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不良グループの元総長に懐かれた02
しおりを挟む「佐奈田!」
食堂でトレーを手に席を探していると、名前を呼ばれた。振り向いた先、食事の手を止めた椎名が箸片手に大きく手を振っている。そちらのテーブルへ歩を進めると、椎名の隣の席が空いていた。
「ダチ?」
ありがたくテーブルにトレーを置き、座らせてもらうと、椎名の向かいに座っている男が口を開いた。
「うん。佐奈田。佐奈田、こいつ、ハジね」
あまりにも簡素な紹介だった。
「佐奈田日和です」
「俺は渡貫創。ハジでいい」
思わず二度見しそうになるのを堪えた。
渡貫創。この男の噂も、佐奈田は耳にしている。椎名と並んであまりにも有名だ。
黒髪の短髪に、黒縁眼鏡。平均的な身長。どこにでもいそうな、ごくごく普通の一般人みたいな見た目のこの男が、椎名がトップを務めた不良グループの元副総長だというのだ。人は見かけによらない。
「椎名が迷惑かけてたら悪いな」
表情にあまり変化はなく、声音も淡々としている。それでも、不思議と、佐奈田は渡貫を怖いとは思わなかった。
「迷惑なんかかけてないし! な、佐奈田?」
「うん。迷惑なんて、全然、」
「そうか。なら、仲良くしてやってくれ」
言われるまでもなく、それはもう、仲良くやっている。それこそ、意味深長に。誰にも言えないくらい。
なんせ、あの日以降、佐奈田と椎名は度々淫猥な逢瀬を繰り返しているのだ。
渡貫と別れた二人は、ごくごく自然に連れ立って、佐奈田の部屋で淫らな享楽にふけっていた。
とは言っても、佐奈田が椎名に施すばかりの、一方的なものではあるのだけれど。それでも十分、椎名の快楽に溺れる姿を見ているだけで、佐奈田も興奮を得ている。その証拠に、佐奈田の股間は、一度も触れられていないのにびんびんに張り詰めていた。
「は、椎名、くん。気持ちいい?」
「ん、気持ち、い……ぁ……佐奈田、」
「なに」
「佐奈田も、勃ってる」
陰囊を揉まれながら肉棒を扱かれてとろとろ先走りを溢す椎名が、とうとう佐奈田の欲情に気づいてしまった。咄嗟に脚を閉じた佐奈田に、椎名は潤んだ瞳を怪訝そうにする。
「なんで隠すの。俺も触りたい」
「だ、だめだよ」
「なんで?」
椎名は、本当に、心底、何故佐奈田が拒否するのかわからない様子だった。佐奈田は自分に触れているのに、どうして自分は佐奈田のを触ってはいけないのかと、理解できない顔だ。
「だ、だめ……だから……」
そうとしか、答えられなかった。
だって、気持ち悪いと思われたら?
佐奈田はゲイだけど、椎名は違う。無知な椎名が、初めて性的なことを教えてくれた佐奈田に懐いてしまっただけで。椎名自身は元々男が好きなわけではない。
『は? おまえ、男が好きなの? 気持ち悪い』
生まれて初めて、自分の性的指向を打ち明けた時の、友人だと思っていた男の歪んだ顔がよみがえる。
『気持ち悪い』
そうだ、僕って、気持ち悪いんだ。
「ごめんなさい」
尻を引きずって、後退っていた。椎名が快感を得た証拠に分泌された液体に濡れた指先で、床を引っ掻く。
「ごめんなさい」
「なんで謝んの?」
「ごめんなさい」
こんなこと、していいわけがなかった。
触れていいわけがなかった。
こんな、こんな邪な気持ちを、きみに向けていいわけがなかった。
「ごめんなさい」
僕、気持ち悪くて、ごめんなさい。
「俺、佐奈田に謝られるようなこと、されてないよ」
うつむく佐奈田の頭に、そっと、椎名の手が乗せられた。そのまま、優しい乱暴さで、くしゃくしゃに撫で回される。
「でも、佐奈田が許されたいなら、俺が許してあげる」
許されていいわけがない。
佐奈田は、この男の無知に、つけこんだのだ。
「ごめんなさい」
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