THE NEW GATE

風波しのぎ

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5巻

5-6

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「そうね、こっちに来たのは私の方が早かったみたいで、再会した時はびっくりしたわ」
「それはこっちのセリフだ」

 微笑を浮かべながらホーリーと話しているシャドゥからは、以前の鬼気迫ききせまる姿は想像できない。

「ギルドの依頼で派遣された村で、私がこの人を見つけたの。村を襲うモンスターの群れに、1人で突っ込んでいった人がいるって聞いて、慌てて追ったのよ」
「村でいろいろと世話になっていたんでな。モンスターも数以外に特筆するところはなかったから、やってしまおうと」
「やってしまおうと、じゃないわよ。村の人は大慌てだったんだから」
「まあまあ、ホーリーさん。シャドゥさんも勝算なしで行ったわけじゃないんですし」

 当時のことを思い出したホーリーが怒り出すのを、シンがなだめた。
 シャドゥは暗殺者の上位職であるしのび。その上ステータスは、装備の補正も含め、平均で600以上ある。シンのようなでたらめな改造をしているわけではないが、それでも伝説レジェンド級の上位装備を所持していたことを加えれば、多少強いモンスターが出たところで瞬殺しゅんさつだ。

「はぁ、それで急いで探したんだけど、見つけたと思ったら、モンスターの死体の山とそれをカード化してるシャドゥがいたのよ。他の冒険者の人たちは目が点になってたわ。彼らがAランクだったから、選定者って説明でどうにか納得してくれたけど」
「その後はホーリーと一緒にあちこち回ってな。途中で黄金商会から連絡を受けて、ここでひびねこさんと再会した」

 元プレイヤーを捜索していたベレットの使者が、連絡を取ってきたらしい。シャドゥとホーリーはゲームだったころもシンと交流があったので、接触しても危険はないと判断したようだ。シャドゥだけだったら、控えたかもしれない。

「それからまたいろいろあって、ここに店を出すことになったの」

 2人とも料理スキルがⅦあるだけあって、繁盛はんじょうしているようだ。ひびねこの店と提携して、互いの店で使えるクーポン券を発行したりもしているらしい。

「そういえば、ホーリーさんがこっちに来てからどのくらいってるんです? さっき差があるって言ってましたけど」

 シンは、ふと気になったことを口にした。シャドゥとホーリーの死には、およそ1ヶ月ほどのタイムラグがある。それがこちらに来た時に、どう影響しているのか。

「私が来てから、今年でちょうど30年ね」
「俺はホーリーがこっちに来てから、10年後くらいに現れたようだ」
「そうなると、1月の差で10年くらい、ですかね?」
「でも、私と死亡時間があまり変わらない人が、私より10年以上前に来てたりもするのよ。これはかなり個人差があるみたい。中には100年以上前に来ていて、もう寿命じゅみょうで亡くなった人もいるわ」

 2人の話からおおよその数値を割り出してみたシンだが、その仮説はホーリーによって否定された。ちなみにひびねこは、こちらに来て40年ほどになるらしい。

「……シンは、マリノちゃんがこっちに来てると思う?」
「ホーリー!」

 とがめようとするシャドゥをシンは制した。

「大丈夫ですよ……正直に言うと、いてほしい気持ちと、いてほしくない気持ちが半々ってところです。確かにもう一度会いたいですけど、そうすると元の世界に戻ろうって気が完全になくなりそうで」

 シンが現実世界に残してきたものは多い。
 育ててくれた両親、仲の良い兄妹、気の置けない友人と挙げ出せばきりがない。天涯孤独てんがいこどくでも、すさまじく不幸だったわけでもないのだ。
 いくらゲームそっくりの「現実」に来たからといって、それらを簡単に切り捨てられるほどシンにとって現実世界は軽くない。ゆえに、帰還と残留ざんりゅう天秤てんびんにかけたとき、少なくとも今はまだ帰還に傾いていた。
 デスデームで散っていった者たちから託されたメッセージを遺族に伝えなければならないし、現実に帰還したら果たさなければならない約束もある。
 ただ、この世界で過ごすにつれ、シンの中の天秤はゆっくりと、だが確実にその傾きを小さくしているのも事実だ。
 この世界には魅力みりょくが多い。他者と隔絶かくぜつした圧倒的な力、好意を寄せてくれるシュニーという存在、いまだ忠誠を見せてくれるかつての六天配下たち。
 命の危険はあるとしても、シンにとっては大した脅威きょういではない。大きく変貌へんぼうげた世界を自由気ままに旅をしてみたいという欲求も、ないと言ったら嘘になる。
 加えて死に別れたプレイヤーとの再会が可能なら――この世界で過ごせば過ごすほど、しがらみは増えていく。
 もしマリノがいるとわかったら、天秤は大きく動くだろう。

「まあ、そもそも本当に帰れるのかって問題もあるんですけどね」
「そうねぇ。でもこっちに来れたんだし、何か方法はあるんじゃない?」
「やはり気になるのはダンジョンの門だな。くぐったわけではないようだが、もしもう1度同じようなことになれば、向こうに戻れる可能性は0ではないだろう」

 シンの言葉に真面目まじめに返す2人。話の内容から、シンが元の世界に帰ることに賛成なようだ。

「地脈が関わってるかもしれないって話はあるんですけど、まだまだ情報が足りなくて。これからあちこち回ってみるつもりです」
「できることがあれば力になろう」
「遠慮しないでね」

 穏やかな笑みを浮かべるシャドゥとホーリー。
 その後は、2人の昔話や巡ってきた国のことなどを聞いて、シンは店を後にした。


「シンは行ったようだな」
「ああ、再会した時もそうだったが、すっかり以前のシンに戻っていた」

 シンが店を出た後、グラスを片付けていたひびねこの言葉に、シャドゥがどこか安堵あんどした様子で答えた。

「そんなに、ひどかったの?」
「ああ、俺が言うのもなんだが、人が変わってしまったとしか言いようがないほどだったよ。人を斬ることに、何の躊躇ちゅうちょもしていなかったからな」
「吾輩も話は聞いていたが……そんなことがあったようにはとても見えんな」

 3人の中でシャドゥだけが、荒れていたシンを知っている。ひびねことホーリーには、シャドゥの言うような殺人に躊躇ためらいを覚えないシンが想像できなかった。

「正直に言えば、俺も驚いている。俺が最後に見たときのシンは、あんな顔で笑うことなど絶対にしなかった」

 力を振るわなければ、今のシンはどこにでもいる普通の青年に見える。
 ひびねこやホーリーの自身への呼び方に突っ込み、シャドゥとホーリーの子供がいると聞けば驚く。そんな当たり前の反応が返ってくる。
 しかし、かつてはそんな当たり前が、なかったのだ。
 シャドゥが最後に見たシンは、まったくと言っていいほど表情が変わらなかった。PKを斬っても、美味い料理を食べても、目の前で協力していたプレイヤーが死んでも。
 まるで流れ作業のようにPKを探し、斬る。そのための機械だと言われたら、納得してしまいかねない危うさがあったのだ。
 きっかけひとつで人はここまで変わるのか、シャドゥをして、そう思わせるだけの変化だった。

「何があったのかしらね」
「さあな、ただ、は確実にあったんだろう。あのシンをこちらに引き戻す何かが」

 3人には想像することしかできない。ただ、それが良いもの、もしくは良いことだったことだけはわかる。それが、シンの愛した女性マリノと関わりがあったということも。

「……マリノちゃん、こっちに来てるかしら」
「どうだろうな。シンは、俺たちとは少々事情が違うように言ってたが」

 自分たちがこの世界に来た要因がゲームでの死以外にわからない2人には、結論の出ない問いだ。

「……もしマリにゃーがこっちにいなかったとしたら、2人はシンにどうしてほしい?」

 シャドゥたちに、短い手で器用にテーブルをきながらひびねこが問いかけた。

「帰るべきだろう」
「そうね、私もそう思うわ」

 何気ない問いかけに、2人はそろって答える。
 迷いのない返答に、ひびねこはテーブルを拭く手を止めた。今のところ店内には3人しかいないので、多少話をするくらいの余裕はある。

「ふむ、吾輩たちからすれば、戻れるなら戻るべきと考えるだろうな」
「急にどうしたんだ?」
「今はまだ、シンは向こうに戻るつもりだろう。しかし、こちらで長く過ごした時、果たしてその選択ができるだろうか」

 この世界に来たばかりで、さほど人付き合いもなかったころなら、迷いもなく戻ろうと思えただろう。
 だが、ひびねこ自身、すでにこの世界で40年以上過ごしている。もしシンと一緒に元の世界に帰れるとしても、もはやその選択はできそうになかった。

「吾輩のように戻ったところで老い先短いなら、ここで過ごす選択は悪くないだろう。だが、シンはまだ若い。いつ終わるともしれんこの世界に、残ってほしいとは思えんな」
「そうね。こっちに長くいると、戻ろうって気にならなくなっちゃうかもしれないし」
「しかし、俺たちと違ってシンは死んでいるわけではない。それに残してきたものがあるはずだろう?」
「でも、私たちと違ってシン君はこの世界じゃ最強と言っていい存在よ。しかもシュニーちゃんみたいな美人に好意を向けられて思いとどまるってこと、ないかしら?」

 ストレス社会と呼ばれる現代だ。誰にも縛られず、自由気ままに。
 現実世界で生きる者なら、誰しも心の中で考えてしまうだろう。いやなことを忘れて、好きなことをして生きていきたい、という願いを持っている者は多いだろう。

「この世界は、シンにとって実に都合がいい」

 ひびねこの言葉を、シャドゥとホーリーは否定できない。それは自分たちにも当てはまることだからだ。

「結局は、シンしだいか」
「そうね。個人的には親御さんを安心させてあげてほしいけど」
「周囲の期待を一身に背負っていたからな。マリにゃーがいなければ、どうなっていたか」

 その力ゆえに、デスゲーム開始時からシンが理不尽りふじんに様々なことを強要されていたことを知っている3人は、自分を押し殺していた当時のシンを思い出す。たまたまステータスが高かった、それだけの理由でゲーム攻略を押し付けられ、仕方がないと疲れた顔で笑っていたシンの姿を。
 全員が同じスタートラインから始めるのなら、違ったのだろう。しかし、当時はシン以外の上級プレイヤーは、よくてステータスが800を超え始めたというところ。シンとは200近いステータス差があった。
【THE NEW GATE】では200も能力差があっては、パーティを組んだところで足手まといにしかならない。ダメージ量、移動速度、防御力など、その差は歴然としていたし、もとよりそこまで到達していたプレイヤーの数も少なかった。
 複数のパーティで連携したり、フィールドでモンスターの大軍と戦うような場合なら話は別だが、ダンジョン、とくにラストダンジョンは大勢のプレイヤーが展開するだけの広さなどなかった。
 加えて死に戻りができない状況では、他のプレイヤーをシンレベルまで強化するには、1年どころではない時間がかかる。早くログアウトしたい者たちは、よってたかってシンにゲームの早期攻略を求めたのである。

「いざという時は、私たちが力になれるといいんだけど」
「もどかしいな」

 孤独にデスゲームを戦い抜いた若者に何かしてやれることはないか。
 大人たちは頭を悩ませるのだった。


         †


「さて、さすがにそろそろ宿に戻るか」

 にゃんダーランドを出たシンは、そうつぶやいて宿に向かった。
 シャドゥたちと話をして多少気は紛れているが、シュニーと顔を合わせたらどうすればよいかはまだわからない。
 どこかもやもやしたままレッドテイルの扉を開け、鍵を受け取り、誰に会うこともなく部屋に着く。
 しばらくすると部屋の扉がノックされた。鍵をもらう際に水を頼んでおいたのだ。
 女性から水の入った桶を受け取る。それなりに大きいので重量があるはずだが、女性は軽々と運んでいた。
 水を温める魔術を使ってタオルを浸し、体をぬぐう。トイレは普及しつつあるが、風呂はまだ難しいようだ。技術的なことがわからないシンは、早く作ってくれと願うしかない。

「……寝よう」

 とくにやることもなかったので、寝ることにした。シュニーとの一件が尾を引いているのか、何かしようという気にはなれなかったのである。
 布団にもぐり込む。意外なほどすんなりと、シンの意識は眠りへと落ちていった。




 明けて翌日。
 シンが身支度みじたくを整えていると、扉がノックされた。外にいたのはティエラ、変装したシュニー、ユズハ、カゲロウの2人と2匹。朝食を一緒に取ろうということらしい。
 ユズハを頭上に乗せてシンは階下に降りる。さりげなくシュニーの方を見るが、とくに変わった様子は見られない。

「今日はどうするの?」

 朝食を取りながら、ティエラが尋ねる。
 すでに『氾濫』が発生していることは広く告知されているようで、住民の避難も始まっている。冒険者は手の足りないところに手伝い要員として駆り出されるのだが、あまり仕事はないようだ。

「私は領主の城へ行きます。シンも連れて行くといってありますから、今日は一緒に来てください」
「あ、ああ、わかった」

 昨日は伝えるのを忘れていたのか。シンも、今日の予定など考えてもいなかったので承諾する。
 態度の変わらないシュニーを見ていると、いろいろ気にしている自分がおかしいのかと思えてしまうシンだった。こういう時は男の方が気にしがちなんだろうか? と、どうでもいいことを考えてしまう。

「じゃあ、私は訓練所に行ってますね。私じゃ前線には出れませんけど、何があるかわかりませんし」
「そうですね。それがいいでしょう。時間があれば、また組み手をしましょうか」
「……はい、よろしくお願いします」

 ティエラの微妙に間のある返事を聞きながら、シンは心の中で南無なむと唱えた。
 一緒に旅をしていた時も2人が訓練しているのを見ていたのだが、シュニーの訓練しごきはシンから見てもなかなかにハードなものだった。シンの改造馬車&特製寝具がなければ、ティエラは疲労が溜まって動けなかったに違いないというレベルだ。素直に返事ができなかったのも仕方がないだろう。
 カゲロウを従えているので前線でも十分戦えるのだが、本人の戦闘力が上がるわけではないので訓練は意外と有効だ。レベルにばかり固執こしつしていては、本当に強くはなれない。
 食事を終えると鍵を預けて出発する。
 シュニーとティエラが人の目を集めるのはいつものことだったが、『氾濫』でモンスターが迫っているとあって、さすがに声をかけてくるような手合いはいなかった。
 途中でギルドに行くティエラ、カゲロウと別れ、シン、シュニー、ユズハの2人と1匹は城へ足を向ける。

「今日は何をするんだ?」
「派遣されている選定者の方々との顔合わせと、連携についての話し合いですね。実際にどの程度連携が取れるかも試します」

 ひびねこたちとはもう顔合わせが済んでいるが、派遣組と呼ばれる者たちとはまだ会っていない。おそらく、リオンの紹介もあるのだろう。
 いくら選定者が個々の能力に優れているとはいえ、ぶっつけ本番で連携を取れなどという無茶はないようだ。本来は都市の命運がかかっているのだから、当然といえば当然だろう。

「確か、ガイルとリージュ、だっけ?」
「ご存知でしたか」
「ギルドで聞いた。ガイルの魔術スキルで攻撃するって言ってたから、そっちが魔導士か?」
「はい。フルネームはガイル・サージェット。炎術系の魔術を得意とする魔導士です。もう1人がリージュ・ラトライア。こちらはリオン様と同じ魔剣士ですね」

 ガイルがロード、リージュがドラグニルらしい。シュニーはどちらとも何度か共闘する機会があったらしく、人柄についてもよく知っているようだった。
 戦闘スタイルや能力について聞いているうちに、領主の城に着いた。
 シュニーは直前で変装を解き、本来の姿で門へと歩いていく。突然の変化だが、魔術スキルによって誰も違和感を抱くことはなかった。

「シュニー・ライザー様! よくぞお越しくださいました!」

 近づいてくるのが誰なのか気づいた門番が、完璧な敬礼を見せる。その視線はシュニーに釘付くぎづけで、シンがいることに気づいていない気配すらあった。

「あの、中に入りたいんですが……」
「っ!! 失礼しました! 許可証の提示をお願いします!」

 シンが声をかけると慌てたように門番が言った。どうやら本当に気づいていなかったようだ。
 張り切りすぎている門番に、シュニーが許可証を渡す。事前にもらっていたらしい。
 許可証を確認した門番が開いてくれた扉を通って、2人と1匹は城の中に入る。
 門番の1人が案内役として嬉々とした表情で先導してくれた。
 ただ、残って仕事を続ける門番たちの絶望したような顔を見るに、この役を巡って壮絶そうぜつな戦いが繰り広げられたことは間違いない。

(めちゃくちゃ見られてるな)

 城内を歩けば、必然的に多くの人とすれ違う。そして、そのほとんどが足を止めてシュニーに見惚みとれるか、礼をしてくるのだ。
 時間が経つにつれてその人数が増えていく気がするのは、シンの気のせいではないだろう。

(シュニーお姉ちゃん、にんき?)
(ああ、強くて美人で上位種族だ。そりゃ人気も出るわな)

 ユズハの念話に答えながら、シンは自分に向けられる視線に鬱陶うっとうしさを感じていた。
 すれ違う人は、大抵シュニーを見た後、シンとユズハに気づく。そして、およそ9割の人が「シュニー殿の隣を歩いているあいつは誰だ!?」という表情を浮かべるのだ。
 敵意を向けてくる手合いが少ないのが救いだが、面倒なことには変わりない。
 シンはシュニーの人気をあなどっていたことを後悔していた。
 誰一人声をかけてこないのは、シュニーがここに来た理由を皆が理解しているからか。お連れはどなたかという話にならずに済むので、そこだけシンは安堵していた。
 しばらくして、ある部屋の前で案内役の門番が立ち止まる。どうやらここが顔合わせの場所らしい。


「ライザー様。わざわざお越しいただき、感謝いたします」
「お気になさらず。遅れてしまいましたか?」
「いえ、まだ来ておられない方もいますので」

 2人が部屋に入ると、テーブルに着いて話をしていた人々の中からもっとも質の良い服を着た人物が立ち上がり、感謝の言葉を告げてきた。
 タウロ・ヤクスフェル。
 髪を短くり込んだ目力の強い人物で、歳は40代半ばといったところ。たるみのない体はその性格を反映しているように感じられる。

「シン殿はリオン様と共に我が都市の防衛に参加してくださるとか、実に心強く思っております」
「あ、いえ、お気になさらず」

 シュニーと軽く挨拶をかわすと、タウロはすかさずシンにも声をかけてきた。言葉遣いは丁寧だが、シンという人物を見透みすかそうと鋭い視線を向けてくるあたり、さすがはバルメルの領主といったところか。

「話し合いを始めるまで、まだしばし時間があります。飲み物を用意させますので、どうぞおくつろぎください」

 そう言って席を外すタウロ。派遣組とリオンはまだ来ていない。
 先に来ていたひびねこたちと話しながらしばらく待つと、タウロとリオンの他、男性2人と女性1人が入ってきた。

「では、皆さまの顔合わせも兼ねた会議を始めたいと思います。初対面の方もおりますので、軽く自己紹介とまいりましょう」

 全員が着席したのを見計らって、タウロが切り出した。
 飛び入りであるシンとリオンから始まり、順に自己紹介が進む。

「俺はガイル・サージェット。魔導士だ。今回はライザー殿と共に初撃を担当することになる。よろしく頼む」

 ガイルは魔導士ということだったが、どちらかと言えば戦士と言われた方が納得のいく外見の男だった。少し長めの茶髪に黒眼のさわやか系。身長はシンと同じくらいだが、筋肉の量はガイルの方が多いだろう。ロードらしいが、見た目はヒューマンと変わらない。
 今日は連携訓練もあるからか、杖とマントも持ってきていた。

「あたしはリージュ・ラトライア。魔剣士をやってる。今回はリオン様と一緒にこいつのお守りだ。仲良くやろう」

 リージュはウェーブのかかった燃えるような赤髪と深紅しんくの瞳を持つ女性だった。戦士職ゆえか口調からあまり女性らしさは感じないが、170セメルはある身長と、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるプロポーションは十分魅力的だ。
 目元にわずかなうろこ模様が見える以外は、ドラグニルとしての特徴はない。以前出会ったシュバイドと違い、こちらは見た目が人に近いタイプのようだ。

「あれをこっちで着てるやつがいるとは」
「ん? どうかしたかい?」

 シンがつぶやいたのが聞こえたらしく、リージュが聞いてくる。

「ああ、いや、リージュさんが着ているのは魔術鎧なのかな、と」

 ガイルと同じく実戦用の装備を付けているリージュ。ただ、身につけているのが俗に言う、ビキニアーマーだった。見た目から、鎧としての機能が疑われる装備である。
 シンは当然、それがどういう装備なのかは知っている。
 正式名称は『竜玉の魔術鎧』で、ドラゴン系のモンスターから取れる宝玉を使った伝説レジェンド級中位の鎧だ。色が赤いのは、レッドドラゴンの宝玉を使っているからだろう。
 ダメージを受けた際に一定値までを無効化、それ以上はダメージを減少させる効果を持っていて、VITが500以上ないと装備できない。肌が露出ろしゅつしている部分にもダメージ減少効果はあるので、ステータスしだいではむき出しの腕で刃物を受け止める、というようなこともできた。
 ただ、性能は高いのだが、ゲーム時代はあまり人気のなかった装備でもある。VRMMOとなり、自分の体でプレイするのもあってか、女性であれを着ようと思う者はあまりいなかったのだ。

「おや、見惚れてたんじゃないのかい? 胸に視線を感じたんだけどねぇ」
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