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Execute.04:陰謀、そんなものは関係ない -Secret Intelligence Agency-
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翌日の昼頃、土曜で休日にも関わらず、零士とノエルは制服を身に纏い学園を訪れ、新校舎の保健室に集まっていた。
当然、そこにはシャーリィの姿もある。というより、面倒だからと彼女に家まで迎えに来させ、シェベルSSで此処まで二人便乗してきたのだ。土曜にも関わらずせっせとグラウンドで部活動に励む運動部の連中が、爆音を上げて飛び込んで来るシェベルSSを見て、眼が点になっていたのは今思い出しても笑えてくる。
とまあそんなこんなで、三人は鍵を掛けた保健室の中、例の新たな任務についての話を進めようとしていた。わざわざ学園の保健室でやらなくてもいいのに、と零士は思っていたのだが、どうやらシャーリィ曰く、秘密のはかりごとをするには此処が一番安全なんだそうだ。
「さてさて、時間も惜しいからね。早速本題に入ろうじゃないか、零士。ノエルも」
白衣の長い裾を小さく揺らしながら、シャーリィは長い脚を組みながらで言って。それに零士とノエルが揃って無言のままに頷くのを見ると、保健室にやって来て早々、落ち着く間もなく任務についての話を始めた。
「新型の指向性ウィルス兵器、君ら二人にはこれの拡散を阻止して貰いたい」
「待てシャーリィ、どういうことだ?」怪訝な顔で零士が訊き返す。「要領を得ない、説明してくれ」
「まあまあ、せっかち過ぎるよ君は。言われなくても、今から話してやるから」
そう言うと、シャーリィは胸ポケットからマールボロ・ライトの煙草を一本取り出し。古びたいぶし銀のジッポーをカチンと鳴らせば、口に咥えたそれに火を付けた。
彼女が燻らせ始めた紫煙の香りが、仄かに保健室の中に漂う。シャーリィは「ふぅ……」と紫煙混じりの息を小さくついた後で、疑問符を浮かべる零士と、その隣に座るノエルに対し、更に話を進めていく。
「その新型ウィルス兵器、元はとある日本人科学者が作りだしたモノなんだ。ソイツの名前は芙蓉誠一。学会を追放された後、研究データとサンプルを持って大学から出奔、今は日本国外に身を潜めているようだ」
「つまり、僕らはその教授先生を始末すれば良いと。シャーリィ、そういうことだね?」
何となく話の先が読めてきたノエルが言うが、しかしシャーリィは「それだけじゃない」と一応は肯定しつつも、しかしその先に更にややこしい事情と任務目的があることを示唆する。
「厄介なのは、この先だ。その芙蓉博士なんだけれど、とある貿易商社に拾われたことが、最近になって分かったんだ」
「貿易商社……?」
「シャーリィの言い方からして、きっと大きな企業なんだね」
零士が疑問符を浮かべ、それに付け足すようにノエルが言うと。するとシャーリィは「その通りだ」とノエルの言葉を肯定する。
「リシアンサス・インターナショナル。大規模な貿易企業だ。本社はニューヨークだが、規模はヨーロッパ圏を中心に世界各地へ幅広く手を伸ばしているらしい」
――――リシアンサス・インターナショナル社。
その名は、零士にとっても聞き覚えのある名だった。合衆国やヨーロッパに居た頃、たまに経済方面のニュースでその名を眼にした覚えがある。確か社長の名は、ケネス・ボートマンだったか……。
加えて、合法・非合法問わずの武器貿易にも手を出していると零士は聞いたことがあった。というか、実際に何度か同社の取引をご破算にした経験もある。勿論、SIAの任務としてだが。
「……! まさか」
と、そこまで思い出したところで、零士はハッと思い当たる節を見つけ。そうすれば、一気に顔を青ざめさせる。隣のノエルが「どうしたの、レイ?」と、心配そうに声を掛けてきてくれるぐらいには。
「そうだね、きっと零士の思った通りだ」
すると、シャーリィは小さな溜息とともに、顔を青ざめさせた零士を見ながらで言う。
「芙蓉博士は現在、そのリシアンサス・インターナショナル社に囲われている。目的はただ一つ、新型の指向性ウィルス兵器『サイプレス』の完成とその技術独占、拡散と、それに伴う同社の莫大な利益だ」
当然、そこにはシャーリィの姿もある。というより、面倒だからと彼女に家まで迎えに来させ、シェベルSSで此処まで二人便乗してきたのだ。土曜にも関わらずせっせとグラウンドで部活動に励む運動部の連中が、爆音を上げて飛び込んで来るシェベルSSを見て、眼が点になっていたのは今思い出しても笑えてくる。
とまあそんなこんなで、三人は鍵を掛けた保健室の中、例の新たな任務についての話を進めようとしていた。わざわざ学園の保健室でやらなくてもいいのに、と零士は思っていたのだが、どうやらシャーリィ曰く、秘密のはかりごとをするには此処が一番安全なんだそうだ。
「さてさて、時間も惜しいからね。早速本題に入ろうじゃないか、零士。ノエルも」
白衣の長い裾を小さく揺らしながら、シャーリィは長い脚を組みながらで言って。それに零士とノエルが揃って無言のままに頷くのを見ると、保健室にやって来て早々、落ち着く間もなく任務についての話を始めた。
「新型の指向性ウィルス兵器、君ら二人にはこれの拡散を阻止して貰いたい」
「待てシャーリィ、どういうことだ?」怪訝な顔で零士が訊き返す。「要領を得ない、説明してくれ」
「まあまあ、せっかち過ぎるよ君は。言われなくても、今から話してやるから」
そう言うと、シャーリィは胸ポケットからマールボロ・ライトの煙草を一本取り出し。古びたいぶし銀のジッポーをカチンと鳴らせば、口に咥えたそれに火を付けた。
彼女が燻らせ始めた紫煙の香りが、仄かに保健室の中に漂う。シャーリィは「ふぅ……」と紫煙混じりの息を小さくついた後で、疑問符を浮かべる零士と、その隣に座るノエルに対し、更に話を進めていく。
「その新型ウィルス兵器、元はとある日本人科学者が作りだしたモノなんだ。ソイツの名前は芙蓉誠一。学会を追放された後、研究データとサンプルを持って大学から出奔、今は日本国外に身を潜めているようだ」
「つまり、僕らはその教授先生を始末すれば良いと。シャーリィ、そういうことだね?」
何となく話の先が読めてきたノエルが言うが、しかしシャーリィは「それだけじゃない」と一応は肯定しつつも、しかしその先に更にややこしい事情と任務目的があることを示唆する。
「厄介なのは、この先だ。その芙蓉博士なんだけれど、とある貿易商社に拾われたことが、最近になって分かったんだ」
「貿易商社……?」
「シャーリィの言い方からして、きっと大きな企業なんだね」
零士が疑問符を浮かべ、それに付け足すようにノエルが言うと。するとシャーリィは「その通りだ」とノエルの言葉を肯定する。
「リシアンサス・インターナショナル。大規模な貿易企業だ。本社はニューヨークだが、規模はヨーロッパ圏を中心に世界各地へ幅広く手を伸ばしているらしい」
――――リシアンサス・インターナショナル社。
その名は、零士にとっても聞き覚えのある名だった。合衆国やヨーロッパに居た頃、たまに経済方面のニュースでその名を眼にした覚えがある。確か社長の名は、ケネス・ボートマンだったか……。
加えて、合法・非合法問わずの武器貿易にも手を出していると零士は聞いたことがあった。というか、実際に何度か同社の取引をご破算にした経験もある。勿論、SIAの任務としてだが。
「……! まさか」
と、そこまで思い出したところで、零士はハッと思い当たる節を見つけ。そうすれば、一気に顔を青ざめさせる。隣のノエルが「どうしたの、レイ?」と、心配そうに声を掛けてきてくれるぐらいには。
「そうだね、きっと零士の思った通りだ」
すると、シャーリィは小さな溜息とともに、顔を青ざめさせた零士を見ながらで言う。
「芙蓉博士は現在、そのリシアンサス・インターナショナル社に囲われている。目的はただ一つ、新型の指向性ウィルス兵器『サイプレス』の完成とその技術独占、拡散と、それに伴う同社の莫大な利益だ」
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