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ep9『雨の日の幽霊男』前編
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雨の音が大きくなった頃、明衣菜は風呂を終えてテレビを見ていた。黒のキャミソールに濃紺のハーフパンツといったラフな格好で、ゆったりとソファに座る。髪はまだ濡れているが気にしない。肩にはタオルをかけているし、ドライヤーは軽くかけたから十分だ。
玄関のベルが鳴った。今日は来客の予定はないはずだし、もう夜の十一時を過ぎている。こんな時間に誰が。警戒しながらもドアを開けると、そこにはずぶ濡れの知り合いがいた。
「こんばんは、明衣菜さん」
「どうしたの」
「急に雨に降られちゃって。電気ついてたからまだ起きてるかなーって」
彼は明衣菜が働くバーの常連客だ。家は教えていないが、店から近いのとマスターとも仲が良いので聞いたのかもしれない。
「帰ろうかとも思ったんですけど、丁度近くまで来てたんで、ちょっと上がらせてもらおうかと」
彼の家は電車で三十分以上はかかるし駅までも距離がある。このどしゃ降りのなかの選択肢としてはわからなくもないけれど。
「こんな時間にうちに来てどうするのよ。泊まっていくつもり?」
「いいですか?」
「いいわけないでしょう。なんで泊めなきゃいけないのよ」
彼とはそういう仲ではない。女友達ならまだしも、女性の一人暮らしの部屋にいきなりやってきて泊めろとはどういう了見か。
「一時間くらい雨宿りさせてくれたらもう泊まったようなものですよ。日付変わるし」
引く気のなさそうな相手に少し悩んだが、今までの店での彼の態度を振り返り、雨の勢いが増すばかりなのも考慮して、しぶしぶ受け入れることにした。
「雨止んだらさっさと帰ってよね」
「それが今夜はもう止みそうにないんですよ。ちょっとした雨宿りのつもりなら駅前のバーにでも行ってます」
「……それってつまり最初から泊まるつもりで来たってこと?」
「あはは、バレちゃった」
「バレちゃったじゃないわよ、まったく」
明衣菜が睨みつけたところで、彼のにこにこと爽やかな笑みは崩れなかった。
「シャワー貸してあげるから入ってきて」
「え、いいんですか」
「いきなり泊まりに来たくせにそこは遠慮するのね」
「そこまで図々しくはないんで」
「十分図々しいわよ。さっさと入ってきて」
彼が入浴している間、明衣菜は濡れた服をドライヤーで乾かしていた。上がった彼にドライヤーを差し出すと、自ら服にドライヤーをかけ始める。
「アンタどこで寝るつもり」
「選ばせてくれるんですか?」
「試すような言い方しないで。どこで寝るつもりなのか聞いてるのよ」
「数時間待てば始発の電車があるから起きてようと思ってたんですけど、寝かせてくれるならソファお借りできれば助かります」
もう十二時を過ぎている。彼の言う通り数時間後には電車が動き出しているだろう。
「雨止んでなかったら?」
「それは別に。濡れて帰っても家でまたシャワー浴びればいいし」
「だったら最初からそうしなさいよ。来た時はまだ電車動いてたでしょう。それに既にずぶ濡れだったじゃない」
「明衣菜さんに会いたくなっちゃって」
「こんな時間に会いになんて来ないでよ。しかも泊まりになんて」
「その辺は成り行きですよ。最初は本当にちょっと雨宿りのつもりだったんですよ」
「最初から泊まるつもりだったって言ったじゃない」
「あれは冗談ですよ。明衣菜さんが泊まってくつもりかなんていうから、つい」
「ついって。雨宿りならバーでいいとかなんとか言ってなかった?」
「よく覚えてますね」
「ついさっきの話でしょ」
「そうですけど。まあ、最初はどうせすぐ止むと思ったんですよ。ちょっと明衣菜さんと話でもしてたら止むかなーって。今日は明衣菜さん休みで店に行っても会えないし、どうせ雨宿りするならバーに行くより明衣菜さんと一緒の方がいいなって。せっかく近くまで来たんだし」
どこまで本気なのかわからない。いきなり家に来る相手に常識など期待しても仕方がないけれど。
「寝るならソファ使っていいから、こっちの寝室には来ないでよ」
「寝室って?」
「そこ」
明衣菜はすぐ隣の部屋を指さした。扉は開かれていて、数メートル先にベッドが見えている。
「なるほど。それはお誘いですか?」
「アンタね」
「冗談ですよ」
「私はもう寝るから朝になったら勝手に帰って。鍵は開けっぱなしでいいから」
「危ないですよ」
「アンタに言われたくないわよ」
「おっと。それはお誘いですか?」
「どういう耳してんのよ。雨の中に放り出してもいいのよ」
「冗談ですってば。おやすみなさい」
「おやすみ」
明衣菜が起きたとき、彼はソファでのんびりとテレビを見ていた。彼を見送るはめになった明衣菜は、ちゃんと鍵をかけてくださいねという彼の言葉を、実行することになった。
彼が次に現れたのは、また大雨の日の夜だった。今度は傘を持って。
「こんばんは」
「なんなのよ」
「いやあ、大雨だったんでこの前ここに来たこと思い出しちゃって」
「それでなんでまた来るの」
「会いたくなっちゃって」
腕組しながら睨んだが、彼には何の効果もなさそうだ。
「今日はお土産持ってきたんですよ。この前のお礼もかねて一緒にご飯食べようと思って。ビールとおつまみもありますよ。それにほら、今日は濡れてもいないし、お風呂貸してほしいなんて言いません」
だから信用しろと? 無言の圧力にも彼の笑顔は崩れない。
「もしかしてご飯もう食べちゃいました? だったらこのお土産だけでもどうぞ。この前のお礼です」
「ご飯はまだだけど」
「良かった。じゃあ一緒に食べましょう」
「部屋に上げろって?」
「ダメですか?」
無言の攻防の末、明衣菜は折れた。
「お邪魔します」
「こんばんは」
「雨のたびに来るつもり?」
「たまたま思い出しちゃっただけですよ。そしたら会いたくなっちゃって」
「私と雨を結び付けないでくれる」
「やだなあ、そんなつもりはないですよ」
「だったらなんで雨の度に来るのよ。何度目よ」
「じゃあ今度は曇りの時にでも来ますよ。雨が降りそうな時」
「だからなんで雨限定なのよ」
「晴れの日も来ていいんですか?」
「そういう問題じゃない」
「本当は僕だって来たいんですけどね。口実が見つからなくて」
「何の口実よ」
「明衣菜さんのところに来る口実」
「最初から口実も何もなかったじゃない。雨だからって口実自体無理があるでしょ」
「そうですか?」
「そうよ。アンタが雨の日にばっかりくるから、私も雨の日にアンタを待ってなきゃいけないような気になってくるじゃない。やめてよ」
彼の動きが止まった。
「なによ」
「いえ……今のは、ちょっと」
「なによ」
「待っててくれたんですか? 僕のこと」
「まだなってないわよ。なりそうだからやめてって言ってるの。暗くて雨の日の夜だけ現れるなんて幽霊みたい」
「あはは。でもバーでは会ってるじゃないですか」
「そうね。でも家に来てからはバーで会ってないわね」
「あー確かに。つまり最近死んだ僕がここに来てるってことならおかしくないですよね」
今度は明衣菜の動きが止まった。
「やだな、冗談ですよ。本気にしないでください」
明衣菜は右手を振り上げると、勢いよく彼の腕を叩いた。
「え、なんですか、痛いですよ」
ふう、と安堵の呼吸が漏れた。幽霊ではないはずだ。
「でも僕が幽霊なら、明衣菜さんはもう引きずり込まれてるかもしれませんよ」
「その話まだ続けるの? やめてよ」
「怖いんですか?」
「当たり前でしょう。そもそもアンタが誰か知らないし」
「人聞きの悪い。バーの店員と常連でしょう。名前だって知ってるじゃないですか」
「名前だけでしょ。他は何も知らないわ」
「次は晴れた日に会いに来ますよ。来ていいですか?」
「いいけど、でもその前に」
明衣菜は真剣な顔で言った。
「先にバーに来て。マスターも他の客もいる前で私としゃべって」
「……それはもしかして、僕が幽霊かどうか調べるために?」
「そうよ。アンタが言ったんだからちゃんと責任取ってよね」
玄関のベルが鳴った。今日は来客の予定はないはずだし、もう夜の十一時を過ぎている。こんな時間に誰が。警戒しながらもドアを開けると、そこにはずぶ濡れの知り合いがいた。
「こんばんは、明衣菜さん」
「どうしたの」
「急に雨に降られちゃって。電気ついてたからまだ起きてるかなーって」
彼は明衣菜が働くバーの常連客だ。家は教えていないが、店から近いのとマスターとも仲が良いので聞いたのかもしれない。
「帰ろうかとも思ったんですけど、丁度近くまで来てたんで、ちょっと上がらせてもらおうかと」
彼の家は電車で三十分以上はかかるし駅までも距離がある。このどしゃ降りのなかの選択肢としてはわからなくもないけれど。
「こんな時間にうちに来てどうするのよ。泊まっていくつもり?」
「いいですか?」
「いいわけないでしょう。なんで泊めなきゃいけないのよ」
彼とはそういう仲ではない。女友達ならまだしも、女性の一人暮らしの部屋にいきなりやってきて泊めろとはどういう了見か。
「一時間くらい雨宿りさせてくれたらもう泊まったようなものですよ。日付変わるし」
引く気のなさそうな相手に少し悩んだが、今までの店での彼の態度を振り返り、雨の勢いが増すばかりなのも考慮して、しぶしぶ受け入れることにした。
「雨止んだらさっさと帰ってよね」
「それが今夜はもう止みそうにないんですよ。ちょっとした雨宿りのつもりなら駅前のバーにでも行ってます」
「……それってつまり最初から泊まるつもりで来たってこと?」
「あはは、バレちゃった」
「バレちゃったじゃないわよ、まったく」
明衣菜が睨みつけたところで、彼のにこにこと爽やかな笑みは崩れなかった。
「シャワー貸してあげるから入ってきて」
「え、いいんですか」
「いきなり泊まりに来たくせにそこは遠慮するのね」
「そこまで図々しくはないんで」
「十分図々しいわよ。さっさと入ってきて」
彼が入浴している間、明衣菜は濡れた服をドライヤーで乾かしていた。上がった彼にドライヤーを差し出すと、自ら服にドライヤーをかけ始める。
「アンタどこで寝るつもり」
「選ばせてくれるんですか?」
「試すような言い方しないで。どこで寝るつもりなのか聞いてるのよ」
「数時間待てば始発の電車があるから起きてようと思ってたんですけど、寝かせてくれるならソファお借りできれば助かります」
もう十二時を過ぎている。彼の言う通り数時間後には電車が動き出しているだろう。
「雨止んでなかったら?」
「それは別に。濡れて帰っても家でまたシャワー浴びればいいし」
「だったら最初からそうしなさいよ。来た時はまだ電車動いてたでしょう。それに既にずぶ濡れだったじゃない」
「明衣菜さんに会いたくなっちゃって」
「こんな時間に会いになんて来ないでよ。しかも泊まりになんて」
「その辺は成り行きですよ。最初は本当にちょっと雨宿りのつもりだったんですよ」
「最初から泊まるつもりだったって言ったじゃない」
「あれは冗談ですよ。明衣菜さんが泊まってくつもりかなんていうから、つい」
「ついって。雨宿りならバーでいいとかなんとか言ってなかった?」
「よく覚えてますね」
「ついさっきの話でしょ」
「そうですけど。まあ、最初はどうせすぐ止むと思ったんですよ。ちょっと明衣菜さんと話でもしてたら止むかなーって。今日は明衣菜さん休みで店に行っても会えないし、どうせ雨宿りするならバーに行くより明衣菜さんと一緒の方がいいなって。せっかく近くまで来たんだし」
どこまで本気なのかわからない。いきなり家に来る相手に常識など期待しても仕方がないけれど。
「寝るならソファ使っていいから、こっちの寝室には来ないでよ」
「寝室って?」
「そこ」
明衣菜はすぐ隣の部屋を指さした。扉は開かれていて、数メートル先にベッドが見えている。
「なるほど。それはお誘いですか?」
「アンタね」
「冗談ですよ」
「私はもう寝るから朝になったら勝手に帰って。鍵は開けっぱなしでいいから」
「危ないですよ」
「アンタに言われたくないわよ」
「おっと。それはお誘いですか?」
「どういう耳してんのよ。雨の中に放り出してもいいのよ」
「冗談ですってば。おやすみなさい」
「おやすみ」
明衣菜が起きたとき、彼はソファでのんびりとテレビを見ていた。彼を見送るはめになった明衣菜は、ちゃんと鍵をかけてくださいねという彼の言葉を、実行することになった。
彼が次に現れたのは、また大雨の日の夜だった。今度は傘を持って。
「こんばんは」
「なんなのよ」
「いやあ、大雨だったんでこの前ここに来たこと思い出しちゃって」
「それでなんでまた来るの」
「会いたくなっちゃって」
腕組しながら睨んだが、彼には何の効果もなさそうだ。
「今日はお土産持ってきたんですよ。この前のお礼もかねて一緒にご飯食べようと思って。ビールとおつまみもありますよ。それにほら、今日は濡れてもいないし、お風呂貸してほしいなんて言いません」
だから信用しろと? 無言の圧力にも彼の笑顔は崩れない。
「もしかしてご飯もう食べちゃいました? だったらこのお土産だけでもどうぞ。この前のお礼です」
「ご飯はまだだけど」
「良かった。じゃあ一緒に食べましょう」
「部屋に上げろって?」
「ダメですか?」
無言の攻防の末、明衣菜は折れた。
「お邪魔します」
「こんばんは」
「雨のたびに来るつもり?」
「たまたま思い出しちゃっただけですよ。そしたら会いたくなっちゃって」
「私と雨を結び付けないでくれる」
「やだなあ、そんなつもりはないですよ」
「だったらなんで雨の度に来るのよ。何度目よ」
「じゃあ今度は曇りの時にでも来ますよ。雨が降りそうな時」
「だからなんで雨限定なのよ」
「晴れの日も来ていいんですか?」
「そういう問題じゃない」
「本当は僕だって来たいんですけどね。口実が見つからなくて」
「何の口実よ」
「明衣菜さんのところに来る口実」
「最初から口実も何もなかったじゃない。雨だからって口実自体無理があるでしょ」
「そうですか?」
「そうよ。アンタが雨の日にばっかりくるから、私も雨の日にアンタを待ってなきゃいけないような気になってくるじゃない。やめてよ」
彼の動きが止まった。
「なによ」
「いえ……今のは、ちょっと」
「なによ」
「待っててくれたんですか? 僕のこと」
「まだなってないわよ。なりそうだからやめてって言ってるの。暗くて雨の日の夜だけ現れるなんて幽霊みたい」
「あはは。でもバーでは会ってるじゃないですか」
「そうね。でも家に来てからはバーで会ってないわね」
「あー確かに。つまり最近死んだ僕がここに来てるってことならおかしくないですよね」
今度は明衣菜の動きが止まった。
「やだな、冗談ですよ。本気にしないでください」
明衣菜は右手を振り上げると、勢いよく彼の腕を叩いた。
「え、なんですか、痛いですよ」
ふう、と安堵の呼吸が漏れた。幽霊ではないはずだ。
「でも僕が幽霊なら、明衣菜さんはもう引きずり込まれてるかもしれませんよ」
「その話まだ続けるの? やめてよ」
「怖いんですか?」
「当たり前でしょう。そもそもアンタが誰か知らないし」
「人聞きの悪い。バーの店員と常連でしょう。名前だって知ってるじゃないですか」
「名前だけでしょ。他は何も知らないわ」
「次は晴れた日に会いに来ますよ。来ていいですか?」
「いいけど、でもその前に」
明衣菜は真剣な顔で言った。
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