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3巻
3-4
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時間は少し遡り、前日の夕方。
王国を出発したシンたちは馬車に揺られつつ、互いの手札を確認し合っていた。何ができて何ができないのか確認しておかないと、いざというときの判断に遅れが出てしまうからだ。
確認するのはメインとなる職とランク、そして魔術の有無だ。これでおおよその戦い方とレベルがわかる。
初対面の相手にレベルや切り札を教えることには危険もあるので、何かしら隠している可能性はあるが。
「拙者は見ての通り侍の職に就いている。冒険者ランクはAだ。多少は魔術も使えるが、こちらはあまり当てにしないでもらいたい」
最初に情報を出したのはガイエン。やはりAランクの冒険者だったようだ。
武器自体は職に関係なく装備できる。なので「見ての通り」と言われても、着物を着ていない今の状態では、分析がなければ誰にもわからないだろう。
侍は前衛職で、魔術に対する職業ボーナスはないので、当てにするなというのも当然である。
まともな攻撃魔術を期待できるのは、職業ボーナスがつきやすい後衛職が一般的だ。
「私は拳闘士。ランクはE。素早さを上げる補助魔術なら少し使える」
次いで口を開いたのはツバキ。レベルでいえばDランク相当だが、これはまだギルドに入って日が浅いかららしい。ちなみにもうすぐDランクとのこと。
「私は一応錬金術師なんだけど、弓と短剣も使えま……使えるわ。冒険者にはなったばかりでランクはG。あと水と風の魔術アーツと簡単な回復ができるから、必要になったら声をかけてくだ……かけて」
初対面ということもあって、丁寧語で話しそうになるティエラ。月の祠でシンと会ったときとは大違いだ。
格上に対しても普段通りの言葉遣いなのは、変な気を使わないようにと、ガイエンが最初に提案したからだ。そこは命を預け合う相手。特に異論もなかったので現在に至る。
レベルやランクの低さも気にしているのだろうが、回復ができるというのは心強いと、ガイエンとツバキは委縮気味なティエラを励ました。
実際、戦闘中に回復薬を飲むというのはなかなか難しい。人数が多ければ話は別だが、そんな大勢で戦うような事態は、危険なモンスターを狩るときしかほとんどない。
少数で戦うことが日常な冒険者にとって、魔術による回復ができる味方がいるかいないかでは、生存率が段違いなのだ。
「俺はガイエンと同じ侍だ。ランクはE。多少だけど火と雷の魔術が使える。で、こっちがユズハ。これでも立派なモンスターだ」
シンは自身のことを告げるとともに、ティエラも含め、護衛の仕事は初めてだと伝えるのも忘れない。経験があるかないかも、いざというときの動きに差が出る要因となるからだ。
今回は聞かれなかったが、レベルを答えなければならないときは、低く伝えることにしている。
うっかり200超えだと話すと、一体何をしていたのかと驚かれるからだ。シンの若さを考えると、さすがに異常すぎる。
ティエラとは口裏を合わせることにしていた。
もちろん、事情を知るセリカにも口止め済みだ。
ユズハについては調教師として契約済みということを話し、危険はないと伝える。
「ほう、侍でありながら魔術も使うか。深くは聞かんが並々ならぬ修練を積んできたようだな。モンスターになつかれるというのも珍しい」
「まあそんなとこだ。とはいえ、魔導士レベルを期待されても困るからな。牽制や不意打ち程度に考えといてくれ。ちなみにユズハは意外と強いぜ?」
「くぅ!」
本気なら牽制どころか瞬殺できるが、そこはEランクらしく控え目に。前衛で魔術が使えるだけで十分すごいので、ガイエンたちもそこまでは期待するはずもない。
「あなたはヒノモト出身?」
「違うが、なんでそう思うんだ?」
「侍はヒノモト出身者がほとんど。ガイエン以外の侍に会ったのは初めて」
ツバキの質問に首をかしげたが、理由を聞いて納得する。シンも分析や聞き耳スキルで情報収集していたが、侍職に就いている人物はほとんど見かけなかった。ツバキの言う通り、相当珍しいのだろう。
ちなみにまったく見なかったわけではない。初めてギルドに向かう際に、太刀を佩いたドラグニルを見た――実はその人物がガイエンなわけだが。
「普通は戦士か騎士。あとは特化職。侍を目指してる人は変人が多い」
「変人!? 馬鹿な……壁から遊撃までこなす優良職なのに……」
基本となる戦法は、速度で翻弄しつつ重い一撃を繰り出すヒット&アウェイだが、武者鎧を装備すれば壁役としても通用するのが侍だ。
そんな、ゲーム時代は世代を問わず人気のあった職も、この世界では扱いが違うらしい。
「前提条件として、騎士と狂戦士の職を修めなきゃならないとか、意味がわからない」
「ああ……なるほどそこか」
理由を聞いてまたも納得してしまうシン。
ゲームの仕様上、侍になるには騎士と狂戦士の2つの職を経由しなければならなかったのだが、それはこの世界でも同じらしい。
片や守備に重きをおく騎士、片や攻撃に重きをおく狂戦士。相反する職を修めることで、万能に近い戦い方が身に付くというのが設定上の理由だ。
だからこその侍の使いやすさであり、高い補正なのだが、どうやら理解に苦しむらしい。
「わからなくもないが、ハッキリ言うけど強いぜ?」
「そこは同意する。でもやっぱり変」
ガイエンが口を挟む。
「やはり、文化の違いなのだろう。天変地異によって出来た島国であるヒノモトには、当時侍や忍といった職に就いていた者たちが集まったギルドの拠点がいくつかあったらしい。その者たちが中心となって国を作ったのだ。それゆえヒノモトで戦いに身をおく者は、侍に対する憧れが強い。珍しがられるのは、国土も各大陸の国と比べてもかなり狭く、わざわざ寄りつく者は少なかったからだろう。拙者自身、島を出てからいろいろと戸惑うことが多かった」
ガイエンの言うギルドは、現在の冒険者ギルドとは違うとのこと。話を聞くに、ゲーム時代のものらしい。
島国に侍と聞けば、できすぎているような気もしなくはない。
「ちなみにその元になったギルドの名前ってなんなんだ?」
「ふむ、一般に知られているのは花鳥風月、魔刃血風録、黒巫女神社だ」
「へ、へぇ、そうなのか」
シンはなるほどと、言葉に出さずに納得する。
ガイエンが口にしたギルドは、和風な名前が示す通り侍や忍、巫女といった和装を好む者たちによって結成されていた。それぞれ順番に侍、忍、巫女の所属数が最も多いギルドで、勢力は拮抗していた。ギルドハウスが城だったり、神社だったりするのは言うまでもなく、異様なほど凝り性なプレイヤーが多かった。
ギルドハウスを守る軍隊として、サポートキャラクターだけで結成された部隊もあったので、プレイヤーがいなくなってもモンスターを撃退できたのだろう。
これらが手を組めば小国くらい治められるだろうとシンは思った。
「他にも小さなギルドがいくつかあったらしいが、あまり知られてはおらんな」
「よくわかったよ。ありがとな」
ゲーム時代のギルドが元になった国があるというのは知らなかった。もしかすると、意外と多いのかもしれない。
†
いろいろと情報交換をしながら馬車に揺られること数日。
特にモンスターに襲われることもなく一行は順調に進んでいた。馬車を引いているのが馬の魔獣であるグリムホースなので、通常の2倍以上の速度で進んでいる。
実はこのグリムホース、シンが初めてベイルリヒトを訪れた際、城門で見かけた個体である。ゲーム時代はナックのようにサブ職を調教師にした商人が、よく馬車を引かせていた。
当番を決めて周囲を警戒するシンたち4人のうち、御者もできる者はナックと交代しながら旅を続けている。
シンの感知範囲内に敵影が映ったのは、ちょうどナックが御者をしているときだった。
「何か近づいてくる。早いな」
するとナックが振り返った。
「なに? 詳しく教えろ」
「正面から12匹。数と速度からみてたぶんウルフ系だと思うが」
詳細は丸わかりなのだが、あまり正確に伝えすぎるのも問題なので、あくまで憶測と伝えておく。
「それだけわかりゃ十分よ。おうお前ら! 仕事だ!」
話を聞くと、すぐにナックが大声を上げた。
元冒険者と言うだけあって腹の底にまで響く。もし寝ている者がいたとしても、飛び起きるだろう声量だった。ただ、言葉遣いが商人と言うより山賊のようだが。
声がかかったときには、すでにガイエンとツバキは用意を済ませていた。ティエラも弓を握って、矢筒の位置を確かめている。
どうやらガイエンも気配を察知したようだ。
「恐らくシンの言う通りウルフ系だろう。最後尾2匹の動きがないのが気になるが、まずは10匹の相手をするしかあるまい」
「わしも同意見だ。馬車を引いてるのがグリムホースだとわかってて近づいてんなら、少なくともただの獣じゃないな」
ガイエンとナックが意見を交わすのを聞きながら、シンは近づいてくるモンスターの詳細を見る。
モンスター名はジャグウルフ。通常の狼より1回り大きな体躯を持ち、非常に好戦的なモンスターだ。移動速度はただの狼の比ではない。
シンたちに向かってくるのは10匹。レベルは平均100前後で、1匹だけ120。この1匹が恐らく群れのリーダーだ。
動きのない2匹はそれぞれレベルが10にも満たない。危険はないだろうと放置しておく。
10匹のうち、3匹が先行。続いて2匹ずつ左右に分かれ木々の中に散り、リーダーを含む3匹が先頭を追う形で迫ってくる。
今馬車が走っているのは、左右を森に挟まれた街道だ。森を隠れ蓑に奇襲をかけるつもりらしい。
ガイエンも迫ってくる敵の位置を把握しているようで、シンが助言するまでもなく早々と配置を決めていく。
「左右に分かれたか。拙者が前方を抑える。シンは右、ツバキは左。ティエラは馬車の上から援護。ナック殿は馬のそばに。調教師が傍にいれば暴れ出すことはないと考えるがいかがか?」
「この状況ではそれしかあるまいて。頼むぞ!!」
ナックは比較的道幅の広い場所で馬車を止め、各自が配置に就いた。ユズハは念のためグリムホースのそばにいてもらう。
「来るぞ!!」
ガイエンの掛け声を合図にしたように、先行していた3匹が動きを見せる。中央の1匹が正面から飛びかかり、残りの2匹が地を這うように左右から迫る。
対するガイエンは右手に大太刀、左手に鞘を持ち、正面から突撃を敢行した。
「ぬうん!!」
ジャグウルフに迫るガイエンの体を水色のオーラが覆い、飛びかかってきた1匹を弾き飛ばす。
一呼吸遅れて2匹のジャグウルフが迫るが、ガイエンは慌てることもなく、右の1匹の顎から上を大太刀の一閃で斬り飛ばし、左の1匹は口内に鞘を突き入れて沈黙させた。
弾き飛ばされたジャグウルフは、仲間が瞬く間に倒されたのを見て、攻めあぐねている。
「む、いささか軽いな」
手ごたえの軽さに眉をひそめるが、敵が弱いならそれに越したことはないと、ガイエンは近づいてくるリーダーたちに意識を集中する。
「さすがだな。さて、こっちも来るぞ」
「左側が早い。上から見える?」
森を盾に迫っていたジャグウルフを警戒していたシンの警告に、ツバキが答え、ティエラに尋ねる。
「捉えたわ!」
ティエラはすでにもっとも足の速い1匹に狙いを定めていたようで、森の中に矢を放った。
矢が吸い込まれた先でギャンッという鳴き声が響き、シンのマップに表示されたマーカーが1つ消える。
「仕留めた?」
ティエラがほっとしたように呟くと、ツバキが感心したように一言。
「やる」
レベル差を考えると一撃で倒せるとは思っていなかったシンだが、予想に反してジャグウルフは力尽きたようだ。急所に当たったのかもしれない。
左側で残った1匹は思わぬ反撃を受けたからか、リーダーのいる正面に戻っていった。
「よし、ツバキはガイエンの応援に行ってくれ。こっちは俺とティエラで十分だ」
「わかった」
シンの指示に従いツバキが動き始めたところで、今度は右側の森からジャグウルフが飛び出してきた。
爪の一撃をかわされたジャグウルフはそのままシンの横を通り抜け、ナックの元へ向かおうとする。シンへの攻撃は牽制だったようだ。
しかし、その程度でシンを出し抜けるわけがない。
シンはジャグウルフの爪をかわすと同時に体を捻り、飛燕の速度で刀を抜く。砕けた数打の代わりに腰に提げていたのは、月の祠で打ったロングソードを刀に打ち直したものだ。
魔剣並の性能を持った刀による一撃は、白い斬線を宙に残して、ジョグウルフの首を両断する。
勢いのまま死体が転がる間際、身体能力に比例するように上昇した動体視力と加速した思考が、シンに敵を観察するだけの時間を与えた。そして覚える違和感。
その正体を考えながらも、別のジャグウルフが近づいていることをシンは察知していた。
ジャグウルフに視線を向けたときには、すでに牙が眼前に迫っていたが、シンの剣速なら十分に迎撃できる距離と速度。
だが、シンの刀が閃くより先に、ジャグウルフの額に矢が突き刺さる。
致命傷を負い、飛びかかった勢いのまま突っ込んでくるジャグウルフをスウェーでかわし、シンはティエラのいる方へ向き直る。
「ナイスフォロー!」
「ナイスじゃないわよ、まったく」
矢を射たティエラはホッとしたように息を吐き、次の矢をつがえる。
咄嗟の狙撃にしてはかなりのものだ。どう見ても冒険者になりたての動きではない。
やはりシュニーにしごかれたのは、伊達ではないらしかった。
「あなたなら問題なく切り捨ててたんでしょうけど、それはEランクの動きじゃないわよ……ほら、さっさと向こうの援護に行く!」
「それを言うとツバキも似たようなもんだが。まあいい、了解だ」
前方に目を向ければ、ガイエンとツバキがリーダーを含めた5匹と戦っている。
ツバキは例の素早さを上げる魔術を使っているのか、体の周りに薄らと白いオーラを纏い、ジャグウルフを翻弄していた。
「ハッ!!」
その動きについていけなかった1匹が、拳の直撃を受ける。
ツバキの鈍い輝きを放つ手甲が胴体にめりこみ、くの字型に折れ曲がったまま木に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
あの細腕のどこにそんな力があるのかと、疑いたくなるような光景だ。
ツバキのレベルは133。ジャグウルフと比べれば30近く高いが、それにしても吹き飛びすぎな気がしてならない。
「やはり妙だ。こやつら動きが鈍い」
「同感。手応えが軽い」
敵を地面に転がしながらガイエンが呟くと、ツバキも同意する。どうやら皆、違和感を抱いていたようだ。
シンが合流し、3対3で対峙する形になったが、リーダーも含め、まったく背中を見せるそぶりを見せない。普通ならとうに逃げているはずだ。
「なあ、こいつらよく見るとかなり痩せてないか?」
シンがふと気づいたことを言う。よく見ればリーダーですら、薄らと骨が浮いて見えた。
「どうやら魔素の影響を受けたモンスターのようだな。グリムホースを狙ったのは肉と魔素、両方を得るためか。先ほどから感じていた手応えのなさ、なるほど得心がいった」
警戒を緩めずに、納得したと頷くガイエン。
モンスターには魔素から生まれたタイプと、野生の獣が魔素の影響でモンスター化したタイプがいる。前者は魔素だけでも生きていけるが後者は違う。魔素だけでなく獣と同じように肉を食らわなければ肉体を保てないのだ。
人や家畜を襲うモンスターは大半が後者のタイプで、前者はより魔素の濃いほうへ移動するため、あまり人目にはつかないと、道すがらガイエンが説明してくれた。シンとしても、モンスターが発生するゲーム上の設定まで事細かに覚えているわけではないので参考になる。
「後がないから決死の覚悟」
淡々とツバキは言う。この世界ではモンスターといえども、常に強者ではいられない。弱肉強食の掟の前では、世に生きるものすべてが平等だ。そこにモンスターと人との区切りはない。
シンたちの依頼はあくまで護衛。逃げ去るというのならわざわざ追ったりはしないが、襲ってくるなら返り討ちにせざるを得ない。
ジャグウルフに残された選択肢は、飢えて死ぬか、戦って死ぬかの2択だ。
「命がけなのは拙者たちも同じだ。シン、手加減は無用だぞ」
「わかってるよ」
短く返事をしたシンも、生きているモンスターと戦うのは初めてではない。ただ、今回のような決死の相手は初めてだった。
(前のやつらとは覚悟が違う。違いなんてそれだけなのに、やりにくいったらないな)
強者への挑戦ではない、戦い方を学ぶ狩りでもない。
ただ、生きるために戦う。
それだけのことで、受けるプレッシャーは段違いだ。
(しかも、後ろの2匹は子どもか)
少し離れたところから少しずつ近づいてくる2匹は、まだ子犬ほどの大きさしかなかった。
ここで刃が鈍りそうになるのは日本人だからだろうか。
「拙者がリーダーを斬る。ツバキが右、シンは左だ」
「わかった」
「了解」
シン、ツバキがそれぞれ答えた。
「では……ゆくぞ!!」
互いの呼吸を読んでタイミングを合わせる。
まず仕掛けるのはツバキとシン。
ツバキは速度上昇のオーラを持続させたまま踏み込んだ。ジャグウルフからすれば、瞬く間に間合いを詰められたように感じただろう。
反射的に身をすくませた相手に、ツバキは容赦なく拳を振り下ろす。
何かの割れる音とともにジャグウルフが地面に叩きつけられ、数回痙攣して動きを止めた。
シンもまた刀を上段に構えたまま、ツバキ以上の速度で1歩前に出る。踏み込みと同時に振り下ろされる刀。ジャグウルフは動かない――否、動けない。
空中に残った斬線が消えると同時に、胴体が斜めにずれた。
ジャグウルフの視線は数瞬前までシンがいたところを向いている。恐らく斬られたことにすら気づかなかったのだろう。
「あとよろしく」
「うむ、承知」
シンと言葉を交わし、ガイエンが前に出る。リーダーが隙をついてシンやツバキを攻撃しなかったのは、ガイエンが威圧していたからだ。
もはや勝ち目はない。それでもジャグウルフのリーダーは引かなかった。低い唸り声を上げて四肢に力を込めていく。
まっすぐな生きるという意思。いけないと思っていても、シンはその姿に畏敬の念を覚えてしまう。
リーダーが力を込めたのはほんの数秒。まさに最後の力を振り絞ってガイエンに突進する。その速度は、さすが群れの主と言わせるだけの迫力があった。
「見事」
称賛を口にしたのはガイエン。大太刀を構え、向かってくるリーダーと向き合う。
一直線に迫るリーダーに対し、ガイエンは静かに動いた。摺り足に似た足運びが、ガイエンの姿を揺らめかせる。
交差は一瞬。次の瞬間には、大太刀を振り下ろしたガイエンと、真っ二つになったリーダーの姿があった。
刃についた血を払いながら、ガイエンは道の先――小さなジャグウルフに視線を向けていた。
王国を出発したシンたちは馬車に揺られつつ、互いの手札を確認し合っていた。何ができて何ができないのか確認しておかないと、いざというときの判断に遅れが出てしまうからだ。
確認するのはメインとなる職とランク、そして魔術の有無だ。これでおおよその戦い方とレベルがわかる。
初対面の相手にレベルや切り札を教えることには危険もあるので、何かしら隠している可能性はあるが。
「拙者は見ての通り侍の職に就いている。冒険者ランクはAだ。多少は魔術も使えるが、こちらはあまり当てにしないでもらいたい」
最初に情報を出したのはガイエン。やはりAランクの冒険者だったようだ。
武器自体は職に関係なく装備できる。なので「見ての通り」と言われても、着物を着ていない今の状態では、分析がなければ誰にもわからないだろう。
侍は前衛職で、魔術に対する職業ボーナスはないので、当てにするなというのも当然である。
まともな攻撃魔術を期待できるのは、職業ボーナスがつきやすい後衛職が一般的だ。
「私は拳闘士。ランクはE。素早さを上げる補助魔術なら少し使える」
次いで口を開いたのはツバキ。レベルでいえばDランク相当だが、これはまだギルドに入って日が浅いかららしい。ちなみにもうすぐDランクとのこと。
「私は一応錬金術師なんだけど、弓と短剣も使えま……使えるわ。冒険者にはなったばかりでランクはG。あと水と風の魔術アーツと簡単な回復ができるから、必要になったら声をかけてくだ……かけて」
初対面ということもあって、丁寧語で話しそうになるティエラ。月の祠でシンと会ったときとは大違いだ。
格上に対しても普段通りの言葉遣いなのは、変な気を使わないようにと、ガイエンが最初に提案したからだ。そこは命を預け合う相手。特に異論もなかったので現在に至る。
レベルやランクの低さも気にしているのだろうが、回復ができるというのは心強いと、ガイエンとツバキは委縮気味なティエラを励ました。
実際、戦闘中に回復薬を飲むというのはなかなか難しい。人数が多ければ話は別だが、そんな大勢で戦うような事態は、危険なモンスターを狩るときしかほとんどない。
少数で戦うことが日常な冒険者にとって、魔術による回復ができる味方がいるかいないかでは、生存率が段違いなのだ。
「俺はガイエンと同じ侍だ。ランクはE。多少だけど火と雷の魔術が使える。で、こっちがユズハ。これでも立派なモンスターだ」
シンは自身のことを告げるとともに、ティエラも含め、護衛の仕事は初めてだと伝えるのも忘れない。経験があるかないかも、いざというときの動きに差が出る要因となるからだ。
今回は聞かれなかったが、レベルを答えなければならないときは、低く伝えることにしている。
うっかり200超えだと話すと、一体何をしていたのかと驚かれるからだ。シンの若さを考えると、さすがに異常すぎる。
ティエラとは口裏を合わせることにしていた。
もちろん、事情を知るセリカにも口止め済みだ。
ユズハについては調教師として契約済みということを話し、危険はないと伝える。
「ほう、侍でありながら魔術も使うか。深くは聞かんが並々ならぬ修練を積んできたようだな。モンスターになつかれるというのも珍しい」
「まあそんなとこだ。とはいえ、魔導士レベルを期待されても困るからな。牽制や不意打ち程度に考えといてくれ。ちなみにユズハは意外と強いぜ?」
「くぅ!」
本気なら牽制どころか瞬殺できるが、そこはEランクらしく控え目に。前衛で魔術が使えるだけで十分すごいので、ガイエンたちもそこまでは期待するはずもない。
「あなたはヒノモト出身?」
「違うが、なんでそう思うんだ?」
「侍はヒノモト出身者がほとんど。ガイエン以外の侍に会ったのは初めて」
ツバキの質問に首をかしげたが、理由を聞いて納得する。シンも分析や聞き耳スキルで情報収集していたが、侍職に就いている人物はほとんど見かけなかった。ツバキの言う通り、相当珍しいのだろう。
ちなみにまったく見なかったわけではない。初めてギルドに向かう際に、太刀を佩いたドラグニルを見た――実はその人物がガイエンなわけだが。
「普通は戦士か騎士。あとは特化職。侍を目指してる人は変人が多い」
「変人!? 馬鹿な……壁から遊撃までこなす優良職なのに……」
基本となる戦法は、速度で翻弄しつつ重い一撃を繰り出すヒット&アウェイだが、武者鎧を装備すれば壁役としても通用するのが侍だ。
そんな、ゲーム時代は世代を問わず人気のあった職も、この世界では扱いが違うらしい。
「前提条件として、騎士と狂戦士の職を修めなきゃならないとか、意味がわからない」
「ああ……なるほどそこか」
理由を聞いてまたも納得してしまうシン。
ゲームの仕様上、侍になるには騎士と狂戦士の2つの職を経由しなければならなかったのだが、それはこの世界でも同じらしい。
片や守備に重きをおく騎士、片や攻撃に重きをおく狂戦士。相反する職を修めることで、万能に近い戦い方が身に付くというのが設定上の理由だ。
だからこその侍の使いやすさであり、高い補正なのだが、どうやら理解に苦しむらしい。
「わからなくもないが、ハッキリ言うけど強いぜ?」
「そこは同意する。でもやっぱり変」
ガイエンが口を挟む。
「やはり、文化の違いなのだろう。天変地異によって出来た島国であるヒノモトには、当時侍や忍といった職に就いていた者たちが集まったギルドの拠点がいくつかあったらしい。その者たちが中心となって国を作ったのだ。それゆえヒノモトで戦いに身をおく者は、侍に対する憧れが強い。珍しがられるのは、国土も各大陸の国と比べてもかなり狭く、わざわざ寄りつく者は少なかったからだろう。拙者自身、島を出てからいろいろと戸惑うことが多かった」
ガイエンの言うギルドは、現在の冒険者ギルドとは違うとのこと。話を聞くに、ゲーム時代のものらしい。
島国に侍と聞けば、できすぎているような気もしなくはない。
「ちなみにその元になったギルドの名前ってなんなんだ?」
「ふむ、一般に知られているのは花鳥風月、魔刃血風録、黒巫女神社だ」
「へ、へぇ、そうなのか」
シンはなるほどと、言葉に出さずに納得する。
ガイエンが口にしたギルドは、和風な名前が示す通り侍や忍、巫女といった和装を好む者たちによって結成されていた。それぞれ順番に侍、忍、巫女の所属数が最も多いギルドで、勢力は拮抗していた。ギルドハウスが城だったり、神社だったりするのは言うまでもなく、異様なほど凝り性なプレイヤーが多かった。
ギルドハウスを守る軍隊として、サポートキャラクターだけで結成された部隊もあったので、プレイヤーがいなくなってもモンスターを撃退できたのだろう。
これらが手を組めば小国くらい治められるだろうとシンは思った。
「他にも小さなギルドがいくつかあったらしいが、あまり知られてはおらんな」
「よくわかったよ。ありがとな」
ゲーム時代のギルドが元になった国があるというのは知らなかった。もしかすると、意外と多いのかもしれない。
†
いろいろと情報交換をしながら馬車に揺られること数日。
特にモンスターに襲われることもなく一行は順調に進んでいた。馬車を引いているのが馬の魔獣であるグリムホースなので、通常の2倍以上の速度で進んでいる。
実はこのグリムホース、シンが初めてベイルリヒトを訪れた際、城門で見かけた個体である。ゲーム時代はナックのようにサブ職を調教師にした商人が、よく馬車を引かせていた。
当番を決めて周囲を警戒するシンたち4人のうち、御者もできる者はナックと交代しながら旅を続けている。
シンの感知範囲内に敵影が映ったのは、ちょうどナックが御者をしているときだった。
「何か近づいてくる。早いな」
するとナックが振り返った。
「なに? 詳しく教えろ」
「正面から12匹。数と速度からみてたぶんウルフ系だと思うが」
詳細は丸わかりなのだが、あまり正確に伝えすぎるのも問題なので、あくまで憶測と伝えておく。
「それだけわかりゃ十分よ。おうお前ら! 仕事だ!」
話を聞くと、すぐにナックが大声を上げた。
元冒険者と言うだけあって腹の底にまで響く。もし寝ている者がいたとしても、飛び起きるだろう声量だった。ただ、言葉遣いが商人と言うより山賊のようだが。
声がかかったときには、すでにガイエンとツバキは用意を済ませていた。ティエラも弓を握って、矢筒の位置を確かめている。
どうやらガイエンも気配を察知したようだ。
「恐らくシンの言う通りウルフ系だろう。最後尾2匹の動きがないのが気になるが、まずは10匹の相手をするしかあるまい」
「わしも同意見だ。馬車を引いてるのがグリムホースだとわかってて近づいてんなら、少なくともただの獣じゃないな」
ガイエンとナックが意見を交わすのを聞きながら、シンは近づいてくるモンスターの詳細を見る。
モンスター名はジャグウルフ。通常の狼より1回り大きな体躯を持ち、非常に好戦的なモンスターだ。移動速度はただの狼の比ではない。
シンたちに向かってくるのは10匹。レベルは平均100前後で、1匹だけ120。この1匹が恐らく群れのリーダーだ。
動きのない2匹はそれぞれレベルが10にも満たない。危険はないだろうと放置しておく。
10匹のうち、3匹が先行。続いて2匹ずつ左右に分かれ木々の中に散り、リーダーを含む3匹が先頭を追う形で迫ってくる。
今馬車が走っているのは、左右を森に挟まれた街道だ。森を隠れ蓑に奇襲をかけるつもりらしい。
ガイエンも迫ってくる敵の位置を把握しているようで、シンが助言するまでもなく早々と配置を決めていく。
「左右に分かれたか。拙者が前方を抑える。シンは右、ツバキは左。ティエラは馬車の上から援護。ナック殿は馬のそばに。調教師が傍にいれば暴れ出すことはないと考えるがいかがか?」
「この状況ではそれしかあるまいて。頼むぞ!!」
ナックは比較的道幅の広い場所で馬車を止め、各自が配置に就いた。ユズハは念のためグリムホースのそばにいてもらう。
「来るぞ!!」
ガイエンの掛け声を合図にしたように、先行していた3匹が動きを見せる。中央の1匹が正面から飛びかかり、残りの2匹が地を這うように左右から迫る。
対するガイエンは右手に大太刀、左手に鞘を持ち、正面から突撃を敢行した。
「ぬうん!!」
ジャグウルフに迫るガイエンの体を水色のオーラが覆い、飛びかかってきた1匹を弾き飛ばす。
一呼吸遅れて2匹のジャグウルフが迫るが、ガイエンは慌てることもなく、右の1匹の顎から上を大太刀の一閃で斬り飛ばし、左の1匹は口内に鞘を突き入れて沈黙させた。
弾き飛ばされたジャグウルフは、仲間が瞬く間に倒されたのを見て、攻めあぐねている。
「む、いささか軽いな」
手ごたえの軽さに眉をひそめるが、敵が弱いならそれに越したことはないと、ガイエンは近づいてくるリーダーたちに意識を集中する。
「さすがだな。さて、こっちも来るぞ」
「左側が早い。上から見える?」
森を盾に迫っていたジャグウルフを警戒していたシンの警告に、ツバキが答え、ティエラに尋ねる。
「捉えたわ!」
ティエラはすでにもっとも足の速い1匹に狙いを定めていたようで、森の中に矢を放った。
矢が吸い込まれた先でギャンッという鳴き声が響き、シンのマップに表示されたマーカーが1つ消える。
「仕留めた?」
ティエラがほっとしたように呟くと、ツバキが感心したように一言。
「やる」
レベル差を考えると一撃で倒せるとは思っていなかったシンだが、予想に反してジャグウルフは力尽きたようだ。急所に当たったのかもしれない。
左側で残った1匹は思わぬ反撃を受けたからか、リーダーのいる正面に戻っていった。
「よし、ツバキはガイエンの応援に行ってくれ。こっちは俺とティエラで十分だ」
「わかった」
シンの指示に従いツバキが動き始めたところで、今度は右側の森からジャグウルフが飛び出してきた。
爪の一撃をかわされたジャグウルフはそのままシンの横を通り抜け、ナックの元へ向かおうとする。シンへの攻撃は牽制だったようだ。
しかし、その程度でシンを出し抜けるわけがない。
シンはジャグウルフの爪をかわすと同時に体を捻り、飛燕の速度で刀を抜く。砕けた数打の代わりに腰に提げていたのは、月の祠で打ったロングソードを刀に打ち直したものだ。
魔剣並の性能を持った刀による一撃は、白い斬線を宙に残して、ジョグウルフの首を両断する。
勢いのまま死体が転がる間際、身体能力に比例するように上昇した動体視力と加速した思考が、シンに敵を観察するだけの時間を与えた。そして覚える違和感。
その正体を考えながらも、別のジャグウルフが近づいていることをシンは察知していた。
ジャグウルフに視線を向けたときには、すでに牙が眼前に迫っていたが、シンの剣速なら十分に迎撃できる距離と速度。
だが、シンの刀が閃くより先に、ジャグウルフの額に矢が突き刺さる。
致命傷を負い、飛びかかった勢いのまま突っ込んでくるジャグウルフをスウェーでかわし、シンはティエラのいる方へ向き直る。
「ナイスフォロー!」
「ナイスじゃないわよ、まったく」
矢を射たティエラはホッとしたように息を吐き、次の矢をつがえる。
咄嗟の狙撃にしてはかなりのものだ。どう見ても冒険者になりたての動きではない。
やはりシュニーにしごかれたのは、伊達ではないらしかった。
「あなたなら問題なく切り捨ててたんでしょうけど、それはEランクの動きじゃないわよ……ほら、さっさと向こうの援護に行く!」
「それを言うとツバキも似たようなもんだが。まあいい、了解だ」
前方に目を向ければ、ガイエンとツバキがリーダーを含めた5匹と戦っている。
ツバキは例の素早さを上げる魔術を使っているのか、体の周りに薄らと白いオーラを纏い、ジャグウルフを翻弄していた。
「ハッ!!」
その動きについていけなかった1匹が、拳の直撃を受ける。
ツバキの鈍い輝きを放つ手甲が胴体にめりこみ、くの字型に折れ曲がったまま木に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
あの細腕のどこにそんな力があるのかと、疑いたくなるような光景だ。
ツバキのレベルは133。ジャグウルフと比べれば30近く高いが、それにしても吹き飛びすぎな気がしてならない。
「やはり妙だ。こやつら動きが鈍い」
「同感。手応えが軽い」
敵を地面に転がしながらガイエンが呟くと、ツバキも同意する。どうやら皆、違和感を抱いていたようだ。
シンが合流し、3対3で対峙する形になったが、リーダーも含め、まったく背中を見せるそぶりを見せない。普通ならとうに逃げているはずだ。
「なあ、こいつらよく見るとかなり痩せてないか?」
シンがふと気づいたことを言う。よく見ればリーダーですら、薄らと骨が浮いて見えた。
「どうやら魔素の影響を受けたモンスターのようだな。グリムホースを狙ったのは肉と魔素、両方を得るためか。先ほどから感じていた手応えのなさ、なるほど得心がいった」
警戒を緩めずに、納得したと頷くガイエン。
モンスターには魔素から生まれたタイプと、野生の獣が魔素の影響でモンスター化したタイプがいる。前者は魔素だけでも生きていけるが後者は違う。魔素だけでなく獣と同じように肉を食らわなければ肉体を保てないのだ。
人や家畜を襲うモンスターは大半が後者のタイプで、前者はより魔素の濃いほうへ移動するため、あまり人目にはつかないと、道すがらガイエンが説明してくれた。シンとしても、モンスターが発生するゲーム上の設定まで事細かに覚えているわけではないので参考になる。
「後がないから決死の覚悟」
淡々とツバキは言う。この世界ではモンスターといえども、常に強者ではいられない。弱肉強食の掟の前では、世に生きるものすべてが平等だ。そこにモンスターと人との区切りはない。
シンたちの依頼はあくまで護衛。逃げ去るというのならわざわざ追ったりはしないが、襲ってくるなら返り討ちにせざるを得ない。
ジャグウルフに残された選択肢は、飢えて死ぬか、戦って死ぬかの2択だ。
「命がけなのは拙者たちも同じだ。シン、手加減は無用だぞ」
「わかってるよ」
短く返事をしたシンも、生きているモンスターと戦うのは初めてではない。ただ、今回のような決死の相手は初めてだった。
(前のやつらとは覚悟が違う。違いなんてそれだけなのに、やりにくいったらないな)
強者への挑戦ではない、戦い方を学ぶ狩りでもない。
ただ、生きるために戦う。
それだけのことで、受けるプレッシャーは段違いだ。
(しかも、後ろの2匹は子どもか)
少し離れたところから少しずつ近づいてくる2匹は、まだ子犬ほどの大きさしかなかった。
ここで刃が鈍りそうになるのは日本人だからだろうか。
「拙者がリーダーを斬る。ツバキが右、シンは左だ」
「わかった」
「了解」
シン、ツバキがそれぞれ答えた。
「では……ゆくぞ!!」
互いの呼吸を読んでタイミングを合わせる。
まず仕掛けるのはツバキとシン。
ツバキは速度上昇のオーラを持続させたまま踏み込んだ。ジャグウルフからすれば、瞬く間に間合いを詰められたように感じただろう。
反射的に身をすくませた相手に、ツバキは容赦なく拳を振り下ろす。
何かの割れる音とともにジャグウルフが地面に叩きつけられ、数回痙攣して動きを止めた。
シンもまた刀を上段に構えたまま、ツバキ以上の速度で1歩前に出る。踏み込みと同時に振り下ろされる刀。ジャグウルフは動かない――否、動けない。
空中に残った斬線が消えると同時に、胴体が斜めにずれた。
ジャグウルフの視線は数瞬前までシンがいたところを向いている。恐らく斬られたことにすら気づかなかったのだろう。
「あとよろしく」
「うむ、承知」
シンと言葉を交わし、ガイエンが前に出る。リーダーが隙をついてシンやツバキを攻撃しなかったのは、ガイエンが威圧していたからだ。
もはや勝ち目はない。それでもジャグウルフのリーダーは引かなかった。低い唸り声を上げて四肢に力を込めていく。
まっすぐな生きるという意思。いけないと思っていても、シンはその姿に畏敬の念を覚えてしまう。
リーダーが力を込めたのはほんの数秒。まさに最後の力を振り絞ってガイエンに突進する。その速度は、さすが群れの主と言わせるだけの迫力があった。
「見事」
称賛を口にしたのはガイエン。大太刀を構え、向かってくるリーダーと向き合う。
一直線に迫るリーダーに対し、ガイエンは静かに動いた。摺り足に似た足運びが、ガイエンの姿を揺らめかせる。
交差は一瞬。次の瞬間には、大太刀を振り下ろしたガイエンと、真っ二つになったリーダーの姿があった。
刃についた血を払いながら、ガイエンは道の先――小さなジャグウルフに視線を向けていた。
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