【R18/完結】すみません、家の前に美少年が落ちているのですが。

河津ミネ

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12月31日 年越し②

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 ~ 12月31日 PM10:00 ~

 薬局を出る際に『今から帰る』と連絡をした。
 鍵が無いのでインターホンを鳴らすとシン君がドアを開けてくれた。

「舞衣歌さん、おかえりなさい」

 明るい部屋の光を後ろに背負って、あたたかい空気と共に出てくるシン君はキラキラと光って見えた。

「え? なにこれ。天国かな?」

「? 何を言ってるんですか? 夕飯は食べてくるかなって思ったんですけど、せっかくなので年越しそば買ってきました」

「助かる~。ここんとこ食事は、インゼリーとポカリとカロリーメイトですませてたからさぁ……」

 舞衣歌は玄関で靴を脱ぎながら、シン君に感謝の言葉を述べる。

「スーパーで着替えを買うついでだったので」

「すごい人だったでしょ」

「はい。びっくりしました」

「あ、トイレットペーパー!!」

 廊下のトイレのドアの前に新品のトイレットペーパーの袋が置いてあった。

「あの、無くなりそうだったけど、予備がどこにあるかわからなかったから買ってきちゃいました」

「うわー、ありがとーー!!」

 舞衣歌は嬉しすぎて涙が出そうだった。

「買わなきゃって思ってたのに、スーパーが開いてる時間に帰れなくてさ、コンビニで高いの買うの悔しいな~って思ってたら残りがギリギリになっちゃって、いよいよヤバイとこだったの! ほんと、助かった! ありがとう」

 そしてリビングに入ると机の上にはたたんで置かれた洗濯物も見つけた。

「うわっ! 洗濯物もたたんである!! え、何? シン君ってやっぱりサンタさんからのプレゼントなの!?」

「なんですか、それ……」

 舞衣歌がシン君の両手を握ってキャイキャイ喜ぶと、シン君ははにかむようにして笑った。

「あの、年越しそば食べましょう。レンジであっためるヤツだけど」

 舞衣歌が急いで部屋着のジャージに着替えていると、シン君が年越しそばをレンジで温めて出してくれた。

「シン君もまだだったの?」

「せっかくなので、一緒に食べようと思って」

 そう言って年越しそばを二つ、リビングのローテーブルの上に並べて舞衣歌の斜め横に座る。

「いただきます」

 手を合わせて、舞衣歌が年越しそばを口に含んだ。
 顔にあたる湯気が心地よく、口の中をあたたかいそばと麺つゆの香りが広がる。

「あったかい……」

「舞衣歌さん!?」

「あれ、ごめん、あれ?」

 気づくと舞衣歌の目からは涙がポロポロと流れ落ちていた。
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