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二章 巫女の舞

29.巫女の衣装-2

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「俺のはココ」

 コ、コ、と一文字ずつ区切りながら、アミルは自分の股間を指差した。

「や! 見ないっ! バカ!!」

「まぁ良いから見てみろよ」

 ルルティアがギュッと目をつぶっていると、シュルシュルとアミルが服を緩めている音が聞こえる。

「ほら」

 アミルの声がしてルルティアがそーっと目を開ける。

「……これって」

 アミルはズボンを少しだけずり下げておへその下あたりを見せていた。
 そこには黒い毛が生えていて、その下の方には銀の毛が混じっている。

「産まれた時からヘソの下に黒い毛が生えていたんだと。でも赤ん坊にそんなの生えていちゃおかしいからって、小さい頃は毛が生えているのがバレないように剃っていた。んで、下の毛が生えるようになってからは、元々こういう毛なんだってごまかすために髪にもメッシュ入れている」

「そうなんだ」

「そんなにジロジロ見るなよ。反応して勃っちゃうだろ」

「バ、バカ!! 見せたのはあなたじゃない!」

 ルルティアが怒って横を向くと、クックッと笑いながらアミルが服を着直した。

「ごまかす必要があるほど、そんな所を人に見せてるってこと? アミルって不潔!」

「はぁ? 風呂屋に行きゃ誰にだって見られるだろうが。それに旅芸人の一座なんて裏で着替える時にいちいち隠しゃしないよ。そんな事考えているあんたの方がよっぽどスケベなんじゃないか? まぁ、風呂屋なんかに行かないお嬢さんにはわからないかも知れないけど」

 アミルの言葉に一瞬ムッとしたけれど、お嬢さんと言われるのはお子さまだとバカにされるより、自分とは違うんだと突き放されているようでなんだか無性に悲しくなった。
 ルルティアはアイラナで巫女として、長の娘として、人々からとても大切にされている。
 ウロコを人に見せるのは恥ずかしいし、バカにされたり気持ち悪がられたりしたこともあった。
 それでも巫女であることを隠さなきゃいけないようなことはなかった。
 出会った時の警戒した感じからすると、アミルはバズがいることを多分ずっと隠してきたのだろう。
 アミルが黒い毛が生えていることを人に知られてはならない生活をしてきたことに、ルルティアはやっと思いいたった。

「ん? ルー、どうした?」

「なんでもない……」

「急に黙るなよ。あんたに元気がないと落ち着かない」

 アミルが手を伸ばしてルルティアのオレンジの髪を柔らかくなでた。
 あんな風にからかってくるくせに、急に優しくしないで欲しい。
 ルルティアはにじみ出そうな涙をグッとこらえて顔を上げた。

「アミルもバズと一緒に舞を見に来てくれる?」

「あぁ……」

「約束ね」

 ルルティアはアミルに向かって精一杯の笑顔を浮かべた。
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