THE NEW GATE

風波しのぎ

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5巻

5-14

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「ん? シンじゃないか。喫茶店に来るなんて珍しいな。それも女連れでとは」
「あー、まあそうですね。ええと、彼女は俺の恋人でマリノです」
「お久しぶりです」
「ふむ、2人とも久しぶりだ」

 微笑みながらシャドゥは言った。

「シャドゥさんは共通の知り合いだったのか」

 そんなシンにマリノが尋ねる。

「私はこの店を知っていたからだけど、シンはどうして?」
「シャドゥさんとはPvPのイベントで一緒になったんだよ。即席でパーティ組んで攻める側と守る側に分かれて戦うやつな。一部じゃリアル忍者って呼ばれてる愉快ゆかいな人だ」

 アバターの動きがおかしいと一部のプレイヤーの間で有名なのだ。システムによらないプレイヤー自身の操作能力が高いと評判のプレイヤーだった。

「愉快とはなんだ。ステータスアップに躍起やっきになっていた効率厨君」
「ぐはっ」

 シンはシンで、シャドゥとは違った意味で有名だった。

「あーあ、変な言い方するからよ」
「くっ、反論できない……」

 マリノの指摘してきにうなだれるシン。
 シンとシャドゥのやり取りを見て、ホーリーも声こそ出さなかったものの、笑いをこらえているようだった。

「さて、話は一旦終わりにして注文をしてくれないか。喫茶店に来て、何も頼まず居座るのは感心しないぞ」

 シンにを叩き込んだシャドゥがかす。入り口に立っているのも邪魔なだけなので、シンとマリノは飲み物と軽食のセットを注文して席に座った。

「なんていうか。ああいうのもいいわよね」
「なにがだ?」
「もう、察しが悪いわね。シャドゥさんとホーリーさんのことよ。ああやって2人でお店を切り盛りするって、なんだか素敵じゃない?」

 客から注文を受けるホーリーと、本物の店のように料理や飲み物を用意するシャドゥ。息の合った動きを見ながら、マリノは言う。
 その声音は、憧れを多分に含んでいた。

「まあ、あの人たちに限って言えばリアルの方も……ってマリノは知ってるのか? ホーリーさんたちのこと」
「もちろんよ。シンも知ってたのね」

 ネットでリアルの、それも自分以外のプレイヤーのことを無闇むやみに口にするのは御法度だ。念のためそれを確認したシンに、マリノは当然と返した。
 2人が言葉にせず確認し合ったのは、シャドゥとホーリーが現実世界でも夫婦だということ。
 ネット限定の架空の関係ではない。本物の、現実でも心を通わせた2人に、マリノは憧れを抱いているのだ。

「あの人たちのラブラブぶりを見てると、嫉妬よりも先に呆れがくるからなぁ」
「いいじゃない。せっかく出会えたんだもの。いつまでもその気持ちを持っていたいって考えるのは、当たり前のことよ」
「そりゃまあ、俺だって共感しないわけじゃないけどさ」

 人前でイチャラブされると、見ている方はげんなりしてしまうもんだよ。
 そんな感想を抱きながら、シンはあらためてメニューに目を向けた。


         †


 パーティを組んで、ダンジョンに行かないか。
 そんな誘いのメールをシンが受け取ったのは、『B&W』に行ってから4日後のことだった。
 唐突に来たメールに驚いたシンだが、日程に問題はなく断る理由はなかったので、「了解」と返事をする。

『じゃあメンバーは私とシンに、ひびねこさん、シャドゥさん、ホーリーさんの5人ね。シンの分の食事は私が用意しておくから』
『そりゃありがたい。で、俺からは装備を提供すればいいか?』
『えっと、そうしてもらえると助かる、かな』

 プレイヤー間で使える音声チャット。その機能を使ってルートやメンバーの確認をしていたシンの耳に、マリノのばつの悪そうな声が届く。
 行き先のダンジョンの情報を聞いたシンは、そこがマリノのゲーム上の分身、アバターのレベルをはるかに超えていることに気づいていた。
 現在のマリノのアバターは、やっと1回目の転生を終えたところ。転生ボーナスは低く、装備の質と現在のマリノのレベルを考えても、モンスターの適正レベルは300がいいところだ。
 だが、行き先に指定されているフィールドタイプのダンジョンは、モンスターのレベルが平均450となっている。マリノはダンジョン序盤じょばんにいるモンスター相手ですら即死してしまうレベルで、能力不足なのは明らかだった。
 シンはシャドゥの実力しか知らなかったが、確認したところひびねこやホーリーも問題ないとのことだった。つまり、マリノだけが完全にお荷物だ。一歩間違えれば、1人で死に戻りする可能性も決して低くない。

『だって、そんな高レベルのダンジョンだと思わなかったんだもん……』
『俺と一緒にいるから、上級プレイヤーだと思ったのかもな。いやでも、ひびねこさんやホーリーさんとはよく会ってたんだろ? そういう話はしなかったのか?』
『攻略の話とか、ほとんどしなかったから。ホーリーさんには、同じ女としての相談に乗ってもらってたし』
『なんと言うか、マリノらしいっていえば、マリノらしいな』

 アバターを向かい合わせて意味もなくだべるのも、MMOでは珍しいことではない。人によっては、それが楽しくてMMOをやっているということもあるくらいだ。

『まあいいか。知らない奴がいきなり同じことを言ってきたら怒るけど、マリノはそういうこと考えてないからな』
『む、なんだか馬鹿にされてる気がする』
『してないしてない。マリノのことだし、パワーレベリングなんかより重要なことがあるんじゃないか?』

 マリノの性格なら、自分は遠慮するか場所を変える相談をするところだ。シャドゥやホーリーなら、とくに気分を害することなく提案に乗ってくれるだろう。
 ひびねこはわからない。しかし話をしてみて、シンはひびねこにシャドゥやホーリーと同じ人柄の良さを感じていた。
 そんなシンとしては、わざわざマリノが高レベルのダンジョンに行こうと言い出したのだから、何か意味があるのだろうと考えざるを得ない。

『じつは、そのフィールドにすごく綺麗な景色が見える場所があるらしいの』

 マリノの話では、とても手の込んだグラフィックが見られる場所があるということだった。
 プレイヤーの見た画像を保存するスクリーンショットも掲示板にアップされていたらしいが、マリノは実際に見てみたいと思ったようだ。

『そういうことか。なるほど了解だ。それなら協力するのもやぶさかじゃない』

 チャットのアバターの顔に、にやりとした笑みを浮かべさせて、シンはマリノに了承の意思を返す。
 もとよりシンは、マリノがパワーレベリングを望んでいるとは思っていない。能力アップや武器強化に意識の大半が向いているシンとは、プレイスタイルが違うのだ。
 もちろん、シンもマリノのような楽しみ方は嫌いではない。


「じゃあさっそく装備の選定に入ろう。マリノのステータスで装備できるやつとなると、【毒蝮どくまむしの皮マント】に【腐乱ふらんの短剣】、あとは【黒百合ブーツ】ってとこだな」

 チャットを終えてアロライドで合流したマリノに、シンはさっそく倉庫から選んで持ってきた装備を渡す。

「せ、性能は良いのに、変に露出多いし名前も怖い! こんな装備つけてる人見たことないよ!」

 名前だけで、一癖も二癖もありそうな印象がぬぐえない装備の数々。微妙な顔をしながらもそれらを身につけたマリノは、そのデザインに悲鳴を上げた。

「はっはっは。冗談だ」

 わざとらしく笑いながら、シンはマリノからアイテムを回収する。
 シンの取り出したアイテムは、確かにマリノの調教師テイマーとしての能力を底上げした。しかし、その姿はどう見ても悪の魔術士や、モンスターを酷使こくしする極悪調教師にしか見えなかったのだ。

「で、こっちが本命の装備な」
「もう……いじわる」

 拗ねるような顔つきで睨んでくるマリノ。シンはといえば、そんなマリノを見てニヤニヤと、否、ニヨニヨと笑っていた。

「むー!」
「ちょ! 悪かった、悪かったって!」

 シンの表情にムッとしたマリノが、新しく受け取った装備でシンを攻撃する。ダメージなどないのだが、シンはまいったと早々に負けを認めた。

「そういうの禁止」
「いやほら、好きな子に意地悪をしたくなる真理というやつでさ」
「……誤魔化されないから」
「ちょっと動揺しましたね、マリノさん?」

 シンは少しだけ、マリノの動きがぎこちなくなったのを見逃さなかった。

「もう! やっぱり禁止、きーんーしー!」

 からかうシンと照れながら拳を振るマリノ。
 ポカポカという擬音が聞こえてきそうな2人のやり取りに、周囲から生温かい視線が送られていた。


 マリノの装備が決まってからさらに1日。シンたちは山と周辺の森が一体になっている、フィールドタイプのダンジョン『明星あけぼし霊峰れいほう』にやってきていた。
 メンバーはシンとマリノ、ひびねこ、シャドゥ、ホーリーの5人だ。
 マリノの足元には、彼女の相棒である子狼型モンスター『ミニルフ』がお座り状態で待機している。
 名前はポチタマ。子犬のような外見ながら、性格は猫っぽいということで付けたとマリノは言っていた。

「じゃあ行きますか」
「がんばります!」

 腰から試作品の刀【玄月げんげつ】を抜いて、シンが言う。レベル的に不安のあるマリノは、足手まといにならないようにと気合を入れていた。

「山頂からの景色が楽しみね」
「こういう冒険も悪くない」
「腕が鳴るというものだ」

 ホーリーやシャドゥたちも、各々おのおのの武器を構えて準備完了だ。
 シャドゥは【宵闇よいやみの忍装束】を着て、まさに忍者という装い。腰には【宵闇の短剣】を差している。
 隣に立つホーリーはふんわりした素材の【霊布のローブ】の中から、【灯火ともしびの短杖】を覗かせていた。
 ひびねこはバーテンダーのような装いの【キャッツ・オブ・ワンダー】に身を包み、腕には鉤爪かぎづめのついた籠手【ミスト・ハウンド】を装備している。
 どれも差はあれども、神話ミソロジー級の中位または下位に分類される武器、防具だ。シンに至っては、武器の【玄月】をはじめとして古代エンシェント級に属する装備に身を包んでいる。
 そのため、特殊ユニーク級の装備であるマリノが少し浮いていた。

「……やっぱり、もうちょっとレベル上げに時間を使った方がいいのかなぁ」
「やりたいようにやればいいじゃん。俺はこだわるけど、そのせいでマリノみたいな楽しみ方はできてないし」
「そうね。シン君みたいな楽しみ方も、マリノちゃんみたいな楽しみ方も正解なのよ。一応言っておくけど、リアルをおろそかにしちゃダメよ?」
「わかってますよ。というか、ゲームにはまって引きこもったりしたら親にブッ飛ばされますし」

 シンは一時期成績が落ちた時に、ネットを解約されそうになったことがある。そのことを思い出し、やれやれという表情になった。

「わからなくはないな。それが親心というものだ」
「だな。何事もやり過ぎはよくない」
「゛う……耳が痛いです」

 廃人の領域にどっぷりと踏み込んでいるシンとしては、ひびねことシャドゥに反論できない。
 親に怒られてからは、とにかく効率重視でプレイしてきた。それが変な形でシンの強さを後押ししているのは、皮肉な話である。


「さて、話をするのはここまでだ。敵が来たぞ」
「おっと、そうみたいですね」

 ひびねこの一言で、一同は周囲に注意を向けた。
 今シンたちが歩いている道は、鬱蒼うっそうとした森に囲まれている。薄暗い森の中は視界が悪く、木々の向こう側を確認することはできない。
 通常なら奇襲を警戒して、とてものんきに話などしていられない状況。しかし、斥候せっこう職でもある忍をメインジョブにしているシャドゥをはじめ、単独での戦闘もこなすひびねこに、万能型と言っていいシンまでいる。
 そんな3人が警戒をしているのだ。姿が見えない程度のことで、そうやすやすと敵の接近など許さない。

「右から3体、左から2体だ」

 そう告げてから、シャドゥは姿を消した。忍の戦い方は奇襲が基本だ。姿を現したまま速度で翻弄ほんろうする戦い方もあるが、シャドゥは奇襲の方が得意だった。
 それ以外にも、レベル的にはシンとひびねこだけでも十分なので、追加のモンスターが来たときのために周囲の警戒も兼ねている。

「了解です。ひびねこさん、右は俺が」
「うむ、では吾輩は左を受け持とう」

 近づいてくる反応を意識しながら、シンは言う。シンたちが武器を構えている背後で、ホーリーは魔術スキルを即時発動できるように準備していた。

「ポチタマ、頼むわよ」
「わふっ!」

 出番はないとわかっているが、マリノもむちを構え、相棒のポチタマに警戒させる。
 敵が接近していることはすでに察知しているようで、ポチタマは小さく吠えていつでも飛びかかれるように身をかがめた。

「来ます!」

 シンが叫んだ数秒後に、木々の間から次々とモンスターが飛び出してくる。
 最初に姿を現したのは、シンたちから見て右側から出てきた3体のモンスター。
 猪の頭と下半身が人の胴体と一体化した、レッド・ボアタウロスだ。
 身につけているのは腰布だけだが、全身を深紅の剛毛が覆い、丸太の如き太さの腕には2メルを超える巨大なバトルアックスを握っている。太く鋭いきばの間からのぞく目は、真っ直ぐにシンたちを睨みつけていた。
 さらにレッド・ボアタウロスに数秒遅れて、左側から2体のアリ型モンスター。青白い甲殻こうかくと、顔に相当する部分に光る3対の複眼を持つ、マナアント・サーチャーだ。
 ガチンガチンと牙を鳴らしながら、首を左右に振ってシンたちとレッド・ボアタウロスを見比べている。

「げ、サーチャーかよ」
「時間はかけられないわね。ひびねこさん。援護しますから、ささっとやっつけてくださいね」
「承知した!」

 サーチャーと名のつくモンスターは、素早く倒さないと大量の味方を呼ぶ。それは【THE NEW GATE】である程度強くなったプレイヤーなら、経験で知っていることだ。
 ホーリーは、ひびねこがマナアント・サーチャーに一撃を入れて注意を引くのを待って、準備していた魔術スキルを発動させる。

「【サンダー・アロー】、3秒後!」

 ホーリーの声を聞いてから、ひびねこは攻撃をしつつタイミングを計る。
 2秒の時点でひびねこは跳躍し、マナアント・サーチャーの視界から消えると同時に【サンダー・アロー】の射線から逃れた。
 2体に均等にダメージを与えていたことで、マナアント・サーチャーの注意は完全にひびねこに向かっている。
 ひびねこの跳躍につられるように上を向いた2体のマナアント・サーチャーに、ホーリーの放った雷術系魔術スキル【サンダー・アロー】が3発ずつ命中した。
 雷術系の魔術には、相手の動きを一瞬止めたり、状態異常【麻痺パラライズ】を付与したりする効果がある。その効果は今回も余すところなく発揮され、マナアント・サーチャーの動きがギクシャクしたものになった。
 そこへ、跳躍していたひびねこが両腕を前に突き出しながら落下してくる。射線上にマナアント・サーチャーの頭部が重なるように跳躍していたため、ひびねこは1度の攻撃で2体の頭部を粉砕していた。
 一度大きくジャンプしてから急降下するそれは、無手系武芸スキル【ハイ&ロウ】だ。ジャンプしたところで他のプレイヤーが魔術や弓で攻撃し、さらにスキルを使ったプレイヤーが追撃をする。
 プレイヤーの間では、比較的オーソドックスなコンビネーションプレイのひとつだ。
 頭部を破壊されたマナアント・サーチャーのHPが0になり、ポリゴンとなって爆散する。経験値やドロップしたアイテムを確認する前に、ひびねこはシンの方へと顔を向けた。


 ひびねこたちがマナアント・サーチャーの相手をしている一方で、シンはレッド・ボアタウロスの相手をしていた。試作品がどれほどの性能か試す意味も込めて、敵が繰り出すバトルアックスの一撃をサイドステップでかわし、攻撃を仕掛けた。
 攻撃範囲拡大にキャパシティのほとんどをつぎ込んだ玄月は、刀の切っ先からさらに半透明の赤い刀身が伸び、射程が3倍ほどになっている。スキルなしでこれだけの射程を持つ片手武器は、かなり希少だ。
 ただ、玄月で攻撃するたびにシンのMPがわずかながら減っていた。通常攻撃にまでMPを使うというのは、スキルの使用回数の減少やMP回復アイテムの使用量増加など、戦闘面で少なくない負担になる。
 しかし、斬撃の射線内にいた2体のレッド・ボアタウロスをまとめて両断する威力と制圧力を見れば、些細ささいな代償だった。もちろん、この能力はオンオフの切り替えが可能だ。

「このっ!」

 シンに攻撃をしようとしていたレッド・ボアタウロスの最後の一体に向けて、マリノの鞭が飛ぶ。
 そしてシンの放った斬撃が、その身を真っ二つに切り裂いた。
 玄月の能力によって強化されたスキルは、レッド・ボアタウロスの背後にあった破壊可能オブジェクトまで破壊していた。

「いいタイミングだ。ナイス、アシスト!」

 効果があったようには見えないマリノの攻撃だが、シンをフォローするように動いたのは評価すべきポイントだ。シンはサムズアップしてマリノを褒める。

「うう、今全然効いてなかったよ」
「マリノのステータスならそんなもんだ。それに、今の奴は肉弾戦タイプ。元々物理攻撃には強いんだよ」

 落ち込むマリノを慰めるように、シンは話しかけた。
 レッド・ボアタウロスのレベルが『明星の霊峰』の出現モンスターの平均を上回る501と高かったのに加え、接近戦タイプは多少のダメージでは動きが止まらない。マリノの攻撃では、威力不足は当然なのだ。

「とりあえず、終わりかな?」
「大丈夫だ。近づいてくる敵はいない」

 周囲を警戒していたシャドゥが、姿を現してシンの疑問に答える。一行は、アイテムを回収してから先に進むことにした。

「レベルが5つも上がってる!」
「そりゃレベルもステータスも、かなり差があるからな。パーティを組んでるから、ある程度分散しても補正でけっこう経験値入るし」

 ステータス画面を見て驚いているマリノに、シンが当然とばかりに言う。見ているだけでなく、実際に攻撃を当てたので、その分の補正も入っていた。

「じゃあ、先に進もう」

 シンとひびねこを先頭に一行は歩みを進める。その後、さらに数回の戦闘をこなしつつ30分ほど歩くと、道に傾斜がつき始めた。

「山に入ったみたいですね」
「確か、集めた情報では出てくるモンスターの種類が変わるという話だったな」

 段々ときつくなっていく山道を歩きながら、シンとひびねこは情報を共有する。
 とくに気をつけるべきは、2種類。
 奇襲を得意とする蛇型モンスター、ステア・ヴィーパーと、木々によって死角となる上空から襲ってくる鳥型モンスター、ファルロップだ。
 互いに持っている情報を照らし合わせた直後、シンは辟易へきえきした顔でつぶやいた。

「なんか、めっちゃいますけど」
「ふむ、聞いていた話とかなり数が違うな」

【気配察知】で感知できた反応の多さに、ひびねこもひげをいじりながら同意した。
【気配察知】は探知できる範囲が広い代わりに、モンスター以外の野生動物やプレイヤーも感知する。
 いかにシンたちといえども、マップ上に表示されたマーカーを見ただけで、それがモンスターか否かの区別はつかない。
 しかし、今回はそうではなかった。山という起伏に富んだ地形にありながら、表示されたマーカーは一切の減速なく一定速度でフィールドを移動している。
 地形の影響を受けない移動。それを可能にするのは、飛行という特定のモンスターにのみ許された移動方法だ。
 シンは念には念を入れて、マーカーが近くにきたときに【索敵】でマーカーがモンスターを表示していることも確認していた。

「えっと、どうしたの?」
「ちょっとモンスターの数が多いんだ。聞いてた話じゃ、集団で出てくるモンスターじゃないはずなんだけどな」

 話しているのが聞こえたのか、困惑した様子のマリノにシンは状況を説明した。

「登るのは無理そう?」
「いや、それは大丈夫だ。最悪、全部俺が叩き落としてくればいいわけだし。そのあたりは行ってみてだな」

 心配そうな顔のマリノに、シンがあっけらかんとした態度で返す。それは誇張や強がりではなく、シンのステータスとスキルを駆使すれば可能な、純然たる事実だった。

「シン君がいれば、そのあたりは何の問題もないから。マリノちゃんも安心してね」
「あ、はい」

 何の気負いもないホーリーの様子に、マリノも安心したように微笑んだ。

「ところでひびねこさん。これ、隠しクエストでも発生している雰囲気じゃないですか?」 

 シンはモンスターの大量発生から、考えられる可能性を挙げた。
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