不良グループの元総長に懐かれた

音成さん

文字の大きさ
5 / 6

不良グループの元総長に懐かれた05

しおりを挟む


「それでも俺のこと、気持ち悪い?」

気持ち悪くない。気持ち悪いわけがない。
必死に首を振る佐奈田に、椎名は優しく笑った。

「だろ? 同じように俺だって、佐奈田のこと、気持ち悪いなんて思わないよ」

だってさ、と椎名は佐奈田のほおを包むように両手を添え、ひたいを擦り合わせた。

「だって俺達、ただ人を好きになっただけじゃん」

滲んでいた視界が、一瞬鮮明になって、また滲む。何度も繰り返し、繰り返し。

泣く佐奈田を、椎名はぎゅっと抱きしめて横になった。

二人寄り添って、汗だくになりながら眠った。






起きたら順番にシャワーを浴びて、熱を冷ますために二人して下着一枚でブランチをとった。

「今日は何する?」

食後の片付けまで終え、今から着る服を物色している椎名が、振り返りもせずに軽く訊いてくる。その裸の背中に、佐奈田は、精一杯の勇気を振り絞った。

「触って、ほしい……」

すごい勢いで振り返った椎名が、猫目をぱちくりさせることで間を置いて、恐る恐るというように掠れた声で、

「……いいの?」
「嫌……かな」

途端に弱気になった佐奈田の手首を捕まえて、椎名は勢いよく立ち上がった。

「なわけないだろ」

両手を掴まれ、包み込むように握られる。そしてこつんと、ひたいが合わさった。

「触らせて、佐奈田」






唯一身につけていた下着さえも脱ぎ去って、ベッドの上、裸で向かい合う。見慣れた椎名のペニスに佐奈田が触れると、椎名も真剣な表情で佐奈田のものに触れた。しばらく、互いに無言で扱き合う。沈黙が支配する室内で、二人の荒い呼吸と先走りが立てる濡れた音がやけに響いた。

「佐奈田、気持ちいい?」
「ぅん、は……ぁ」
「ここ?」
「ん」
「こうしたら、気持ちいいよね?」
「ん、椎名くん、上手だね」
「ふふ……ぁ、ん……俺も、気持ちぃ……」

初めて他人に触れられたからだろうか。椎名の手だからか。好きな人の手だから。自分で触るよりもずっとずっと気持ちがいい。なにより、触ってほしいところを、椎名はよくわかっているようだった。何故だろうと考えて、そのことに気づいた時、佐奈田はこれまでにないほどの興奮を覚えた。

椎名の手付きは、佐奈田の模倣だ。
椎名は佐奈田に出会うまで、自慰のひとつもしたことがなかった。
そんな彼に、佐奈田がやり方を教えこんだ。


性的に無知だった椎名時臣を、佐奈田が自分のやり方に染めてしまったのだ。


それだけで、佐奈田は絶頂に至った。


「は、はは……イかせた……俺が、佐奈田を……は、やば……すげえ興奮する」

佐奈田の放ったもので濡れた手のひらをかざし、椎名が上ずった声で興奮を伝えてくる。潤んだ猫目が、陶酔に細まった。

「椎名、くん」
「佐奈田、」

呼び合って、引き寄せられるように唇を重ねた。初めてのキスだった。くっつけるだけで、離れる。何度も、繰り返し。啄んでは、見つめ合って、ひたいを擦り合わせて、キスをする。

「佐奈田…………? ーー佐奈田!?」

自身の口に指を含み、唾液を絡ませる佐奈田を不思議そうに見ていた椎名が、濡れた指の行く先を見届けて素っ頓狂な声をあげた。

「何してんの!?」

佐奈田が舐めた指を自身の後孔に埋めるのを、椎名は目を見張って凝視する。

「繋がりたいんだ」

一本、根元まで挿れてしまう。ぐっと押し広げるように指を曲げると、腰が跳ねた。

「んっ……! 男、同士は、ここを、使う」

椎名の喉が、ごきゅっと鳴った。

ベッドの下から使いかけのローションを取り出し、後孔を濡らす。滑りがよくなったそこを、さらに解していく。

「俺もやりたい」

佐奈田が受け入れる準備をするのに釘付けになっていた椎名が、欲情を隠さない濡れた瞳で佐奈田の許可を待っている。

「やっていい?」

正座した椎名の膝の上にとどめ置かれた両手が、佐奈田に触れるのを我慢して固く拳を握っている。ふと、椎名の言葉を思い出した。椎名は、佐奈田の同意なんて得なくても、力づくで押さえつけることができる。無理やり触れてしまうことができる。でもそれをしないのは、椎名が佐奈田のことをすごく好きで、すごくすごく大事にしたいと思ってくれているからだ。


なんて、愛おしいんだろう。


「うん、いいよ。人差し指、これで濡らして、挿れてみて……?」

たっぷりのローションを垂らした人差し指を、椎名がそっと恐る恐る佐奈田の中に侵入させる。ゆっくり根元まで埋め込むと、はぁ……と熱い息を吐き出した。

「あったかくて、柔らかい……」
「ぅん……動かして、みて」

椎名の人差し指が、爪の根元までじわじわと抜かれて、再び同じ速度で挿し込まれる。徐々にスムーズな抜き差しになって、時々、遊ぶように指が曲げられる。

「ん、もうちょい、手前……そこっ……あ……」

一番気持ちのいいところに当たりそうで当たらなくてもどかしく、腰が揺れる。

「ここ?」
「もうちょっと、上……ーーあ! そこ!」
「わかった、これだね。ここ」
「ん! そこっ……! あっ……く、」

快感のポイントを確実に指で押されて、びくびく腰が跳ねる。持ち上がった足先が、何度も空を掻いた。

「佐奈田って、男と、その……経験、あんの」

佐奈田の乱れように、ふとその可能性が過ぎったらしい。椎名はらしくもなく視線を泳がせて、耳まで真っ赤になって目を伏せた。嫉妬しているというよりは、恥ずかしがっている様子だ。一体何に照れているのかはわからないが、そんな椎名がなんだか無性にかわいかった。

「ないよ。気持ちいいとこ、全部、自分で見つけた」

猫目がまん丸になって、きゅうっと細まる。上気したほおが、ぐっと持ち上がった。

「なにそれ。めっちゃ興奮すんね」






もはや椎名の指が二本、佐奈田の指が一本の計三本が後孔にくわえられていた。たっぷりのローションで解されたそこは、椎名を受け入れたくて疼いている。

お互い汗だくで、いつの間にか佐奈田に覆いかぶさる体勢になっていた椎名から、ぼたぼたとしょっぱいしずくが降り注いだ。

「も、挿れて、いいよ」

興奮し過ぎて怖い顔になっている愛しい男へ、あなたを受け入れる準備ができたことを教えてやる。椎名はひたいの汗を拭って、佐奈田の腰に右手を添えると、左手でそり返る自身を支えた。照準を定めて、ひとつ、佐奈田の眉間に口づけをくれる。

「挿れる、ね」
「きて」

佐奈田は逆手にシーツを掴んで、痛みに備えた。
ゆっくりと、未踏の地に押し入られる。覚悟していたほどの苦痛はなかった。

「ぁ……あ、……あ……!」

じわじわ、じわじわと、踏み込んでくる。出すつもりのなかった声が、喉の奥から押し出された。汗で滑ったのか、腰を掴み直される。椎名は佐奈田を気遣って、何度も何度も優しいキスを顔中に贈ってくれた。

「はい……った」

やがて全てがおさまったことを知って、佐奈田の目尻に涙が浮かんだ。

「きつい? 佐奈田、大丈夫?」
「ん、だいじょ、ぶ。全部、入ってるの……?」
「手、貸して。ほら」
「入ってる……」

椎名に導かれて、接合部に触れる。今までさんざん握ってきた椎名のあの長大なペニスが、自身の尻におさまっているということに、なんだか感動を覚える。同時に、好きな人ととうとう繋がったのだという実感に、胸がいっぱいになった。

「泣かないで佐奈田」
「んー、んんん……好き……好き、椎名くん。好き……」
「うん。俺も好き。大好き」

何度も繰り返し、唇を合わせる。広い背中に両腕を回し、椎名からも抱き返されて。汗だくの胸を重ね、くっつけるだけのキスを飽きもせず反復する。

きっと椎名は、舌を入れるキスというものを、知らないのだろう。

性的なことに、本当に無知な男だから。

キスもセックスも、恋人同士がすること全て。これから椎名は、佐奈田のやり方に染まっていくのだ。
それはなんて、幸せなことだろう。



佐奈田って、なんでそんなにエッチなの?
エロ大先生じゃん。



ーーなんて。舌を絡めるキスを教えた佐奈田に、真っ赤になった椎名が大真面目にそんなことを言うなんて今はまだ思いもよらない佐奈田は、恋人を自分色に染める楽しみに幸福を噛みしめるのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは(山端のは)
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】 ※ムーンライトノベルズにも掲載しております

片思いしてた先輩が産業スパイだったので襲ってみた

雲丹はち
BL
ワンコ系後輩、大上くんはずっと尊敬していた先輩が実は産業スパイと分かって、オフィスで襲ってしまう。

そのモブは、私の愛しい唯一無二

ミクリ21
BL
アズエル・ミスティアはある日、前世の記憶を思い出した。 所謂、BLゲームのモブに転生していたのだ。 しかし、アズエルにはおかしなことに思い出した記憶が一つだけではなかった。 最初はモブだと信じきっていたのに、副会長セス・フェリクスに迫られ続けるアズエルの話。

【完結】いつだって二人きりがよかった

ひなごとり
BL
高校二年生の未雲(みくも)は、あることがきっかけで転校生の柊明(しゅうめい)と出会い行動を共にするようになる。夏休みの間は観光と称して二人で会っていたが、美形で愛想も良く成績優秀な柊明とは新学期が始まれば自ずと関係も薄くなるだろうと未雲は考えていた。 しかし、学校が始まってどれだけの生徒に話しかけられようと柊明は未雲を優先した。 いつか終わりが来るものだと自分に言い聞かせても、未雲はどんどん彼との関わりにのめり込んでいき、ついには後戻りできないところまで落ちていく。 同級生だった二人が互いに依存、執着してすれ違って、間違えたり葛藤したりしながらも時間をかけて成長していく話。 高校生編と大学生編があります。 完結しました! ※2025.10.28 改稿 ◇ ◇ ◇ ◇ お気に入りなど反応ありがとうございます。感想もいただけると嬉しいです! もしよろしければX(旧Twitter)のフォローお願いします!→@Mi144_kaf

ヤバい奴に好かれてます。

たいら
BL
主人公の野坂はある日、上司である久保田に呼び出された。その日から久保田による偏狭的な愛を一身に受ける日々が始まった。 他サイトにも掲載しています。

「イケメン滅びろ」って呪ったら

竜也りく
BL
うわー……。 廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。 「チッ、イケメン滅びろ」 つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。 「うわっ!?」 腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。 -------- 腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受 ※毎回2000文字程度 ※『小説家になろう』でも掲載しています

推しを眺めていたら推しが近づいてきた

かしあ
BL
同じ学部には爽やか王子と呼ばれる人がいる。その彼を見かけた時、好みすぎて一瞬で彼のファンになった男アイドルオタクの昴は毎日陰ながらその推しを眺める日々を送っていた。 そんなある日、推しの声と似ている怪しい人に昴は声をかけられる。 その人は誰かにストーカーされているから今日は君の家に泊めてほしいと言われ…。 これは執着溺愛攻めが腐女子の何気ないアドバイスにより始まった平凡ドルオタク捕獲計画である。 ※一応完結していますが、付き合った後の二人の話を連載する予定です。

前世で恋人だった騎士様の愛がこんなに重いなんて知りませんでした

よしゆき
BL
前世で恋人だった相手を現世で見つける。しかし前世では女だったが、男に生まれ変わってしまった。平凡な自分では釣り合わない。前世はただの思い出として、諦めようとするけれど……。

処理中です...