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おさそい
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「吉乃さん、じゃあこの納期でいい?先方さんへの確認事項、あるかな?」
書類をまとめて、尋ねる。
本日は弊社の大切なお取引相手、晦吉乃(つごもりよしの)さんの自宅で打ち合わせ。粗方内容を確認し合った後の、もうお決まりのような締め文言だけど、吉乃さんは手にした書類を見つめて、当然のように口を開く。
「そうだな……。納期は問題ないが……この部分は、私の管理権限がもう少し多いほうがいい。このままだと少々動きにくいからな」
「げっ。そこは出来たら今のキャパのままあっち側で請け負いたいって話なんだけど……」
「お前が交渉すれば多少融通が効くだろう?」
「や~、でも、ほら、そこはさ。お互いの譲り合いの部分じゃないかなぁ?ほら、お仕事はそういう、歩み寄った思いやりも必要……」
「……。」
無言で俺を見つめる吉乃さんの圧に、俺はもぉ~~~っ!と心の中だけで地団駄を踏む。吉乃さんはこういう人だ。仕事にも姿勢にもどえらいプライドと自信があって、自分の要求からは一切退きも譲りもしない。その態度に見合う仕事っぷりが評価されていて、俺が好きな部分でもあるんだけど、その尻拭いを誰がするのかって言えばもちろんこの人の担当をぜんぶ請け負ってる俺──東雲悟(しののめさとる)だ。
相手方のクライアントさんとギリギリの交渉をするのは大好きだし、吉乃さんのために動けるのだって大好き。でも、やっぱりこういう所を見ると吉乃さんって吉乃さんだなぁと実感して、思わず溜息も出てしまう。
まぁ……。この人は、俺が世界でいちばん大切に想ってる人だから。拒否する選択肢なんて、はじめからないんだけどね。
「──あ~!もぉ!はいはいっ!わかりました~!やります!やりますよっ。ちゃんと晦さんのご希望を通します!面倒なフォローはぜ~んぶこの担当東雲にお任せくださ~い!」
「なっ。ふ……ふざけた物言いをするな。別に、私は、お前を困らせたいわけじゃないんだぞ」
「わかってるよっ。吉乃さんが100パーのお仕事をするためでしょ。そのために俺が居るんだもんね」
「……頼んだぞ、悟」
「んっ。明後日までには返事するね。早速先方さんのとこ行ってこなきゃ。大忙し、東雲悟!」
そう言って、笑う。
なんだかんだ言って、吉乃さんの無茶振りを聞くのは昔から俺の楽しみのひとつでもあった。いつだって俺の能力を試すような真似をしてくる吉乃さんに、絶対負けるもんか、って思ってたから。意外と負けず嫌いなんだよね、俺!
「じゃあ、今度は週末ね。それまで仕事、お互い、頑張ろうねっ♡」
玄関で靴を履きながら、別れ際の挨拶をする。
そう、俺の担当であり大事な仕事相手である吉乃さんは、なんと俺の恋人でもある。晦吉乃さんは、どんなお相手とも楽しくセックスをしていた遊び人の俺をこんな一途で純情にしちゃった張本人なんだ。
週末は、また吉乃さんの家へ行ってずっとずっとセックスをする。ぐちゃぐちゃなイチャラブハメで、吉乃さんを愛しまくるって決めている。
そりゃもちろん仕事の時は吉乃さんを前にしたって、こうやってちゃんとビジネスモードになるし、するように努力する。けど、週末に、なんにも考えないで、かわいいかわいい吉乃さんを抱くことを、俺だって一週間の労働のご褒美にしてるんだから。
「さ、悟……っ!♡」
「ん? ──っ。」
少し、上ずった声。そんな声色で呼び止められて、俺は廊下へ振り返る。
すると。
すると──。
「ぅ゙……♡さ、さっきは、私の勝手で我儘を言って悪かった……ッ♡しゅ、週末……ッ♡私も、楽しみにっ、しているから……ッ♡♡♡」
俺の目の前で、吉乃さんは、ガリガリの細い身体を覆うゆるいカットソーを自分から片手でそっと持ち上げて、素肌の胸を曝す格好になっていた。誰でもない俺が丹念に開発して育て上げた、ぷっくり膨らむスケベな乳首を見せつけるように、さっきとはまるで違う、あまいあまい発情したメス顔で、俺をせつなそうに……見つめていた。
「っ……!♡」
吉乃さん的には、たぶん、これは、きっと、「ごめんね」って意味だろう。自分の都合で俺に無茶させてごめんね、って。そういう、意味。自分も……吉乃さん自身も……俺をちゃんと好きで。好きだから。迷惑掛けてごめんね。その代わりに自分も、仕事も頑張るからね……って……たぶん、そういう、それだけの、意味……のはず。
「ッ、っ──!♡♡♡」
でも、まぁ、そんなことされて、完全に恋人専用ばかちんぽ野郎になっちゃった俺が耐えられるはず、ない。週末まで我慢するはずのご褒美を目の前にぶら下げられて、いい子にしていられるはずもない。
だから。だから……っ。しょうがない。もう……しょうがないよね、これはッ!?♡♡♡
「よ、吉乃さん……っ!♡♡♡ああっ!♡もおおぉぉっ!!♡♡♡」
書類をまとめて、尋ねる。
本日は弊社の大切なお取引相手、晦吉乃(つごもりよしの)さんの自宅で打ち合わせ。粗方内容を確認し合った後の、もうお決まりのような締め文言だけど、吉乃さんは手にした書類を見つめて、当然のように口を開く。
「そうだな……。納期は問題ないが……この部分は、私の管理権限がもう少し多いほうがいい。このままだと少々動きにくいからな」
「げっ。そこは出来たら今のキャパのままあっち側で請け負いたいって話なんだけど……」
「お前が交渉すれば多少融通が効くだろう?」
「や~、でも、ほら、そこはさ。お互いの譲り合いの部分じゃないかなぁ?ほら、お仕事はそういう、歩み寄った思いやりも必要……」
「……。」
無言で俺を見つめる吉乃さんの圧に、俺はもぉ~~~っ!と心の中だけで地団駄を踏む。吉乃さんはこういう人だ。仕事にも姿勢にもどえらいプライドと自信があって、自分の要求からは一切退きも譲りもしない。その態度に見合う仕事っぷりが評価されていて、俺が好きな部分でもあるんだけど、その尻拭いを誰がするのかって言えばもちろんこの人の担当をぜんぶ請け負ってる俺──東雲悟(しののめさとる)だ。
相手方のクライアントさんとギリギリの交渉をするのは大好きだし、吉乃さんのために動けるのだって大好き。でも、やっぱりこういう所を見ると吉乃さんって吉乃さんだなぁと実感して、思わず溜息も出てしまう。
まぁ……。この人は、俺が世界でいちばん大切に想ってる人だから。拒否する選択肢なんて、はじめからないんだけどね。
「──あ~!もぉ!はいはいっ!わかりました~!やります!やりますよっ。ちゃんと晦さんのご希望を通します!面倒なフォローはぜ~んぶこの担当東雲にお任せくださ~い!」
「なっ。ふ……ふざけた物言いをするな。別に、私は、お前を困らせたいわけじゃないんだぞ」
「わかってるよっ。吉乃さんが100パーのお仕事をするためでしょ。そのために俺が居るんだもんね」
「……頼んだぞ、悟」
「んっ。明後日までには返事するね。早速先方さんのとこ行ってこなきゃ。大忙し、東雲悟!」
そう言って、笑う。
なんだかんだ言って、吉乃さんの無茶振りを聞くのは昔から俺の楽しみのひとつでもあった。いつだって俺の能力を試すような真似をしてくる吉乃さんに、絶対負けるもんか、って思ってたから。意外と負けず嫌いなんだよね、俺!
「じゃあ、今度は週末ね。それまで仕事、お互い、頑張ろうねっ♡」
玄関で靴を履きながら、別れ際の挨拶をする。
そう、俺の担当であり大事な仕事相手である吉乃さんは、なんと俺の恋人でもある。晦吉乃さんは、どんなお相手とも楽しくセックスをしていた遊び人の俺をこんな一途で純情にしちゃった張本人なんだ。
週末は、また吉乃さんの家へ行ってずっとずっとセックスをする。ぐちゃぐちゃなイチャラブハメで、吉乃さんを愛しまくるって決めている。
そりゃもちろん仕事の時は吉乃さんを前にしたって、こうやってちゃんとビジネスモードになるし、するように努力する。けど、週末に、なんにも考えないで、かわいいかわいい吉乃さんを抱くことを、俺だって一週間の労働のご褒美にしてるんだから。
「さ、悟……っ!♡」
「ん? ──っ。」
少し、上ずった声。そんな声色で呼び止められて、俺は廊下へ振り返る。
すると。
すると──。
「ぅ゙……♡さ、さっきは、私の勝手で我儘を言って悪かった……ッ♡しゅ、週末……ッ♡私も、楽しみにっ、しているから……ッ♡♡♡」
俺の目の前で、吉乃さんは、ガリガリの細い身体を覆うゆるいカットソーを自分から片手でそっと持ち上げて、素肌の胸を曝す格好になっていた。誰でもない俺が丹念に開発して育て上げた、ぷっくり膨らむスケベな乳首を見せつけるように、さっきとはまるで違う、あまいあまい発情したメス顔で、俺をせつなそうに……見つめていた。
「っ……!♡」
吉乃さん的には、たぶん、これは、きっと、「ごめんね」って意味だろう。自分の都合で俺に無茶させてごめんね、って。そういう、意味。自分も……吉乃さん自身も……俺をちゃんと好きで。好きだから。迷惑掛けてごめんね。その代わりに自分も、仕事も頑張るからね……って……たぶん、そういう、それだけの、意味……のはず。
「ッ、っ──!♡♡♡」
でも、まぁ、そんなことされて、完全に恋人専用ばかちんぽ野郎になっちゃった俺が耐えられるはず、ない。週末まで我慢するはずのご褒美を目の前にぶら下げられて、いい子にしていられるはずもない。
だから。だから……っ。しょうがない。もう……しょうがないよね、これはッ!?♡♡♡
「よ、吉乃さん……っ!♡♡♡ああっ!♡もおおぉぉっ!!♡♡♡」
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