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Chapter-02『新たなる神姫、深紅の力は無窮の愛が為に』
第五章:どうか、この日々がずっと続きますように/02
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「お二人とも、おはようございます」
そうして戒斗がアンジェに連れられて階段を降りている最中、そこで二人は偶然にも遥と出くわしていた。
いつものように柔らかに微笑んで挨拶をしてくれる彼女に、戒斗は「ん、遥か」とぶっきらぼうな調子で。アンジェの方は「遥さん、おはよっ」と笑顔で挨拶を返す。
「朝ご飯ならもう出来ていますよ。お味噌は温め直しますから、また仰ってください」
「いつも悪いな、遥」
「いえ、居候させてもらっている身ですから、これぐらいは」
ニコリと柔らかな笑顔を向けてくれる遥に、戒斗もフッと小さく笑み。その後で「すぐに頂くよ。温めておいてくれると助かる」と言って、遥と一度別れ。アンジェとともに一階の洗面所まで歩いて行く。
そこでいつものように顔を洗って目を覚まし、横からアンジェが差し出してくれたタオルで顔を拭き。そうしてダイニング兼用のリビングルームまで歩いて行くと、するともう遥がテーブルの上に朝食を用意してくれていた。
ちなみに、朝食としては少し遅めの時間だからか……戒斗の両親は既に食べ終わってしまったようで、この場には居なかった。
「お味噌汁、温めておきました」
「悪いな遥。……んじゃあ、頂くとするか」
最後に遥が温め直した味噌汁を出してくれて、それで朝食メニューは完成だ。
白米に味噌汁に、焼き鮭と……後は目玉焼きがどうにも苦手な戒斗に配慮してなのか、巻いた形で焼いた卵。そんな感じのベーシックな和風の朝食、今日も今日とて全て遥のお手製だ。
美人で優しくて人当たりが良くて、それで料理上手ときた。もしアンジェがいなかったとしたら……戒斗も確実に惚れていただろう。それぐらい、遥はあらゆる意味で魅力に溢れた乙女だった。客たちから絶大な人気を誇る店の看板娘になるのも、さもありなんという奴だ。
「戒斗さんにアンジェさん、今日はお二人でお出かけなんですか?」
そんな遥の作ってくれた美味しい朝食に戒斗が箸を付けていると、それを対面で眺めていた遥が何気ない調子で話しかけてくる。
すると、戒斗の横に座っていたアンジェは「えへへー」と照れくさそうに頬を朱に染めて笑み、続けてこんなことを遥に向かって口走った。
「実はね遥さん、今日はカイトとデートなんだー」
と、そんなことを……照れくさそうに、でも心の底から嬉しそうな声で。
「デートって……まあいいか」
そんな言葉を真横で聞かされた戒斗はといえば、湯呑みの緑茶を啜りつつ何とも言えない顔をしていて。そんな二人を前に、遥といえば――――。
「そうですか! じゃあ今日は目いっぱい楽しまないとですね!」
と、満面の笑みで……まるで自分のことのように喜んでいた。
この辺りが、遥の良いところだ。誰かが嬉しいと思えば自分も嬉しく思い、悲しいことがあれば自分のことのように悲しみを分かち合える……彼女はそんな、どこまでも優しい心の持ち主なのだ。
だからこそ、遥は神姫ウィスタリア・セイレーンでいられるのかも知れない。こんな心優しい彼女だからこそ、誰かの笑顔を守るために戦えるのかも知れない……。
遥の心底嬉しそうな笑顔を目の当たりにして、戒斗は何気なくそう思っていた。
「……あの、少しだけ宜しいですか?」
戒斗がそう思っていると、すると遥は何故か表情を少しだけシリアスなものに変えて。そうすれば周囲をキョロキョロと見渡し……戒斗の両親が近くに居ないのを確認してから、少しトーンを低くした声で戒斗とアンジェ、二人に彼女はこう囁きかける。
「実は……何日か前、またバンディットと戦いました」
「この間出て行った時の、アレか?」
相槌を打つ戒斗に、遥は「はい」と頷き返す。
「二体居たのですが……残念ながら、取り逃がしてしまいました」
「遥さん、怪我はなかったの?」
「おかげさまで、この通り私は無事です」
心配するアンジェの言葉に、遥はニコリと柔らかく微笑んで返し。その後で改めて二人の方に向き直ると、続けて彼女はこう言った。
「今のところ……あの時の二体がまた現れた気配はありません。でも、お二人とも気を付けてください。もしも万が一のことがあったら……遠慮は不要です。すぐに私を呼んでください。お二人が何処へ居たって、すぐに駆けつけますから…………」
と、至極神妙な顔で。二人を心から案じているような表情で、遥は戒斗とアンジェにそう告げた。
「遥さん、ありがとう」
そんな風に遥が心底案じた顔で言うと、アンジェは柔な笑顔を浮かべて目の前の彼女にそう、お礼を言う。
「心配してくれてるんだな……分かってるよ、万が一の時は遠慮無く呼びつけるさ」
続けて戒斗も、そんな風に似たような言葉を口にする。
すると、遥はそんな二人の反応を見て……また先程と同じような笑顔を浮かべると、目の前の二人に向かってこう言った。
「脅すようなことを言ってしまって申し訳ありません。今日は楽しいデートなんですから、お二人とも存分に楽しんできてくださいね」
「えへへ……ありがと、遥さん」
柔らかな微笑みを浮かべた遥の言葉に、アンジェはやはり照れくさそうな顔で頷き返していた。
そうして戒斗がアンジェに連れられて階段を降りている最中、そこで二人は偶然にも遥と出くわしていた。
いつものように柔らかに微笑んで挨拶をしてくれる彼女に、戒斗は「ん、遥か」とぶっきらぼうな調子で。アンジェの方は「遥さん、おはよっ」と笑顔で挨拶を返す。
「朝ご飯ならもう出来ていますよ。お味噌は温め直しますから、また仰ってください」
「いつも悪いな、遥」
「いえ、居候させてもらっている身ですから、これぐらいは」
ニコリと柔らかな笑顔を向けてくれる遥に、戒斗もフッと小さく笑み。その後で「すぐに頂くよ。温めておいてくれると助かる」と言って、遥と一度別れ。アンジェとともに一階の洗面所まで歩いて行く。
そこでいつものように顔を洗って目を覚まし、横からアンジェが差し出してくれたタオルで顔を拭き。そうしてダイニング兼用のリビングルームまで歩いて行くと、するともう遥がテーブルの上に朝食を用意してくれていた。
ちなみに、朝食としては少し遅めの時間だからか……戒斗の両親は既に食べ終わってしまったようで、この場には居なかった。
「お味噌汁、温めておきました」
「悪いな遥。……んじゃあ、頂くとするか」
最後に遥が温め直した味噌汁を出してくれて、それで朝食メニューは完成だ。
白米に味噌汁に、焼き鮭と……後は目玉焼きがどうにも苦手な戒斗に配慮してなのか、巻いた形で焼いた卵。そんな感じのベーシックな和風の朝食、今日も今日とて全て遥のお手製だ。
美人で優しくて人当たりが良くて、それで料理上手ときた。もしアンジェがいなかったとしたら……戒斗も確実に惚れていただろう。それぐらい、遥はあらゆる意味で魅力に溢れた乙女だった。客たちから絶大な人気を誇る店の看板娘になるのも、さもありなんという奴だ。
「戒斗さんにアンジェさん、今日はお二人でお出かけなんですか?」
そんな遥の作ってくれた美味しい朝食に戒斗が箸を付けていると、それを対面で眺めていた遥が何気ない調子で話しかけてくる。
すると、戒斗の横に座っていたアンジェは「えへへー」と照れくさそうに頬を朱に染めて笑み、続けてこんなことを遥に向かって口走った。
「実はね遥さん、今日はカイトとデートなんだー」
と、そんなことを……照れくさそうに、でも心の底から嬉しそうな声で。
「デートって……まあいいか」
そんな言葉を真横で聞かされた戒斗はといえば、湯呑みの緑茶を啜りつつ何とも言えない顔をしていて。そんな二人を前に、遥といえば――――。
「そうですか! じゃあ今日は目いっぱい楽しまないとですね!」
と、満面の笑みで……まるで自分のことのように喜んでいた。
この辺りが、遥の良いところだ。誰かが嬉しいと思えば自分も嬉しく思い、悲しいことがあれば自分のことのように悲しみを分かち合える……彼女はそんな、どこまでも優しい心の持ち主なのだ。
だからこそ、遥は神姫ウィスタリア・セイレーンでいられるのかも知れない。こんな心優しい彼女だからこそ、誰かの笑顔を守るために戦えるのかも知れない……。
遥の心底嬉しそうな笑顔を目の当たりにして、戒斗は何気なくそう思っていた。
「……あの、少しだけ宜しいですか?」
戒斗がそう思っていると、すると遥は何故か表情を少しだけシリアスなものに変えて。そうすれば周囲をキョロキョロと見渡し……戒斗の両親が近くに居ないのを確認してから、少しトーンを低くした声で戒斗とアンジェ、二人に彼女はこう囁きかける。
「実は……何日か前、またバンディットと戦いました」
「この間出て行った時の、アレか?」
相槌を打つ戒斗に、遥は「はい」と頷き返す。
「二体居たのですが……残念ながら、取り逃がしてしまいました」
「遥さん、怪我はなかったの?」
「おかげさまで、この通り私は無事です」
心配するアンジェの言葉に、遥はニコリと柔らかく微笑んで返し。その後で改めて二人の方に向き直ると、続けて彼女はこう言った。
「今のところ……あの時の二体がまた現れた気配はありません。でも、お二人とも気を付けてください。もしも万が一のことがあったら……遠慮は不要です。すぐに私を呼んでください。お二人が何処へ居たって、すぐに駆けつけますから…………」
と、至極神妙な顔で。二人を心から案じているような表情で、遥は戒斗とアンジェにそう告げた。
「遥さん、ありがとう」
そんな風に遥が心底案じた顔で言うと、アンジェは柔な笑顔を浮かべて目の前の彼女にそう、お礼を言う。
「心配してくれてるんだな……分かってるよ、万が一の時は遠慮無く呼びつけるさ」
続けて戒斗も、そんな風に似たような言葉を口にする。
すると、遥はそんな二人の反応を見て……また先程と同じような笑顔を浮かべると、目の前の二人に向かってこう言った。
「脅すようなことを言ってしまって申し訳ありません。今日は楽しいデートなんですから、お二人とも存分に楽しんできてくださいね」
「えへへ……ありがと、遥さん」
柔らかな微笑みを浮かべた遥の言葉に、アンジェはやはり照れくさそうな顔で頷き返していた。
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