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四章 青空と太陽
1.夜這いと魔女の力-1
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ソフィアが忘却の呪いを祝福に変えたことで、ソフィアやレオルドにかけられていた呪いはすべて無くすことができた。
これならルーパスの陰嫁にならないで済むかもしれない。
そのためのあれこれを考えなければならなかったが、ひとまず辺境伯の屋敷に戻りすぐにソフィアは部屋で休まされた。
大量の呪いを身の内に移した状態で意識を失っていたのに、目が覚めてすぐに魔女の力を大量に使ったせいで、ソフィアはすっかり自分では動けなくなっていた。
そのため、ずっとレオルドに抱かれたまま移動しなければいけないくらいだった。
夕方になってようやく身体が動かせるようになり、ゆっくりと起きだしたところを、メモリアがすすめるままに湯を浴びて部屋で食事を摂る。
そしてまだだるさの残る身体をベッドに横たえて、うつらうつらとして過ごした。
そのうちに日がすっかり落ちてあたりが暗くなった頃、ソフィアの部屋のドアが叩かれた。
「ソフィア、入ってもいいか?」
扉の向こうから聞こえるレオルドの声にソフィアの胸が大きく高鳴る。
急いでベッドから下りると、まだ少しふらつく足取りでドアまで行って開けた。
そこにいたレオルドは騎士服ではないラフなシャツを着ており、豊かな金の髪を無造作に下ろしている。
湯上がりなのか石けんの香りがふわりと広がってきて、ソフィアは頬を赤く染めた。
「中へどうぞ」
声が少し震えてしまったのを、レオルドに気づかれてしまっただろうか。
胸が激しく鼓動を刻んでいる音が、レオルドまで聞こえてしまいそうだ。
部屋の中まで案内しようとソフィアがレオルドに背中を向けると、背後でカシャンと音がした。
それが部屋の内鍵を閉めた音だと気づき、ソフィアの肩がビクンと跳ねる。
おそるおそるソフィアがふり返ると、レオルドは赤い目をギラリと光らせながら今にも飛びかからんとソフィアを見ていた。
そこには美しい黄金の獅子がいた。
この美しい獣から、もう逃げられないことを覚悟する。
「……レオルド様」
レオルドの名を呼ぶソフィアの声が震えているのは恐怖からか、それとも期待からか。
レオルドは大股で歩いてソフィアの目の前まで来ると、ソフィアの頬に手を添えながら腰を抱き寄せた。
「夜這いにきた」
ソフィアに触れる手も抱きしめる身体も、燃えるように熱い。
耳に落ちる言葉まで熱を持っているようだ。
「呪いは解けたんだ。もう断る理由は無いだろう?」
「それは……」
レオルドにかけられていた忘却の呪いが消えたのならば、ソフィアが魔女であることにこだわる理由はもうない。
しかし法が変わったわけではなく、魔女と通じれば処罰されるかもしれない。
それに陰嫁となる身で魔女の力を捨てれば、ソフィアにもまたどんな罰が下されるかわからない。
黙ってしまったソフィアにレオルドが尋ねる。
「俺が嫌いか?」
「いいえ」
ソフィアはすぐにかぶりをふった。
嫌いなわけがない、嫌いになれるはずがない。
「では俺が好きか?」
わずかにすがめた目の奥の赤い光がいっそう強くなる。
レオルドの熱い想いを感じて、ソフィアが薄紫色の目を潤ませながら水色の睫毛をふるわせた。
この先に起こりうることを、レオルドが考えていないはずがない。
それでもレオルドは、すべて承知の上で覚悟を持ってここに来てくれている。
(私だって後悔なんてしない……)
ソフィアは覚悟を決めると、潤んだ薄紫の目で燃えるような赤い目をまっすぐに見つめた。
「レオルド様をお慕いしております」
白い喉笛をさらすように見上げると、レオルドの熱い唇がソフィアの口をふさいだ。
これならルーパスの陰嫁にならないで済むかもしれない。
そのためのあれこれを考えなければならなかったが、ひとまず辺境伯の屋敷に戻りすぐにソフィアは部屋で休まされた。
大量の呪いを身の内に移した状態で意識を失っていたのに、目が覚めてすぐに魔女の力を大量に使ったせいで、ソフィアはすっかり自分では動けなくなっていた。
そのため、ずっとレオルドに抱かれたまま移動しなければいけないくらいだった。
夕方になってようやく身体が動かせるようになり、ゆっくりと起きだしたところを、メモリアがすすめるままに湯を浴びて部屋で食事を摂る。
そしてまだだるさの残る身体をベッドに横たえて、うつらうつらとして過ごした。
そのうちに日がすっかり落ちてあたりが暗くなった頃、ソフィアの部屋のドアが叩かれた。
「ソフィア、入ってもいいか?」
扉の向こうから聞こえるレオルドの声にソフィアの胸が大きく高鳴る。
急いでベッドから下りると、まだ少しふらつく足取りでドアまで行って開けた。
そこにいたレオルドは騎士服ではないラフなシャツを着ており、豊かな金の髪を無造作に下ろしている。
湯上がりなのか石けんの香りがふわりと広がってきて、ソフィアは頬を赤く染めた。
「中へどうぞ」
声が少し震えてしまったのを、レオルドに気づかれてしまっただろうか。
胸が激しく鼓動を刻んでいる音が、レオルドまで聞こえてしまいそうだ。
部屋の中まで案内しようとソフィアがレオルドに背中を向けると、背後でカシャンと音がした。
それが部屋の内鍵を閉めた音だと気づき、ソフィアの肩がビクンと跳ねる。
おそるおそるソフィアがふり返ると、レオルドは赤い目をギラリと光らせながら今にも飛びかからんとソフィアを見ていた。
そこには美しい黄金の獅子がいた。
この美しい獣から、もう逃げられないことを覚悟する。
「……レオルド様」
レオルドの名を呼ぶソフィアの声が震えているのは恐怖からか、それとも期待からか。
レオルドは大股で歩いてソフィアの目の前まで来ると、ソフィアの頬に手を添えながら腰を抱き寄せた。
「夜這いにきた」
ソフィアに触れる手も抱きしめる身体も、燃えるように熱い。
耳に落ちる言葉まで熱を持っているようだ。
「呪いは解けたんだ。もう断る理由は無いだろう?」
「それは……」
レオルドにかけられていた忘却の呪いが消えたのならば、ソフィアが魔女であることにこだわる理由はもうない。
しかし法が変わったわけではなく、魔女と通じれば処罰されるかもしれない。
それに陰嫁となる身で魔女の力を捨てれば、ソフィアにもまたどんな罰が下されるかわからない。
黙ってしまったソフィアにレオルドが尋ねる。
「俺が嫌いか?」
「いいえ」
ソフィアはすぐにかぶりをふった。
嫌いなわけがない、嫌いになれるはずがない。
「では俺が好きか?」
わずかにすがめた目の奥の赤い光がいっそう強くなる。
レオルドの熱い想いを感じて、ソフィアが薄紫色の目を潤ませながら水色の睫毛をふるわせた。
この先に起こりうることを、レオルドが考えていないはずがない。
それでもレオルドは、すべて承知の上で覚悟を持ってここに来てくれている。
(私だって後悔なんてしない……)
ソフィアは覚悟を決めると、潤んだ薄紫の目で燃えるような赤い目をまっすぐに見つめた。
「レオルド様をお慕いしております」
白い喉笛をさらすように見上げると、レオルドの熱い唇がソフィアの口をふさいだ。
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