシャツで扇ぎ風を起こす。
多少は増しになる。

「あつい、はぁはぁ」

通りすがる生徒が首筋を見たり、背が高い人であれば胸元を凝視していた事に全く気付かなかった。
暑さから勝手に漏れた言葉にやらしさを感じとる者もいた。
首筋のキスマークに胸元の噛み痕、そして背が高くタイミングのいい幸運な者だけがピンク色の突起を目にすることが出来た。
ラッキースケベに遭遇した者は、生唾を飲んだり歩くスピードを落としたり前屈みになる者もちらほら。
多くの生徒が通る校門でなければ襲い掛かってしまう程の誘惑だった。
ラッキースケベに遭遇できた者達は皆、瀬里崎芯を魔性と認識した。
その魔性に誘惑されたい、むしゃぶりつきたい、理性がなくなる程喘がしたい。
多くの生徒が妄想し頭の中で瀬里崎芯を犯した。
本人は他人なんて気にすること無く、愛しの先輩が来るのを通りすがる生徒を誘惑しながら待っていた。

来たっ。

本当は走って駆け寄りたいが、そんなことしたら目立つと恐れ恋人だとバレないように平静を保つ。
誰がどう観ても恋人同士にしか見えないものを、必死に隠しながら仲の良い先輩後輩を装っている事など誰も気付かない。
先輩が歩いてくる間、遠くから首元を確認する。
功刀の「エグイ痕」とやらが気になって仕方がない。
先輩は第一ボタンが外されていた。

「ひっ」

まさかの光景に驚きを隠せない。
先輩の首筋にはうっすらとキスマークが…側に来て気付く程度ではあるが、それ以上の問題は首元にとんでもない色の痕とくっきりとした歯形がついていることだ。
これは確かに「エグイ痕」だった。

「く、く、首、首」

先輩は俺に見せ付けるように首を傾ける。
その行為で俺の動揺が正しく伝わっていないのがわかる。
先輩が態と第一ボタンを開けていたのだと確信する。

「な、ぼ、ぼ、ボタン留めて」

先輩の首元に手を伸ばしボタンを留めようとするが両手を掴まれる。

「どうした?」

「とうした?って、首が」

「首?」

「痕」

必死の俺を悪い顔の先輩が見ている。
全て分かっていてやっている。
何故そんな事をするのか俺には分からない。
男子校で先輩は慣れているのかもいれないが、態々見せびらかす必要は無いのでは…。
恥ずかしいよ。

「痕は見せ付けるために付けたんじゃないのか?」

「ち、違います」

「俺はお前のだって証だろ、所有物にはサインしておかないとなっ」

「…先輩か俺の?」

「だろっ」

「…ぅん」

両腕を捕まれたまま、恥ずかしさと嬉しさでうつ向いてしまった。
きっと俺の今の顔は真っ赤に違いない。
校門とは言えまだ学校で、恋人達のイチャつきは目を引き更には一部に絶大な人気を誇る二人の組み合わせは目立たないわけがない。
その事をいまいち理解してない俺と、全てを理解した上であえて気付かない振りをする先輩。
二人のイチャツキは次第に有名になっていく。
目立ちたくない俺の思いとは裏腹に。
来年には全校生徒が知ることとなるが今の俺には予想も出来なかった事だ。

「先輩、首痛い?」

近くで見ると何とも言えない色だ。
あの時の俺はどんだけ先輩に吸い付いたんだよ。
恥ずかしい。
甘噛なんていう可愛いものではなく、それはもはや怪我であって愛の行為とは思えない。
心配しかない。

「首貸してみな」

真剣な顔の先輩に静かに従った。
左手で俺の首をなぞり反対側に噛み付く先輩を受け入れる。

「ぅはぁっんん゛」

噛まれている間は目を閉じ先輩の袖や服に掴まり耐えた。
先輩にした同じことをされているだけだと理解している。
噛まれ多少の痛みはあったがそこ迄の痛みではなかった。

「これの10倍の痛みだ」

耳元で囁かれ、ゾグっとした。
先輩の囁き声には色気があって噛まれた直後と言うこともありエッチな気分になる。

「ごめんなさい、先輩」

優しく傷跡を擦る。

「これから芯の身体の至るところに噛み痕付けるけど良いよな?」

反論なんて出来るはずもなく黙って頷いた。
何度も言うがここは学校で多くの目があることを俺は忘れていた。
あまりの光景に周囲の人間は足を止め、二人の世界を見入っていた。

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