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二章 巫女の舞
30.巫女の舞-1
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祭の日はとても良い天気だった。
町の中央の広場には立派な舞台が設置されていて、アミルが知り合った楽団の何人かも今日は演奏で参加するようだ。
アミルは少し離れた木の上から舞台を眺めていた。
舞台の袖で明るいオレンジの髪がピョコピョコと動いているのが見える。
(いつでも元気一杯なんだな)
アミルはルルティアを眺めながらクスリと笑った。
崖から落ちて海に打ちつけられた時、全身の痛みと息のできない苦しさの中で鮮やかに飛び込んできたオレンジを思い出す。
月の光を透かして水中できらめくオレンジの髪はこの世の物とは思えないほど美しく、一瞬もう自分は死んでしまったのかと思ったほどだった。
そのままアミルが意識を失って、起きたら目の前いっぱいにオレンジ色が広がって、やはり自分は死んでしまったのかと思った。
猫耳に尻尾なんて初めてのことで驚いたけれど、身体のいたるところを襲う強い痛みをバズが治そうと力を貸してくれているのがわかった。
しかし回復と同時にむき出しの本能を刺激され、たかぶる気持ちを抑えられなかった。
あの時のことを思い出してしまい、アミルは顔をしかめつつ耳を赤くした。
こんな顔に産まれてしょっちゅう女に迫られて、女なんてめんどくさいばかりでうんざりしていた。
性欲なんてむしろ枯れたもんだと思っていたぐらいなのに、ルルティアの前では全然ガマンができなかった。
あんな男性経験の無さそうな初心な子にたかぶったモノを握らせて、何回も果ててしまった。
そんな醜態をさらした自分が情けなくて、あんたが操ったのかとつめよってしまいバズに怒られた。
それなのにルルティアはアクアさまの癒しの力を使ってアミルのケガを治してくれた。
あんなバカ正直で真っ直ぐなルルティアを見ていたら、アミルを操ったりするわけがないと信じられた。
(あの匂い。なんで他のやつらは平気なんだろうか)
あんな甘くておいしそうな匂いをぷんぷんさせて歩いていたら襲われても仕方ないだろう。
アミルだってルルティアの隣を歩きながら、何度抱きつき舐めまわして噛みつきたい衝動に襲われたことか。
(それにあの目。朝焼け色の美しい目で、見ているとくらくらして我を忘れてしまいそうになる)
だからなるべく正面からは見ないようにして、アミルはいつも横からルルティアをこっそりながめていた。
(やっぱり海の魔物なんじゃないかな)
アミルはフゥとため息をついた。
ルルティアの前だといつもひどく心を乱されて、そんな自分をごまかすようについバカなことを言ってからかってしまう。
「はぁ、ガキかよ……」
そんなことを考えていたら舞台の用意ができたようだった。
たたた、と駆けてきたルルティアが舞台の真ん中で立ち止まる。
先日見た際どい衣装に加えて、腕と足を隠すように薄く青い透けた布でできた袖とスカートをヒラヒラと巻きつけている。
身につけているのがあの衣装だけではなかったことにホッと息を吐く。
しかしおへそだって丸出しで、思ったよりも豊かな胸をほんの僅かの布しか隠してないのが見えてアミルは眉をひそめた。
胸の谷間が陽の光に反射してわずかにキラリと光ったのはそこにウロコがあるからだろう。
(いっそウロコ以外のところを全部隠してしまえば良いのに)
アミルはルルティアの丸みを帯びた白く美しい身体をみなが見ていると思うと、今すぐにさらって誰にも見えないところに隠してしまいたくなった。
アクアさまのヒレによく似た薄い青い布の向こうにうっすらと白い腕や足が透けて見えるのだって、その中身を想像させて暴きたくなる。
(巫女の衣装を考えたヤツは絶対スケベ野郎に違いない)
アミルが若干イライラしながらながめていると、ルルティアがバッと右手を高く上げて空を見上げた。
町の中央の広場には立派な舞台が設置されていて、アミルが知り合った楽団の何人かも今日は演奏で参加するようだ。
アミルは少し離れた木の上から舞台を眺めていた。
舞台の袖で明るいオレンジの髪がピョコピョコと動いているのが見える。
(いつでも元気一杯なんだな)
アミルはルルティアを眺めながらクスリと笑った。
崖から落ちて海に打ちつけられた時、全身の痛みと息のできない苦しさの中で鮮やかに飛び込んできたオレンジを思い出す。
月の光を透かして水中できらめくオレンジの髪はこの世の物とは思えないほど美しく、一瞬もう自分は死んでしまったのかと思ったほどだった。
そのままアミルが意識を失って、起きたら目の前いっぱいにオレンジ色が広がって、やはり自分は死んでしまったのかと思った。
猫耳に尻尾なんて初めてのことで驚いたけれど、身体のいたるところを襲う強い痛みをバズが治そうと力を貸してくれているのがわかった。
しかし回復と同時にむき出しの本能を刺激され、たかぶる気持ちを抑えられなかった。
あの時のことを思い出してしまい、アミルは顔をしかめつつ耳を赤くした。
こんな顔に産まれてしょっちゅう女に迫られて、女なんてめんどくさいばかりでうんざりしていた。
性欲なんてむしろ枯れたもんだと思っていたぐらいなのに、ルルティアの前では全然ガマンができなかった。
あんな男性経験の無さそうな初心な子にたかぶったモノを握らせて、何回も果ててしまった。
そんな醜態をさらした自分が情けなくて、あんたが操ったのかとつめよってしまいバズに怒られた。
それなのにルルティアはアクアさまの癒しの力を使ってアミルのケガを治してくれた。
あんなバカ正直で真っ直ぐなルルティアを見ていたら、アミルを操ったりするわけがないと信じられた。
(あの匂い。なんで他のやつらは平気なんだろうか)
あんな甘くておいしそうな匂いをぷんぷんさせて歩いていたら襲われても仕方ないだろう。
アミルだってルルティアの隣を歩きながら、何度抱きつき舐めまわして噛みつきたい衝動に襲われたことか。
(それにあの目。朝焼け色の美しい目で、見ているとくらくらして我を忘れてしまいそうになる)
だからなるべく正面からは見ないようにして、アミルはいつも横からルルティアをこっそりながめていた。
(やっぱり海の魔物なんじゃないかな)
アミルはフゥとため息をついた。
ルルティアの前だといつもひどく心を乱されて、そんな自分をごまかすようについバカなことを言ってからかってしまう。
「はぁ、ガキかよ……」
そんなことを考えていたら舞台の用意ができたようだった。
たたた、と駆けてきたルルティアが舞台の真ん中で立ち止まる。
先日見た際どい衣装に加えて、腕と足を隠すように薄く青い透けた布でできた袖とスカートをヒラヒラと巻きつけている。
身につけているのがあの衣装だけではなかったことにホッと息を吐く。
しかしおへそだって丸出しで、思ったよりも豊かな胸をほんの僅かの布しか隠してないのが見えてアミルは眉をひそめた。
胸の谷間が陽の光に反射してわずかにキラリと光ったのはそこにウロコがあるからだろう。
(いっそウロコ以外のところを全部隠してしまえば良いのに)
アミルはルルティアの丸みを帯びた白く美しい身体をみなが見ていると思うと、今すぐにさらって誰にも見えないところに隠してしまいたくなった。
アクアさまのヒレによく似た薄い青い布の向こうにうっすらと白い腕や足が透けて見えるのだって、その中身を想像させて暴きたくなる。
(巫女の衣装を考えたヤツは絶対スケベ野郎に違いない)
アミルが若干イライラしながらながめていると、ルルティアがバッと右手を高く上げて空を見上げた。
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