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53.反応-2
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「お腹をちょっと?」
「え?」
「ヤツには、ヴェルディにはお腹を触れさせただけか?」
「え? えっと、はい。ヴェルディがお腹の紋様に触れて魔力を流したので」
「ハァーッ、なんだ。俺はヴェルディにももっと色々触れさせたのかと」
「え?」
ジークベルトが肩をがっくり落として大きく息を吐いた。
じわじわとジークベルトが言っていることの意味を理解するにつれて、クラリスの胸に怒りがわいてくる。
「ひどい! いくら私が男女のことに疎いからって、あんなことジークとしかしません!」
まさかジークベルトとしていたようなことをヴェルディともしていたと疑われていたとは。
勝手に色々想像して一方的に怒られたとわかって、怒りのあまりクラリスの目に涙が浮かぶ。
「クラリス、すまん!」
「ひどいです。私、何をしちゃったのかなって、昨日の夜すごく悩んでたのに!」
「すまん! ほんとにすまん!! ……って、今、俺としかって言ったか?」
「え? ……あっ!」
どうやら勢いあまって言わなくていいことまで言ってしまったようだ。
怒っていたはずなのに、クラリスの顔は怒りとは違う理由でどんどん赤くなっていく。
ジークベルトが大きな手のひらでクラリスの乱れた髪をなでて整えながら、耳元で低くささやいた。
「俺ならいいのか?」
もっと怒ってやりたいのにその声の響きはとても甘く、その手つきがあまりにも優しい。
これまでそんなふうにジークベルトに触られたことがなかったクラリスは、その心地よさに抗えなくなってこくんと小さくうなずいた。
「ジ、ジークはああいうことを他の人とできるのかもしれませんけど、私はあなたとしか無理です」
「俺だって無理だ。おまえとしかあんなことできない」
「本当に……?」
「俺はおまえのことをずっと好きだったと言っただろう?」
怒らせて嫌われてしまったと思ったが、その理由が勘違いの嫉妬からだったのならまだ嫌われてはいないのだろうか。
クラリスの緑の目には怒りとは別の涙がじんわりとにじんできた。
ジークベルトはクラリスを抱き直し、しっかりと目線を合わせる。
その黒い目が真摯にクラリスの緑の目をのぞき込む。
「俺はおまえに好きだと伝えたことを後悔していた」
「え……ジークは後悔しているんですか」
「俺の気持ちに嘘はない。だが俺はおまえの上司で、しかもグラオーザの魔法のせいでおまえは俺に責任を感じていただろう? 逆らえない立場の者に伝えるべきではなかったと」
「でも私は嬉しかったです」
「そうか。俺の気持ちはおまえを困らせたとばかり」
ジークベルトの目がわずかに不安で揺れて見える。
(いつも自信満々の人がこんな目をするなんて……)
思い返せばクラリスはあの時ちゃんと自分の気持ちを告げていなかった。
もしかしてそれでジークベルトを不安にさせていたのだろうか。
「私はジークが私を私として見てくれていると知って、とても嬉しかったです」
「俺の気持ちは迷惑じゃなかったか?」
「はい……。私、さっき魔力暴走で死にかけて、このまま死ぬならその前にあなたに好きって伝えたいってそれだけを思って……ん」
ジークベルトにあごをすくわれて、そのままキスをされた。
唇を喰む優しいキスが何度も繰り返される。
「クラリス……好きだ……」
「ん……私も好き……」
ジークベルトの熱い唇にうっとりと夢中になっていると、クラリスのお尻の下になにやら熱い塊があるのを感じた。
「ん……? 紋様はもう無いのに魔法が発動してる? どうして?」
クラリスはお尻の下のモノを確認しようと下を向こうとしたが、その前にジークベルトの厚い胸板にむぎゅと顔を押しつけられてしまった。
「待て、これは違う」
「違う?」
「あぁ。これは……普通に反応しているだけだ」
「普通に反応?」
ジークベルトがあーともうーとも判別のつかない声を出したあと、気まずそうにもごもごとつぶやいた。
「好きな女が俺の服一枚だけ着た状態で抱きあってキスしているんだ。欲情するに決まってるだろうが」
「え!!」
(えっと、つまり、これは魔法とは関係なく、ジークが私に反応してる?)
嬉しいような恥ずかしいような気持ちがぐるぐると頭の中で回って、クラリスは動揺してしまう。
「あの、じゃあ、それ、慰めますか?」
「いや、魔法じゃないからすぐに治められる。大丈夫だ」
「あ、はい」
(そういうものなんだ……)
ジークベルトはクラリスから身体を離すと、顔に手を当てて何やら難しい魔法理論のようなものをぶつぶつとつぶやきだした。
魔力暴走もすっかり落ち着いたので、クラリスはジークベルトの膝の上から降りて立ち上がる。
しばらくして興奮が治まったらしいジークベルトも立ち上がりかけるが、少し屈んでクラリスに耳打ちをした。
「クラリス。次に慰めてもらう時は、手じゃなくておまえの腹に出したい」
「え!」
まっすぐに背筋を伸ばしたジークベルトがクラリスを見下ろしてニヤリと笑う。
「次に俺に触れる時は覚悟して触れろよ」
「えっと……は、はい……」
クラリスが真っ赤になったまま立って動けないでいると、コンと部屋の壁を叩く音がした。
「おふたりさん、ちょっといいですかね?」
「副団長!」
「ザッツ、どうした?」
ドアが飛んで外れた部屋の入り口には、少し呆れたような顔をしたザッツが立っていた。
ザッツはすぐに真剣な顔をしてジークベルトに報告をする。
「グラオーザが見つかりました」
「え?」
「ヤツには、ヴェルディにはお腹を触れさせただけか?」
「え? えっと、はい。ヴェルディがお腹の紋様に触れて魔力を流したので」
「ハァーッ、なんだ。俺はヴェルディにももっと色々触れさせたのかと」
「え?」
ジークベルトが肩をがっくり落として大きく息を吐いた。
じわじわとジークベルトが言っていることの意味を理解するにつれて、クラリスの胸に怒りがわいてくる。
「ひどい! いくら私が男女のことに疎いからって、あんなことジークとしかしません!」
まさかジークベルトとしていたようなことをヴェルディともしていたと疑われていたとは。
勝手に色々想像して一方的に怒られたとわかって、怒りのあまりクラリスの目に涙が浮かぶ。
「クラリス、すまん!」
「ひどいです。私、何をしちゃったのかなって、昨日の夜すごく悩んでたのに!」
「すまん! ほんとにすまん!! ……って、今、俺としかって言ったか?」
「え? ……あっ!」
どうやら勢いあまって言わなくていいことまで言ってしまったようだ。
怒っていたはずなのに、クラリスの顔は怒りとは違う理由でどんどん赤くなっていく。
ジークベルトが大きな手のひらでクラリスの乱れた髪をなでて整えながら、耳元で低くささやいた。
「俺ならいいのか?」
もっと怒ってやりたいのにその声の響きはとても甘く、その手つきがあまりにも優しい。
これまでそんなふうにジークベルトに触られたことがなかったクラリスは、その心地よさに抗えなくなってこくんと小さくうなずいた。
「ジ、ジークはああいうことを他の人とできるのかもしれませんけど、私はあなたとしか無理です」
「俺だって無理だ。おまえとしかあんなことできない」
「本当に……?」
「俺はおまえのことをずっと好きだったと言っただろう?」
怒らせて嫌われてしまったと思ったが、その理由が勘違いの嫉妬からだったのならまだ嫌われてはいないのだろうか。
クラリスの緑の目には怒りとは別の涙がじんわりとにじんできた。
ジークベルトはクラリスを抱き直し、しっかりと目線を合わせる。
その黒い目が真摯にクラリスの緑の目をのぞき込む。
「俺はおまえに好きだと伝えたことを後悔していた」
「え……ジークは後悔しているんですか」
「俺の気持ちに嘘はない。だが俺はおまえの上司で、しかもグラオーザの魔法のせいでおまえは俺に責任を感じていただろう? 逆らえない立場の者に伝えるべきではなかったと」
「でも私は嬉しかったです」
「そうか。俺の気持ちはおまえを困らせたとばかり」
ジークベルトの目がわずかに不安で揺れて見える。
(いつも自信満々の人がこんな目をするなんて……)
思い返せばクラリスはあの時ちゃんと自分の気持ちを告げていなかった。
もしかしてそれでジークベルトを不安にさせていたのだろうか。
「私はジークが私を私として見てくれていると知って、とても嬉しかったです」
「俺の気持ちは迷惑じゃなかったか?」
「はい……。私、さっき魔力暴走で死にかけて、このまま死ぬならその前にあなたに好きって伝えたいってそれだけを思って……ん」
ジークベルトにあごをすくわれて、そのままキスをされた。
唇を喰む優しいキスが何度も繰り返される。
「クラリス……好きだ……」
「ん……私も好き……」
ジークベルトの熱い唇にうっとりと夢中になっていると、クラリスのお尻の下になにやら熱い塊があるのを感じた。
「ん……? 紋様はもう無いのに魔法が発動してる? どうして?」
クラリスはお尻の下のモノを確認しようと下を向こうとしたが、その前にジークベルトの厚い胸板にむぎゅと顔を押しつけられてしまった。
「待て、これは違う」
「違う?」
「あぁ。これは……普通に反応しているだけだ」
「普通に反応?」
ジークベルトがあーともうーとも判別のつかない声を出したあと、気まずそうにもごもごとつぶやいた。
「好きな女が俺の服一枚だけ着た状態で抱きあってキスしているんだ。欲情するに決まってるだろうが」
「え!!」
(えっと、つまり、これは魔法とは関係なく、ジークが私に反応してる?)
嬉しいような恥ずかしいような気持ちがぐるぐると頭の中で回って、クラリスは動揺してしまう。
「あの、じゃあ、それ、慰めますか?」
「いや、魔法じゃないからすぐに治められる。大丈夫だ」
「あ、はい」
(そういうものなんだ……)
ジークベルトはクラリスから身体を離すと、顔に手を当てて何やら難しい魔法理論のようなものをぶつぶつとつぶやきだした。
魔力暴走もすっかり落ち着いたので、クラリスはジークベルトの膝の上から降りて立ち上がる。
しばらくして興奮が治まったらしいジークベルトも立ち上がりかけるが、少し屈んでクラリスに耳打ちをした。
「クラリス。次に慰めてもらう時は、手じゃなくておまえの腹に出したい」
「え!」
まっすぐに背筋を伸ばしたジークベルトがクラリスを見下ろしてニヤリと笑う。
「次に俺に触れる時は覚悟して触れろよ」
「えっと……は、はい……」
クラリスが真っ赤になったまま立って動けないでいると、コンと部屋の壁を叩く音がした。
「おふたりさん、ちょっといいですかね?」
「副団長!」
「ザッツ、どうした?」
ドアが飛んで外れた部屋の入り口には、少し呆れたような顔をしたザッツが立っていた。
ザッツはすぐに真剣な顔をしてジークベルトに報告をする。
「グラオーザが見つかりました」
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