【R18/完結】猫は魚を食べちゃいたい(※性的な意味で)〜愛され巫女の運命の番は美形で意地悪な吟遊詩人〜

河津ミネ

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二章 巫女の舞

22.パウさまの話-3

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 パウさまがふと思いついたように口を開く。

「そういやルルティア。おぬし、そやつに押し倒されんかったか?」

「え!?」

「そやつ身体が変化したのだろう? 番に会って一体化するのは子作りのためだ」

「こ、こ……!?」

(子作りって、子作りって、ようは、あの、そういう……!?)

 パウさまの問題発言にルルティアは目を白黒させる。

「そもそも精霊の加護はその土地の民の繁栄のために与えるもんだ。ようは子どもを産んで人を増やせ、ということだ。だから子作りをさせようとする」

「今どきそんなことある!?」

「精霊に今どきも何も無いさ。まぁ自分を奉る者がおらんと精霊は力を失うからな。信じる者を増やそうとするのだろう。それは精霊の本能みたいなもんだから仕方ない」

 アミルに押し倒されはしなかったけど、アミルのアレはそう言うことだったのか……とルルティアは顔をさらに赤くさせて下を向いた。
 真っ赤になって下を向くルルティアを見て、パウさまはヒャッヒャッと笑った。

「一体化は本能を刺激し子作りを促す。身体の回復はそのオマケみたいなもんだ。それにしてもおぬしのその反応、まだおぼこのようだの。ちなみに一体化した状態で交わると精霊の力を分け与えることができる。少しの間なら精霊の力を相手も使えるようになるぞ」

「交わる?」

「うむ。性交、営み、セックス……最近の若いヤツらの言い方だとエッチする、とかか?」

「え、エッチ……!?」

 パウさまがまたヒャッヒャッヒャッと笑う。口をあまりにも大きく開けるので歯が抜けているところまでしっかりと見えた。

「うぅ……パウさまって案外俗っぽいよね」

「巫女たる者、世の動きにも敏感であらねばならん」

 パウさまに思いきりからかわれ、ルルティアは恥ずかしくて涙目になった。

「でもポルさまは一目で番だってわかったんでしょう? 私はそんなのわからなかったよ?」

「ふぅむ。特別な匂いを感じなかったか?」

「え」

「その目を見ると胸が高鳴らなかったか?」

「え」

 アミルから甘い匂いを感じるのも、目を逸らせずに胸が高鳴るのも、すべてアミルが番だからだというのか。
 ルルティアの様子にパウさまはニンマリと笑いながら目を細める。

「なぁ、ルルティア。おぬしも相手が番だとわかったのだろう?」

「わかんない! そんなのわかんないよ!」

「おぬしはそやつを見て一体化しなかったのか?」

「してない! だから番なんかじゃない!!」

 ルルティアはクッションを頭から被って床に伏せた。
 パウさまはまたヒャッヒャッヒャッと声を上げて笑った。
 ひとしきり笑ったあとパウさまがぽつりと言った。

「番に出会える奇跡に感謝しな」

 声のトーンが優しいものに変わったのに気づき、ルルティアはクッションの下から顔を出してパウさまを見上げた。

「ワシの番は身体が弱くての。アクアさまの力でも病までは治せん。だがまあ、本来の寿命よりかは長生きしてくれたのだろうなぁ」

 パウさまはそう言うと穏やかな微笑みを浮かべたまま遠い目をしていた。
 番を想うパウさまの顔はとても美しく見えた。
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