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Chapter-03『BLACK EXECUTER』
第四章:とある平穏な幕間に/04
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そんな風に三人で服飾店を次から次へと渡り歩いていれば、もう二時間近くが経ってしまっていて。何だかんだと腹の空く昼飯時になると、三人はそろそろ昼食にしようかという話になり。四階にあるレストラン街へと赴くべく、今は三人でショッピングモール内のエスカレーターを昇っている最中だった。
無論、三人ともが片手に服飾店の紙袋をぶら下げている。アンジェが遥にプレゼントしたり、逆に遥がアンジェにプレゼントしたり、戒斗が贈ったり逆に戒斗の方が二人に贈られたり……といった具合に事情は様々だが。そんな服が何着も入った袋を、三人が三人とも片手にぶら下げた格好でエスカレーターを昇っていた。
「あれ……セラさん?」
「えっ? ……あっほんとだ、セラだね。おーい、セラーっ!」
三人仲良く談笑を交わしつつ、吹き抜けを伝うエスカレーターを昇りきり。そうして四階フロアを歩き出した途端……遥とアンジェは前方から歩いて来る人影を見つけ。するとその見覚えのある姿を見るや否や、アンジェは歩いて来る彼女に手を振って呼び掛ける。
「……っ!? あ、アンタたち……どうして此処に」
アンジェに呼び掛けられた途端、こちらに視線を送った途端。ギョッとして驚いている長身の彼女は――――他の誰でもない、あのセラフィナ・マックスウェルだった。
一八五センチの長身に、燃え盛る焔のように真っ赤なツーサイドアップの長い髪を見紛うはずもない。遠目からでも一発で誰か分かる、そんな目立つ容姿をした彼女は……自分の方に元気よく手を振ってくるアンジェや、その隣で微笑む遥。そしてやれやれと小さく肩を揺らしている戒斗の姿を見つめながら、ぽかーんとした顔で唖然としている。
どうやら、此処で遭遇するとは夢にも思っていなかったらしい。尤も、それはこちら側とて同じことなのだが…………。
「こんなところで逢えるなんて、偶然だねっ」
「お久しぶりです、セラさん」
「奇遇だな、セラ」
立ち止まり、ギョッとしている彼女にとてとてと小走りで近寄ったアンジェが笑顔でセラの手を取りながらそう言って。続けて歩み寄る遥が微笑みかけ、その横で戒斗はいつものようにぶっきらぼうな調子の挨拶をセラに向かって投げ掛ける。
「……ええ、偶然ね」
すると、セラの方はというと……自分の手を取って上目遣いに見上げてくるアンジェを見下ろし、何故だか複雑そうな顔を浮かべつつ。そのまま遥や戒斗の方に視線をやると、至極微妙な声音でそう言う。
そんな彼女の格好は――――休日だけあって、やはり私服姿だ。
いつも通りにグレーのタンクトップの上から黒革のライダースジャケットを羽織り、下は細身なジーンズというラフな格好。そんな出で立ちのセラは遥たちに一度視線をやった後、また見上げてくるアンジェの方を見下ろし……やはり奇妙なぐらいに複雑そうな表情を浮かべながら、自分の手を握る彼女にこんな質問を投げ掛けていた。
「どうして、此処に?」
「ん? 今日はカイトや遥さんとお買い物に来てるんだー。セラはどうしたの?」
「別に……暇だったから、ぶらぶらしに来ただけよ。別に大して用事があったワケじゃないわ」
真っ直ぐすぎるぐらいに真っ直ぐな、純粋すぎる瞳で見つめてくる眼下のアンジェから小さく目を逸らしつつ、セラがボソリと此処に居る理由を呟く。
言い方は回りくどいが、要するに暇を持て余しているということだ。
だからこそアンジェはそんなセラの言葉を聞いた途端、キラキラと目を輝かせ始め――――次に彼女の口から飛び出してきた言葉は、ある意味で完全に予想通りの一言だった。
「だったら、セラも僕らと一緒にどうかな?」
「…………っ、それは」
が、セラの方はあまり乗り気でなさそうだ。
アンジェから目を逸らす彼女の心情としては、P.C.C.Sのことや神姫のこと、その他諸々のことがあるが故に、どうにも今はアンジェと話しづらいという気持ちがあったりするのだが……当然、アンジェを始めとした三人が彼女の事情を知るはずもない。
「ん、もしかしてこの後なにか用事でもあるの?」
「別に……そういうワケじゃ」
「だったら、セラさんも私たちとご一緒しませんか?」
「そんな、悪いわよ。折角アンタたちで楽しんでたのに」
「構いやしないさ、人数は多い方が賑やかでいい。……だろ? アンジェ、それに遥も」
「うんっ!」
「セラさんがよろしければ、私は是非ご一緒したいです」
だからこそ、アンジェも遥も、そして戒斗もこんな風に押してきて。ともすればセラとしても断る理由がないから……最終的にアンジェや遥の純粋な瞳に負ける形で、結局こんな風に折れてしまっていた。
「…………分かったわ。丁度暇してたのは事実だし、アンタたちさえ良ければアタシも付き合うわよ」
「やったぁ♪ 丁度近いうちにセラとお出かけしたいなって思ってたところだったんだ」
「ふふっ、ありがとうございます。それでセラさん、私たちはこれからお昼なのですけれど……セラさんはもう済まされたのですか?」
「ちなみにフードコートは満席だ。モナコ・グランプリもかくやって混み方してやがるから、行くのはオススメしないぜ」
「えっホント? 今行こうと思ってたトコなのよ」
「私たちは奥のレストランに行ってみようと思っていたところなので、よければセラさんもご一緒に♪」
「……そうね、アタシも行こうかしら」
そういうワケで、偶然出くわしたセラも加えた一行は空かせた腹を満たすべく、四階フロアの奥にあるレストラン街へと歩いて行った。
無論、三人ともが片手に服飾店の紙袋をぶら下げている。アンジェが遥にプレゼントしたり、逆に遥がアンジェにプレゼントしたり、戒斗が贈ったり逆に戒斗の方が二人に贈られたり……といった具合に事情は様々だが。そんな服が何着も入った袋を、三人が三人とも片手にぶら下げた格好でエスカレーターを昇っていた。
「あれ……セラさん?」
「えっ? ……あっほんとだ、セラだね。おーい、セラーっ!」
三人仲良く談笑を交わしつつ、吹き抜けを伝うエスカレーターを昇りきり。そうして四階フロアを歩き出した途端……遥とアンジェは前方から歩いて来る人影を見つけ。するとその見覚えのある姿を見るや否や、アンジェは歩いて来る彼女に手を振って呼び掛ける。
「……っ!? あ、アンタたち……どうして此処に」
アンジェに呼び掛けられた途端、こちらに視線を送った途端。ギョッとして驚いている長身の彼女は――――他の誰でもない、あのセラフィナ・マックスウェルだった。
一八五センチの長身に、燃え盛る焔のように真っ赤なツーサイドアップの長い髪を見紛うはずもない。遠目からでも一発で誰か分かる、そんな目立つ容姿をした彼女は……自分の方に元気よく手を振ってくるアンジェや、その隣で微笑む遥。そしてやれやれと小さく肩を揺らしている戒斗の姿を見つめながら、ぽかーんとした顔で唖然としている。
どうやら、此処で遭遇するとは夢にも思っていなかったらしい。尤も、それはこちら側とて同じことなのだが…………。
「こんなところで逢えるなんて、偶然だねっ」
「お久しぶりです、セラさん」
「奇遇だな、セラ」
立ち止まり、ギョッとしている彼女にとてとてと小走りで近寄ったアンジェが笑顔でセラの手を取りながらそう言って。続けて歩み寄る遥が微笑みかけ、その横で戒斗はいつものようにぶっきらぼうな調子の挨拶をセラに向かって投げ掛ける。
「……ええ、偶然ね」
すると、セラの方はというと……自分の手を取って上目遣いに見上げてくるアンジェを見下ろし、何故だか複雑そうな顔を浮かべつつ。そのまま遥や戒斗の方に視線をやると、至極微妙な声音でそう言う。
そんな彼女の格好は――――休日だけあって、やはり私服姿だ。
いつも通りにグレーのタンクトップの上から黒革のライダースジャケットを羽織り、下は細身なジーンズというラフな格好。そんな出で立ちのセラは遥たちに一度視線をやった後、また見上げてくるアンジェの方を見下ろし……やはり奇妙なぐらいに複雑そうな表情を浮かべながら、自分の手を握る彼女にこんな質問を投げ掛けていた。
「どうして、此処に?」
「ん? 今日はカイトや遥さんとお買い物に来てるんだー。セラはどうしたの?」
「別に……暇だったから、ぶらぶらしに来ただけよ。別に大して用事があったワケじゃないわ」
真っ直ぐすぎるぐらいに真っ直ぐな、純粋すぎる瞳で見つめてくる眼下のアンジェから小さく目を逸らしつつ、セラがボソリと此処に居る理由を呟く。
言い方は回りくどいが、要するに暇を持て余しているということだ。
だからこそアンジェはそんなセラの言葉を聞いた途端、キラキラと目を輝かせ始め――――次に彼女の口から飛び出してきた言葉は、ある意味で完全に予想通りの一言だった。
「だったら、セラも僕らと一緒にどうかな?」
「…………っ、それは」
が、セラの方はあまり乗り気でなさそうだ。
アンジェから目を逸らす彼女の心情としては、P.C.C.Sのことや神姫のこと、その他諸々のことがあるが故に、どうにも今はアンジェと話しづらいという気持ちがあったりするのだが……当然、アンジェを始めとした三人が彼女の事情を知るはずもない。
「ん、もしかしてこの後なにか用事でもあるの?」
「別に……そういうワケじゃ」
「だったら、セラさんも私たちとご一緒しませんか?」
「そんな、悪いわよ。折角アンタたちで楽しんでたのに」
「構いやしないさ、人数は多い方が賑やかでいい。……だろ? アンジェ、それに遥も」
「うんっ!」
「セラさんがよろしければ、私は是非ご一緒したいです」
だからこそ、アンジェも遥も、そして戒斗もこんな風に押してきて。ともすればセラとしても断る理由がないから……最終的にアンジェや遥の純粋な瞳に負ける形で、結局こんな風に折れてしまっていた。
「…………分かったわ。丁度暇してたのは事実だし、アンタたちさえ良ければアタシも付き合うわよ」
「やったぁ♪ 丁度近いうちにセラとお出かけしたいなって思ってたところだったんだ」
「ふふっ、ありがとうございます。それでセラさん、私たちはこれからお昼なのですけれど……セラさんはもう済まされたのですか?」
「ちなみにフードコートは満席だ。モナコ・グランプリもかくやって混み方してやがるから、行くのはオススメしないぜ」
「えっホント? 今行こうと思ってたトコなのよ」
「私たちは奥のレストランに行ってみようと思っていたところなので、よければセラさんもご一緒に♪」
「……そうね、アタシも行こうかしら」
そういうワケで、偶然出くわしたセラも加えた一行は空かせた腹を満たすべく、四階フロアの奥にあるレストラン街へと歩いて行った。
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