【R18/完結】猫は魚を食べちゃいたい(※性的な意味で)〜愛され巫女の運命の番は美形で意地悪な吟遊詩人〜

河津ミネ

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三章 幸運の猫

47.デート-1

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 連絡船の到着した日にルルティアの家で催される歓迎の宴にエクウスは来なかった。
 どうやらそのままアミルと何かを話し合っているようだ。

 ルルティアが悶々としていると、次の日の昼過ぎにアミルがエクウスと一緒に家を訪ねて来た。

「アリイさまはいるか?」

「書斎でお仕事してるけど」

「コイツがアリイさまに会いたいそうだ。通してもらえないか?」

「この手紙をアリイさまにわたしていただけますか?」

 エクウスからわたされた手紙は高級そうな封筒に包まれており、ルルティアはそれを受け取ると急いで書斎で仕事をしているアリイに手渡した。
 アリイは封筒を受け取って差出人を確かめると少し難しい顔をした。

「すぐ行く。応接室で待ってもらいなさい」

「はい」

 ルルティアが二人を応接室に通すと、アリイもすぐにやってきた。

 ルルティアは部屋から出されてしまったので何の話をしていたのかはわからなかったが、三人はずいぶん長いこと話し合っていたようだった。
 ルルティアが自分の部屋で課題をやるふりをしながら階下の様子を伺っていると、エクウスの声が聞こえてきた。


「今日はありがとうございました」

 エクウスとアミルがアリイとの話を終えて帰るようだ。
 ルルティアは少しでも事情を知りたくて階段を駆け降りてアミルを追いかけた。

「アミル!」

「ルー」

 ルルティアに気づいたアミルはエクウスに先に帰るよう促して、ルルティアのところに戻って来てくれた。

「アミル。あの……」

(父さまと何の話をしたの? 茶色い包みは何だったの? あの人と一緒にウトビアに帰ってしまうの?)

 聞きたいことはたくさんあるのに、どれもうまく言葉にできない。
 左右に揺らした視線がアミルを捉えるとアミルはニコッと笑った。

「なぁ、ルー。明日、一緒に出かけないか?」

「えっと、良いけど」

「じゃあ明日の昼に迎えに来るから」

 アミルはそう言い残して帰って行った。
 明日の昼にはウトビア行きの連絡船が出てしまう。
 アミルはウトビアに行かないでアイラナに残ってくれるということだろうか。

「っ! ……良かった!」

 ルルティアは両手で口を覆い、その隙間から安堵のため息をこぼした。


 *****


 次の日、アミルは昼過ぎにルルティアを迎えに来たので、そのまま一緒に町を散歩した。
 ちょうど港の見える高台に差し掛かり、連絡船が港を発つのが見えた。
 エクウスはこの連絡船に乗ってウトビアに帰るそうだ。

「エクウスさんの見送りしなくて良いの」

「あー、いい、いい。それよりこっちの方が大事」

 アミルはするりと手をつないで指をからめてくる。
 最近少しだけ感じていたアミルとの壁を今日はあまり感じなくて、ルルティアはドギマギしながら頬を染めた。
 アミルは町のはずれにある山の麓まで来ると、ルルティアを抱きあげた。

「きゃ! アミル!?」

「しっかりつかまってろよ!」

 アミルはいつだかのようにルルティアを抱えたまま、身軽な動きで山をピョンピョンと駆け上がっていく。
 ルルティアがギュッと抱きつくと、アミルも落とさないようにかルルティアを強く抱きしめ返してくれた。

 山の中腹まで登り少し開けた場所に着くと、アミルはルルティアを静かに地面に下ろした。
 そこからは町も海も一望できた。

「わぁ! キレイ!!」

「海はルーの方が詳しそうだから、今日は山にしてみた」

「なにそれ」

 ルルティアが声を上げて笑う。

「店のヤツらに教えてもらったんだ」

 店のヤツら、ということは、あのキレイな踊り子のお姉さんたちのことだろうか。
 ルルティアはアミルに抱きついていたお姉さんのことを思い出して、わずかにむぅと頬をふくらませる。
 アミルはそんなルルティアに気づかず話を続けた。

「愛し合う二人がここで一緒に流れ星を見ると、二人は永遠だとかそんな感じの言い伝えが流行っているんだと」

「あ、あい……!?」

「ん?」

 愛し合う二人だなんて……!? とルルティアは顔を赤くさせてドキドキしながらアミルの顔を見たが、アミルはあまりにも普通の様子をしていた。
 どうやらその言葉に深い意味は無かったようだ。
 ルルティアは一人で浮かれたのが恥ずかしくなった。

「……でも今日の夜は満月だからあんまり星は見えないよ」

「ん、そうだな」

 可愛くない言い方をしてしまった、とルルティアはまだ明るい空を見上げてこっそり唇を噛む。
 一緒に町を見下ろしながら、あそこはルルティアの家だ、あそこはアミルの働いているお店だ、とひとしきり景色を楽しんだ。
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