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一章 精霊の愛し子
11.猫耳と尻尾-2
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「……あんたは俺の猫を見たって言っていたよな」
「黒い猫ちゃんのこと?」
「あぁ。アレは俺の友だち。産まれた時からずっと一緒にいる。今まであいつの姿を見えたヤツはいないんだけどな」
「今はどこにいるの?」
「うーん、どうやら今は俺の身体の回復に力を貸すために俺と一体化? しているみたいだ」
「へー、そうなんだ」
ピコンと動く耳と尻尾を横目で追いながら、そんなこともあるんだ、と目をパチパチさせてルルティアがうなずいた。
そんなルルティアの様子を見てアミルが変な顔をする。
「あんたさ、こんな話を聞いて信じられるのか? のんきなだけじゃなくずいぶん変なヤツだな。それに島に上陸してからバズは姿を現してないはずだ。そもそもあんたはどこでバズを見たんだ?」
アミルがいぶかしげな顔をしながら腕を組んだがその姿勢がケガに障ったようで、いてて、と顔をしかめて組んだ腕をほどいた。
ルルティアは心配になってアミルの身体を支えるように手を伸ばした。
アミルの身体に近づくと甘い匂いがふわりと香った。
「あんな高い崖から落ちたんだから無理しない方が良いよ。それにさっき言わなかったっけ? あなたたち船の上で一緒にいたでしょう?」
「船って連絡船の上? あんたあの船に乗っていたのか?」
「えっと、そうじゃなくて」
アミルは眉を寄せてルルティアを上から下まで疑わしげに見つめる。
どうやって説明しようか悩んでいるとアミルがルルティアにゆっくりと顔を近づけてから、両手でバッと鼻と口を押さえて苦しそうな顔をした。
「んん……」
「アミル? どうしたの? どこか痛い?」
「いや……バズの力を借りているせいか、さっきより匂いを強く感じる」
「え? 大丈夫? どうしよう?」
「……はぁ、うまそうな匂いさせやがって」
アミルが眉間のシワをいっそう深くしながらつぶやいた。
うまそうな匂い、ということはアミルの猫はもしかしてアクアさまを食べてしまうのだろうか。
「えっと、あの、食べちゃダメ」
「ん、わかってる。でもちょっとマズイな」
アミルはおでこに手を当てて下を向くとフーッ、フーッと長い息をいくつも吐いた。
猫耳も伏せていて心なしか元気がないように見える。
「どうしたの?」
「いや。おさまらない」
「何が?」
「ナニが」
「え?」
これで会話が成り立っているのだろうか。ルルティアはアミルが言っていることがよくわからず首をひねった。
アミルは苦々しい顔をしてルルティアをチラリと見てから目線を下にやった。
ルルティアがつられて下を見ると、水に濡れて下半身にピッチリと張り付いているアミルのズボンの股間部分を何かが中から押し上げていた。
尻尾……は服から出ていてそこにある。
「え……これって……」
「勃った」
そう言ってアミルは頬を少し赤くさせながら苦しそうに息を吐いた。
「黒い猫ちゃんのこと?」
「あぁ。アレは俺の友だち。産まれた時からずっと一緒にいる。今まであいつの姿を見えたヤツはいないんだけどな」
「今はどこにいるの?」
「うーん、どうやら今は俺の身体の回復に力を貸すために俺と一体化? しているみたいだ」
「へー、そうなんだ」
ピコンと動く耳と尻尾を横目で追いながら、そんなこともあるんだ、と目をパチパチさせてルルティアがうなずいた。
そんなルルティアの様子を見てアミルが変な顔をする。
「あんたさ、こんな話を聞いて信じられるのか? のんきなだけじゃなくずいぶん変なヤツだな。それに島に上陸してからバズは姿を現してないはずだ。そもそもあんたはどこでバズを見たんだ?」
アミルがいぶかしげな顔をしながら腕を組んだがその姿勢がケガに障ったようで、いてて、と顔をしかめて組んだ腕をほどいた。
ルルティアは心配になってアミルの身体を支えるように手を伸ばした。
アミルの身体に近づくと甘い匂いがふわりと香った。
「あんな高い崖から落ちたんだから無理しない方が良いよ。それにさっき言わなかったっけ? あなたたち船の上で一緒にいたでしょう?」
「船って連絡船の上? あんたあの船に乗っていたのか?」
「えっと、そうじゃなくて」
アミルは眉を寄せてルルティアを上から下まで疑わしげに見つめる。
どうやって説明しようか悩んでいるとアミルがルルティアにゆっくりと顔を近づけてから、両手でバッと鼻と口を押さえて苦しそうな顔をした。
「んん……」
「アミル? どうしたの? どこか痛い?」
「いや……バズの力を借りているせいか、さっきより匂いを強く感じる」
「え? 大丈夫? どうしよう?」
「……はぁ、うまそうな匂いさせやがって」
アミルが眉間のシワをいっそう深くしながらつぶやいた。
うまそうな匂い、ということはアミルの猫はもしかしてアクアさまを食べてしまうのだろうか。
「えっと、あの、食べちゃダメ」
「ん、わかってる。でもちょっとマズイな」
アミルはおでこに手を当てて下を向くとフーッ、フーッと長い息をいくつも吐いた。
猫耳も伏せていて心なしか元気がないように見える。
「どうしたの?」
「いや。おさまらない」
「何が?」
「ナニが」
「え?」
これで会話が成り立っているのだろうか。ルルティアはアミルが言っていることがよくわからず首をひねった。
アミルは苦々しい顔をしてルルティアをチラリと見てから目線を下にやった。
ルルティアがつられて下を見ると、水に濡れて下半身にピッチリと張り付いているアミルのズボンの股間部分を何かが中から押し上げていた。
尻尾……は服から出ていてそこにある。
「え……これって……」
「勃った」
そう言ってアミルは頬を少し赤くさせながら苦しそうに息を吐いた。
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