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Chapter-01『覚醒する蒼の神姫、交錯する運命』
第三章:Long Long Ago, Dear my Memories/01
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第三章:Long Long Ago, Dear my Memories
セラフィナ・マックスウェルがアンジェのクラスに転入してきてから少し後の水曜日、混み合う昼飯時をとうに過ぎた午後の昼下がり。大学をサボって帰ってきていた戒斗は、いつものように遥と一緒に店を手伝っていた。
「戒斗さん、食器ここに置いておきますね」
「はいよ」
遥が客席から下げてきた使用済みの食器をカウンターの隅に置き、それを受け取った戒斗が厨房へと運び、流し台で手早く洗う。
そうしながら、戒斗はふと横目に彼女の姿を何気なしに眺めていた。
相変わらず、遥はよく働いてくれている。柔らかな笑顔は魅力的だし、それに人当たりがとてもいい。テキパキと店を回してくれているし……確かに客たちから人気になるわけだ。
…………とはいえ、気になる点もひとつある。
どうにも最近の彼女、ハッとしたかと思えば血相を変えて、店をほっぽり出し突然何処かに飛び出していってしまうことが多いのだ。
前からたまにあったことで、彼女には彼女なりの事情があるんだろう、と戒斗も彼の両親も、そしてアンジェも敢えて気にしないでいたのだが……ここ最近は特に頻度が増えているような気がする。
何せ先週なんて、一週間に三回だ。いつも通り笑顔で店を手伝ってくれているかと思いきや、突然深刻そうな顔になって……そして店を飛び出してバイクで何処かへと走り去ってしまうのが、先週だけで三回もあった。
正直言って、これだけ頻繁になってくると流石に気になる。
気になるが……訊きづらいのも、また事実だ。あれだけ血相を変えて飛び出していくだけの用事、よっぽどのこととしか思えない。
だから戒斗は気掛かりではあったものの、遥本人には未だ直接訊けずじまいでいた。
「戒斗さん?」
「……っと、どうした?」
と、そう考えていた時だった。
カウンター越しに遥から声を掛けられてハッと我に返った戒斗は、彼女の声のした方へと振り向き。どうかしたのかと遥の顔を見てみれば、彼女は視線だけで店の窓の向こうを示す。
戒斗もそっちに視線を向けてみると、すると――――。
「ああ……今日も来たのか」
窓の向こうにある店の駐車場に、一台の車が停まろうとしているのが彼の視界に入ってきた。
綺麗なスカイブルーのボディに日差しを反射させるそれは、古いアメ車のコンバーチブルだ。見慣れすぎたあの車種を、まさか戒斗が見間違えるはずがない。
…………一九七〇年式、C3型シボレー・コルベット・スティングレイ。
バックギアでゆっくりと後退する見慣れたそれが、店の駐車スペースに停まる光景が戒斗と遥、二人の視界には映っていた。
セラフィナ・マックスウェルがアンジェのクラスに転入してきてから少し後の水曜日、混み合う昼飯時をとうに過ぎた午後の昼下がり。大学をサボって帰ってきていた戒斗は、いつものように遥と一緒に店を手伝っていた。
「戒斗さん、食器ここに置いておきますね」
「はいよ」
遥が客席から下げてきた使用済みの食器をカウンターの隅に置き、それを受け取った戒斗が厨房へと運び、流し台で手早く洗う。
そうしながら、戒斗はふと横目に彼女の姿を何気なしに眺めていた。
相変わらず、遥はよく働いてくれている。柔らかな笑顔は魅力的だし、それに人当たりがとてもいい。テキパキと店を回してくれているし……確かに客たちから人気になるわけだ。
…………とはいえ、気になる点もひとつある。
どうにも最近の彼女、ハッとしたかと思えば血相を変えて、店をほっぽり出し突然何処かに飛び出していってしまうことが多いのだ。
前からたまにあったことで、彼女には彼女なりの事情があるんだろう、と戒斗も彼の両親も、そしてアンジェも敢えて気にしないでいたのだが……ここ最近は特に頻度が増えているような気がする。
何せ先週なんて、一週間に三回だ。いつも通り笑顔で店を手伝ってくれているかと思いきや、突然深刻そうな顔になって……そして店を飛び出してバイクで何処かへと走り去ってしまうのが、先週だけで三回もあった。
正直言って、これだけ頻繁になってくると流石に気になる。
気になるが……訊きづらいのも、また事実だ。あれだけ血相を変えて飛び出していくだけの用事、よっぽどのこととしか思えない。
だから戒斗は気掛かりではあったものの、遥本人には未だ直接訊けずじまいでいた。
「戒斗さん?」
「……っと、どうした?」
と、そう考えていた時だった。
カウンター越しに遥から声を掛けられてハッと我に返った戒斗は、彼女の声のした方へと振り向き。どうかしたのかと遥の顔を見てみれば、彼女は視線だけで店の窓の向こうを示す。
戒斗もそっちに視線を向けてみると、すると――――。
「ああ……今日も来たのか」
窓の向こうにある店の駐車場に、一台の車が停まろうとしているのが彼の視界に入ってきた。
綺麗なスカイブルーのボディに日差しを反射させるそれは、古いアメ車のコンバーチブルだ。見慣れすぎたあの車種を、まさか戒斗が見間違えるはずがない。
…………一九七〇年式、C3型シボレー・コルベット・スティングレイ。
バックギアでゆっくりと後退する見慣れたそれが、店の駐車スペースに停まる光景が戒斗と遥、二人の視界には映っていた。
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